Screening for Type 2 Diabetes Mellitus
Nasheeta Peer et al.
Cochrane Database Syst Rev. 2020 May 29;5:CD005266. doi: 10.1002/14651858.CD005266.pub2.
PMID: 32470201
DOI: 10.1002/14651858.CD005266.pub2
Trial registration: ClinicalTrials.gov NCT00318032.
背景
糖尿病は、高血糖を特徴とする代謝性疾患であり、微小血管および大血管の合併症の重篤な負担と関連しているが、しばしば診断されないままである。
一見健康な人を対象としたスクリーニング検査は、2型糖尿病の早期発見と治療につながる可能性があり、関連する合併症の発症を予防または遅らせることができる可能性がある。
目的
2型糖尿病のスクリーニングの効果を評価する。
検索方法
CENTRAL、MEDLINE、LILACS、WHO ICTRP、ClinicalTrials.govを開始時から検索した。最終検索日はすべてのデータベースについて2019年5月とした。言語制限は適用しなかった。
選定基準
糖尿病が知られていない成人および小児を対象とし、少なくとも3ヵ月以上実施され、糖尿病スクリーニング(集団的、標的的、または日和見的)の効果を評価したランダム化比較試験を、糖尿病スクリーニングを行わない場合と比較した場合を対象とした。
データ収集および分析
2人のレビュー執筆者が独立して関連性のある可能性のある研究のタイトルと抄録をスクリーニングし、関連性のある可能性のある研究のフルテキストをレビューし、データを抽出し、コクランの「バイアスのリスク」ツールを用いて「バイアスのリスク」評価を実施した。また、GRADEアプローチを用いてエビデンスの全体的な確実性を評価した。
主な結果
・検索により特定されたタイトルと抄録4,651件をスクリーニングし、フルテキスト/レコード92件を評価して対象とした。
・イングランド東部の一般診療所33施設から20,184例が参加し、ハイリスク者を糖尿病のスクリーニングに招待した場合としなかった場合の効果を評価したクラスターランダム化試験ADDITION-Cambridge試験を1件含めた。
・糖尿病リスクスコアは、高リスク者を特定するために使用された。年齢、性別、肥満度指数、処方されたステロイドと降圧剤の使用に関連する変数で構成されている。
・診療所27施設がスクリーニング群(実際にスクリーニングに参加したのは1万1,737例)に、診療所5施設が無スクリーニング群(4,137例)にランダム割り付けされた。
・両群とも参加者の36%が女性であった。参加者の平均年齢はスクリーニング群で58.2歳、無スクリーニング群で57.9歳であった。両群の参加者のほぼ半数は降圧薬を服用していた。
・この研究の第1相の所見は、2型糖尿病のスクリーニングと無スクリーニングを比較しても、全死亡率に明確な差は認められなかったことを示している。
★ハザード比(HR)=1.06、95%信頼区間(CI)0.90~1.25、低確証性のエビデンス
—
・2型糖尿病のスクリーニングを受けた場合と受けなかった場合を比較すると、糖尿病関連死亡率(死亡診断書に糖尿病が死因として報告されているかどうかに基づく)のHRは1.26、95%信頼区間(CI)0.75~2.12(低確証性のエビデンス)であった。
・糖尿病関連の罹患率および健康関連のQOLはサブサンプルで報告されたにすぎず、スクリーニング介入と対照との間に実質的な差は示されなかった。
・組み入れられた研究では、有害事象、2型糖尿病の発生率、グリコシル化ヘモグロビンA1c(HbA1c)、社会経済的影響については報告されていなかった。
著者らの結論
2型糖尿病のスクリーニングが全死亡率および糖尿病関連死亡率に及ぼす影響については不明である。エビデンスは1件の研究のみから得られたものである。したがって、早期の2型糖尿病スクリーニングの健康アウトカムに関する確固たる結論を出すことはできない。さらに、この研究では、レビューで事前に指定されたアウトカム(糖尿病関連の罹患率、2型糖尿病の発生率、健康関連のQOL、有害事象、社会経済的影響)のすべてを評価していない。
コメント
2型糖尿病のスクリーニングについては、その検査の有益性に疑問がもたれています。これまでの報告は、スクリーニング検査に有益性(2型糖尿病による合併症の抑制)がなかったことを示しています。
さて、今回の研究では、2型糖尿病のスクリーニングが全死亡率および糖尿病関連死亡率に及ぼす影響については不明とされています。また研究1県の結果のみではありますが、全死亡率には差がなかったことが示されています(ハザード比=1.06、95%信頼区間 0.90~1.25、低確証性のエビデンス)。
コメント