HPVワクチン接種は浸潤性子宮頸がんのリスクを低下できますか?(スウェーデン人口ベース研究; NEJM 2020)

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HPV Vaccination and the Risk of Invasive Cervical Cancer

Jiayao Lei et al.

October 1, 2020
N Engl J Med 2020; 383:1340-1348
DOI: 10.1056/NEJMoa1917338

PMID: 32997908

Funded by the Swedish Foundation for Strategic Research and others.

背景

悪性度の高い子宮頸部病変の予防における4価ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンの有効性と有効性が示されている。しかし、4価HPVワクチン接種とその後の浸潤性子宮頸がんのリスクとの関係を示すデータは不足している。

方法

スウェーデン全国の人口動態および健康登録を用いて、2006年から2017年までの10~30歳の男女1,672,983例のオープン集団を追跡した。

HPVワクチン接種と浸潤性子宮頸がんリスクとの関連を評価し、追跡時年齢、暦年、居住郡、および教育、世帯収入、母親の出生国、母親の病歴を含む親の特徴をコントロールした。

結果

・研究期間中、31歳の誕生日までの女児および女性を対象に、子宮頸がんの評価を行った。

・子宮頸がんと診断されたのは、4価HPVワクチンを接種した女性19例と接種しなかった女性538例であった。

・子宮頸がんの累積発生率は、ワクチン接種を受けた女性では10万人あたり47例、ワクチンを受けていない女性では10万人あたり94例であった。

・追跡調査時の年齢を調整した後、ワクチン接種集団とワクチン未接種集団を比較した場合の発生率比は0.51(95%信頼区間[CI] 0.32~0.82)であった。

・他の共変量の追加調整後の発症率比は0.37(95%信頼区間[CI] 0.21~0.57)であった。

・すべての共変量で調整した後、17歳以前にワクチンを接種した女性の発症率比は0.12(95%CI 0.00~0.34)であり、17~30歳でワクチンを接種した女性の発症率比は0.47(95%CI 0.27~0.75)であった。

結論

スウェーデンの女児と10~30歳の女性において、4価のHPVワクチン接種は、集団レベルでの浸潤性子宮頸がんリスクの実質的な減少と関連していた。

コメント

いわゆる “がん” は、前がん病変から進行した状態です。発がん物質や遺伝子障害、遺伝子変異などのプロセスを経流ことによって “がん” が発生すると考えられており、これは、がんの多段階説と呼ばれています。

がんの多段解説とは、単一の要因で “がん” は発生せず、(発がん)イニシエーションプロモーション、さらにプログレッションという3段階を経て “がん” が発生するという定説です。この定説によれば、プロモーションまでに免疫作用の1つである異常細胞のアポトーシスや遺伝子修復が行われることにより “がん” の発生が抑制されるとのことです。

ヒトパピローマウイルス(HPV)が感染しただけでは “がん化” する事はありませんが、先にあげた多段階を経る事で各種がんを発生させます。HPVは子宮頸部だけでなく中咽頭(軟口蓋、舌根、および扁桃)、肛門、直腸、陰茎、膣、および外陰の扁平上皮に感染します。したがって、HPVにより引き起こされる “がん” は、そのほとんどが扁平上皮がんです。HPVに関連する “がん” の中でも、特に子宮頸がんを引き起こす事が一般的には認知されていますが、HPVを原因としない子宮頸がんもあります。また感染部位から分かるように、女性だけでなく男性においてもHPV感染は発がんリスクとなります。

これまでの研究結果により、HPVワクチンは、前がん病変を減少させることが報告されていました。しかし、その後の浸潤性子宮頸がんの発生数を抑制できるか否かはデータがありませんでした。

さて、本試験結果によれば、子宮頸がんの累積発生率は、ワクチン接種を受けた女性では10万人あたり47例、ワクチンを受けていない女性では10万人あたり94例でした。他の共変量の追加調整後の発症率比は0.37(95%信頼区間[CI] 0.21~0.57)と、ワクチンを接種することによる発がん抑制効果が、かなり大きいように感じます。

ではNNTで見てみるとどうでしょうか。やや長くなってしまったので、続きは別記事にします。

✅まとめ✅ 4価のHPVワクチン接種は、集団レベルでの浸潤性子宮頸がんリスクの実質的な減少と関連していた

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