A Case-Control Study of the Risk of Upper Gastrointestinal Mucosal Injuries in Patients Prescribed Concurrent NSAIDs and Antithrombotic Drugs Based on Data From the Japanese National Claims Database of 13 Million Accumulated Patients
Sugisaki N et al.
J Gastroenterol. Dec 2018
PMID: 29948304
DOI: 10.1007/s00535-018-1483-x
Keywords: Anticoagulant; Antiplatelet; Aspirin; Peptic ulcer; Upper gastrointestinal bleeding.
背景
日本の大規模な医療データベースを使用した症例対照研究として、臨床環境における上部消化管(GI)粘膜に対する非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)と抗血栓薬の副作用を特定することを目的とした。
方法
2009年1月から2014年12月までの累積患者1,300万人のデータを含む日本医療データセンターの請求データベースを使用して、NSAIDおよび抗血栓薬を投与された患者の上部消化管粘膜損傷のリスクを評価した。
上部消化管粘膜損傷は消化性潰瘍( n = 143,271)、上部消化管出血(n = 10,545)、および胃食道逆流症(n = 154,755)だった。
各患者について、年齢、性別、診断月ごとに10人の対照が一致した。
結果
・消化性潰瘍のオッズ比(OR)は、
NSAID 1.45、
COX-2阻害薬 1.31、
低用量アスピリン 1.50、
坑血小板薬 1.53、
抗凝固薬 1.62
だった。
・上部消化管出血のOR:
NSAID 1.76、
COX-2阻害薬 1.62、
低用量アスピリン 1.96、
坑血小板薬 1.82、
抗凝固薬 2.38。
・胃食道逆流症の場合:
NSAID 1.54、
COX-2阻害薬 1.41、
低用量アスピリン 1.89、
抗血小板薬 1.67、
抗凝固薬 1.91。
(すべて統計的に有意:P <0.001)
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・NSAIDと抗血栓薬による多剤併用療法は、単剤療法と比較して上部消化管損傷リスクを高めた。
・糖尿病や脂質異常症などの生活習慣病により、傷害リスクも増加した。
結論
大規模かつ組織化された日本の請求データベースを使用した本症例対照研究は、NSAIDと抗血栓薬を投与された患者の上部消化管粘膜損傷のリスクを提供した。
コメント
少し古い日本のデータベース研究ですが,以前から関心のあるテーマであったため読んでみました。
さて、研究結果によるとNSAID、COX-2阻害薬、低用量アスピリン、坑血小板薬、抗凝固薬を使用することで、消化性潰瘍や上部消化管出血、胃食道逆流症リスクが増加した。過去の報告と矛盾しない。ただし、あくまでも仮説生成的な結果。
そして重要な知見としては、NSAIDと坑血小板薬の併用(おそらく各単剤使用に比べてCOX阻害作用が強く現れるためだと考えられる)、基礎疾患として糖尿病や脂質異常症を有している患者で上記のリスクが増加したとのこと。
よく防御因子増強薬やプロトンポンプ阻害薬を併用すれば良い、という意見を目にしますが、これらの併用によりリスクが減少するのは一部です。少なくとも全例で併用する意義は少ないと考えられます。
消化管出血あたりの情報は一度まとめておこうと思います。
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