ダパグリフロジンはEFが改善した心不全(HFimpEF)患者に対しても有効ですか?(DB-RCTの事前設定解析; DELIVER試験; Nat Med. 2022)

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EFが改善した心不全(HFimpEF)に対するSGLT-2阻害薬ダパグリフロジンの効果とは?

心臓の収縮機能が低下していることを示す駆出率(EF)が低下した心不全に対する最新の治療により、患者はEFの上昇を示すことがあります。このような心不全はEFが改善した心不全(HFimpEF:以前はHFrecEFと呼ばれた)と分類されています。心不全治療の進歩は目覚ましく、HFimpEFの患者集団が増加しています。

HFimpEF患者は、左室駆出率の低下した心不全(HFrEF)や駆出率の保たれた心不全(HFpEF)患者と同様に種々のイベント発生率が高いため、これまでのほぼすべての心不全アウトカム試験から除外されてきました。そのため、臨床管理に関するデータが限られています。

そこで今回は、HFimpEF患者を対象にダパグリフロジンの効果を検証した試験の結果をご紹介します。

本試験は、DELIVER試験(NCT03619213)の事前特定解析でした。症候性心不全で左室EFが40%超の患者6,263例のうち、1,151例(18%)がHFimpEFであり、EFが40%以下から40%超に改善した患者として定義されました。参加者は、1日10mgのダパグリフロジンまたはプラセボにランダムに割り付けられ、試験の主要アウトカムは、心血管死または心不全悪化(心不全入院または緊急心不全受診)の複合でした。

試験結果から明らかになったことは?

HFimpEFの参加者は、EFが常に40%以上である参加者と同様のイベント発生率でした。

ハザード比 HRあるいは率比(95%CI)
主要複合転帰:
心血管死または心不全悪化(心不全入院または緊急心不全受診)の複合
HR 0.74
0.56~0.97
最初の心不全悪化イベントHR 0.78
0.61~1.14
心血管死HR 0.62
0.41~0.96
総心不全悪化イベント率比 0.68
0.50~0.94

HFimpEFの参加者において、ダパグリフロジンは主要複合転帰(ハザード比(HR) 0.74、95%信頼区間(CI)0.56~0.97)、最初の心不全悪化イベント(HR 0.78、95%CI 0.61~1.14)、心血管死(HR 0.62、95%CI 0.41~0.96) および総心不全悪化イベント(率比 0.68、95%CI 0.50~0.94)を、EFが常に40%以上の患者集団と同程度に減少させることが明らかとなりました。

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心不全治療の進歩は目覚ましく、様々な治療薬が承認販売されています。なかでもSGLT-2阻害薬は、糖尿病の有無に関わらず大規模臨床試験が実施されており、腎障害や心不全に対する有効性・安全性が検証されていることから、心不全の診療ガイドラインにおいても治療選択肢の一つとして推奨されています。

心不全は駆出率の違いにより、HFpEF(左室駆出率が50%以上)、HFmrEF(軽度低下:41~49%)、HFrEF(低下:40%以下)の3つに大別されますが、治療などにより駆出率が変化することからHFimpEF(ベースライン40%以下から10%以上改善し駆出率が40%超)についても分類されるようになりました。

さて、本試験結果によれば、症状を有するHFimpEF患者に対して、診療ガイドラインに基づく薬物療法にSGLT-2阻害剤ダパグリフロジンを追加することにより、プラセボと比較して罹患率と死亡率をさらに減少させることができるかもしれないことが明らかとなりました。

事後解析の結果であること、限られた症例数、ランダム化の破綻などの制限があるため、あくまでも可能性が示されたにすぎませんが、ダパグリフロジンは、HFpEFやHFmrEF患者と同様に、HFimpEF患者においても有効であることが明らかとなりました。ダパグリフロジンについては駆出率に関わらず効果が期待できそうです。

続報に期待。

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☑まとめ☑ 症状を有するHFimpEF患者に対して、診療ガイドラインに基づく薬物療法にSGLT-2阻害剤ダパグリフロジンを追加することにより、罹患率と死亡率をさらに減少させることができるかもしれない。

根拠となった試験の抄録

背景:心臓の収縮機能が低下していることを示す駆出率(EF)が低下した心不全に対する最新の治療により、患者はEFの上昇を示すことがある。EFが改善した心不全(HFimpEF)として分類されるこの増加する患者集団の臨床管理に関するデータは限られており、イベント発生率が高いため、これまでのほぼすべての心不全アウトカム試験から除外されてきた。

方法:DELIVER試験(NCT03619213)の事前特定解析では、症候性心不全で左室EFが40%超の患者6,263例のうち、1,151例(18%)がHFimpEFであり、EFが40%以下から40%超に改善した患者として定義されている。参加者は、1日10mgのダパグリフロジンまたはプラセボにランダムに割り付けられ、試験の主要アウトカムは、心血管死または心不全悪化(心不全入院または緊急心不全受診)の複合とされた。

結果:HFimpEFの参加者は、EFが常に40%以上である参加者と同様のイベント発生率でした。HFimpEFの参加者において、ダパグリフロジンは主要複合転帰(ハザード比(HR) 0.74、95%信頼区間(CI)0.56~0.97)、最初の心不全悪化イベント(HR 0.78、95%CI 0.61~1.14)、心血管死(HR 0.62、95%CI 0.41~0.96) および総心不全悪化イベント(率比 0.68、95%CI 0.50~0.94)を、EFが常に40%以上の人と同程度に減少させることができた。

結論:これらのデータは、症状のあるHFimpEF患者には、ガイドラインに従った既往の薬物療法にナトリウム/グルコース共輸送体2阻害剤を追加することにより、罹患率と死亡率をさらに減少させることができることを示唆している。

引用文献

Dapagliflozin in heart failure with improved ejection fraction: a prespecified analysis of the DELIVER trial
Orly Vardeny et al. PMID: 36522606 PMCID: PMC9800271 DOI: 10.1038/s41591-022-02102-9
Nat Med. 2022 Dec;28(12):2504-2511. doi: 10.1038/s41591-022-02102-9. Epub 2022 Dec 15.
— 読み進める www.nature.com/articles/s41591-022-02102-9

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