睡眠のタイミングがうっ血性心不全を予測するかもしれない(コホート研究; J Am Heart Assoc. 2021)

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睡眠及び起床時刻により慢性心不全リスクが異なる?

うっ血性心不全は、世界中で死亡、罹患、入院の主要原因の一つとなっています。慢性心不全に関連する死亡率は多くの国で低下しているにもかかわらず、慢性心不全の発症率と関連する費用は着実に増加しています。したがって、慢性心不全の予防と早期治療のためには、危険因子を特定することが重要です。

これまでの研究において、睡眠時刻の遅延は、CVDの危険因子とされる肥満、血糖コントロール不良、抑うつ症状とも相関することが示されています。しかし、睡眠時刻の遅延と慢性心不全との関係はいまだ不明であり、個人の最適な睡眠時刻についてはさらなる検討が必要です。

そこで今回は、SHHS(Sleep Heart Health Study)データベースを用いて、睡眠タイミング(就寝時刻、起床時刻、睡眠中途半端な時刻)と慢性心不全の発症率との関係を調査した研究結果をご紹介します。

試験結果から明らかになったことは?

平均追跡期間11年の間に、慢性心不全 519例(10.9%)が報告されました。多変量コックス比例ハザードモデルでは、平日の就寝時刻が午前12時を超える人(ハザード比[HR] 1.56、95%CI 1.15〜2.11、P=0.004)および午後11時1分から午前12時までの人(HR 1.25、95%CI 1.00〜1.56、P=0.047)は、就寝時刻が午後10時1分から午後11時までの人に比べて、慢性心不全リスクが高いことが明らかになりました。
層別解析の結果、自己申告の睡眠時間が6〜8時間の参加者では、この関連性が強く、さらに平日の起床時刻が午前8時を超えると(HR 1.53、95%CI 1.07〜2.17、P=0.018)、起床時刻が午前6時以下の場合よりも慢性心不全の発症リスクが高くなりました。

本研究において、(1)慢性心不全の既往歴がある、(2)フォローアップデータがない、(3)就寝・起床時間のデータがない、(4)夜勤をしている者、は除外されていますので、慢性心不全患者において、就寝時刻及び起床時刻が健常人と異なるとは考えられません。

あくまでも相関関係ではありますが、平日の就寝時刻の遅れ(午後11時以上)および起床時刻の遅れ(午前8時以上)は、慢性心不全の発症リスクを上昇させるかもしれません。

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✅まとめ✅ 平日の就寝時刻の遅れ(午後11時以上)および起床時刻の遅れ(午前8時以上)は、慢性心不全の発症リスク上昇と関連していた

根拠となった論文の抄録

背景:これまでの研究で、睡眠時間と心血管危険因子との関連性が示唆されている。しかし、睡眠のタイミングとうっ血性心不全(CHF)との関係については、証拠がない。本研究では、この関係を調べることを目的とした。

方法:今回の多施設共同前向きコホート研究では、SHHS(Sleep Heart Health Study)データベースから4,765例(男性 2,207例、平均年齢 63.6±11.0歳)の参加者を募集した。追跡調査は、ベースラインから最終打ち切り日までの間に初めてCHFの診断を受けるまで行った。
睡眠のタイミング(平日と週末の就寝時刻と起床時刻)は、自己申告のアンケートに基づいていた。
睡眠時間とCHFとの関連性を調べるために、Cox比例ハザードモデルを構築した。

結果:平均追跡期間11年の間に、519例のCHF(10.9%)が報告された。多変量コックス比例ハザードモデルでは、平日の就寝時刻が午前12時を超える人(ハザード比[HR] 1.56、95%CI 1.15〜2.11、P=0.004)および午後11時1分から午前12時までの人(HR 1.25、95%CI 1.00〜1.56、P=0.047)は、就寝時刻が午後10時1分から午後11時までの人に比べて、CHFリスクが高いことが明らかになった。
層別解析の結果、自己申告の睡眠時間が6〜8時間の参加者では、この関連性が強まった。さらに、平日の起床時刻が午前8時を超えると(HR 1.53、95%CI 1.07〜2.17、P=0.018)、起床時刻が午前6時以下の場合よりもCHF発症リスクが高くなった。

結論:平日の就寝時刻の遅れ(午後11時以上)および起床時刻の遅れ(午前8時以上)は、CHFの発症リスクの上昇と関連していた。

引用文献

Sleep Timing May Predict Congestive Heart Failure: A Community-Based Cohort Study
Bin Yan et al. PMID: 33666090 DOI: 10.1161/JAHA.120.018385
J Am Heart Assoc. 2021 Mar 16;10(6):e018385. doi: 10.1161/JAHA.120.018385. Epub 2021 Mar 5.
ー続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33666090/

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