試験の概要(ビジュアル・アブストラクト)
歯周病と血圧の関連性は?
歯周病(歯周炎)とは、細菌の感染によって引き起こされる炎症性疾患であり、歯の周りの歯ぐき(歯肉)や、歯を支える骨などが溶けてしまう病気です。
近年、歯周炎が各疾患を引き起こすことが示されており、糖尿病、早産・低体重児出産、肥満、血管の動脈硬化(心筋梗塞・脳梗塞)などとの関連性が示されています。また、歯周病菌のなかには、誤嚥により気管支から肺にたどり着くものもあり、高齢者の死亡原因でもある誤嚥性肺炎の原因となっています。さらに歯周病菌のひとつPorphyromonas gingivalisが有するタンパク質分解酵素ジンジパインによりアルツハイマー病が悪化する可能性も報告されています。
高血圧と歯周炎が密接に関連していることも示唆されていますが、その関連性については限られたデータしかありません。
そこで今回は、歯周炎と平均動脈血圧の関係を検証した症例対照研究の結果をご紹介します。
試験結果から明らかになったことは?
歯周炎を有する症例は、歯周炎を有さない対照群と比較して、平均収縮期血圧が3.36mmHg(P=0.007)、拡張期血圧が2.16mmHg(P=0.027)高いことが明らかになりました。
歯周炎の診断は平均収縮期血圧と関連し、一般的な心血管危険因子とは独立して、収縮期血圧が140mmHg以上である確率が有意に高いことが示されました。
☆オッズ比 2.3、95%CI 1.15〜4.60、P=0.018
歯周病の状態を連続的に測定して収縮期血圧と比較しても、同様の結果が得られました。歯周炎では全身の炎症の指標が上昇するものの、歯周炎と動脈血圧値との関連因子にはならなかったようです。
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歯周炎の患者数は増加の一途を辿っており、生活習慣病の調査・統計によれば2017年には「歯肉炎及び歯周疾患」の総患者数(継続的な治療を受けていると推測される患者数)は、398万3,000人で、前回の調査(2014年)よりも66万人以上増加しました。
今回の試験結果によれば、歯周炎の診断は平均収縮期血圧と関連し、一般的な心血管危険因子とは独立して、収縮期血圧が140mmHg以上であるオッズ比が2.3と、有意に高いことが示されました。本試験は症例対象研究ですので、あくまでも相関関係ではありますが、歯周炎を有している人は血圧が高い可能性が示されました。
歯周炎と血圧の関連性について、より検証を重ねるためには、歯周炎を有する患者におけるランダム化比較試験の結果が待たれるところです。
✅まとめ✅ 歯周炎は、健康な人の収縮期血圧の上昇と関連している可能性がある
根拠となった論文の抄録
背景:近年、高血圧と歯周炎が密接に関連していることが示唆されているが、その関連性については限られたデータしかない。本研究では、全身的に健康な人を対象に、歯周炎と平均動脈血圧の関係を調べることを目的とした。
方法:大学で2000年から2018年の間に実施された臨床試験の登録から、歯周炎のある参加者 250例と歯周炎のない参加者 250例を含む症例対照研究をデザインした。
症例は、年齢、性別、体格指数が対照と釣り合っていた。線形、ロジスティック回帰、および媒介モデルを計画し、さまざまな歯周病対策と動脈血圧の関連性を検証した。さらに、hs-CRP(高感度C反応性タンパク質)と白血球数で評価した全身性炎症の役割についても調べた。
結果:症例は対照群と比較して、平均収縮期血圧が3.36mmHg(95%CI 0.91〜5.82、P=0.007)、拡張期血圧が2.16mmHg(95%CI 0.24〜4.08、P=0.027)高かった。
歯周炎の診断は、平均収縮期血圧(β=3.46±1.25、P=0.005)と関連し、一般的な心血管危険因子とは独立して、収縮期血圧が140mmHg以上である確率が高かった。
☆オッズ比 2.3、95%CI 1.15〜4.60、P=0.018
歯周病の状態を連続的に測定して収縮期血圧と比較しても、同様の結果が得られた。歯周炎では全身の炎症の指標が上昇するが、歯周炎と動脈血圧値との関連性の媒介因子にはならなかった。
結論:歯周炎は、健康な人の収縮期血圧の上昇と関連している。歯周病と全身の健康対策を歯科医院や医療機関で推進することは、高血圧とその合併症の負担を軽減するのに役立つと考えられる。
引用文献
Association Between Periodontitis and Blood Pressure Highlighted in Systemically Healthy Individuals: Results From a Nested Case-Control Study
Eva Muñoz Aguilera et al. PMID: 33775115 DOI: 10.1161/HYPERTENSIONAHA.120.16790
Hypertension. 2021 May 5;77(5):1765-1774. doi: 10.1161/HYPERTENSIONAHA.120.16790. Epub 2021 Mar 29.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33775115/
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