心不全に対する緩和ケアのゴールはどこか?(Cardiovasc Res. 2009)・2020年の自分に向けて

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Palliative care for people living with heart failure: European Association for Palliative Care Task Force expert position statement.

Sobanski PZ et al.

Cardiovasc Res. 2009 Jan 1;116(1):12-27.

doi: 10.1093/cvr/cvz200.

PMID: 31386104

【心不全における緩和ケアのゴールとは?】

まず心不全は単一の疾患ではなく、様々な原疾患を有する “症候群” です。したがって心不全までに至る原因は様々です。

Figure 1を見てみると、終末期における衰退、つまり人生の終わりまでの軌跡には3つあります。1つは悪性腫瘍による死で、病態の進行および治療による体力低下、副作用などにより劇的な転機をたどります。2つ目は身体的および認知的虚弱であり、ベースの機能が低い超高齢者がこれに当たると考えられます。徐々に徐々に衰退していくイメージです。最後に3つ目が臓器不全、今回の場合は心不全がこれに当たります。所々に見られる “谷” は増悪にあたります。心不全の場合は急性増悪による入院がイメージしやすいと思います。したがって、心不全の治療ゴールは普段の生活を送れるようにすることはもちろんのこと、再入院を防ぐことが目的となります。我々薬剤師ができることはなんでしょうか。事項で考えを述べていきます。

Figure 1 終末期における衰退までの軌跡(本文より引用)

【薬剤師という立場からできることとは?】

心不全治療における薬剤師の役割とはなんでしょうか。大きく分けて3つあると考えられます。

・併用薬の確認(相互作用、増悪因子)

・服薬アドヒアランスの確認(少なくとも80%は必要)

・患者教育

特に患者教育は重要だと考えられます。再入院の原因は普段の生活の中に潜む “油断” だからです。

日本の福岡で検討された研究(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/11194290)によれば、心不全患者における急性増悪による入院の原因は以下のようです。

Table 4 心不全急性増悪による再入院の原因(本文より引用)

これによれば、患者側の要因(服薬コンプライアンス、感染症、身体的・精神的ストレス)は61%となります。したがって、患者教育を実践することで61%の患者さんが再入院することを防げるかもしれません。

(ちなみに残りの要因としては不整脈や心筋梗塞、血圧のアンコントロールなどの医学的なものです)

✅まとめ✅

いかがでしょうか。心不全の基本的な治療目標を把握し、個々の患者毎に合わせて目標を共有できれば、その目標達成のための手段に “意味を付加” できるのではないでしょうか。

心不全に限ったことではありませんが、薬剤師の役割を明確化し、信念を持って取り組めば医療に貢献できると考えられます。これは病院と薬局の薬剤師が各々の役割を把握し、情報を共有し、共同できれば実現できる気がしています。もちろん医師や看護師を含めたメディカルスタッフ、患者さんとの共同にも必須です。

病院や薬局での介入により患者アウトカムが変化していく。そして、これを見届けられるのは地域の保険薬局で働いている薬剤師ではないでしょうか。その情報を病院へフィードバックする、つまり患者転機を情報共有していき、現在最も最適であると考えられる治療方針決定のための補佐ができる。薬局薬剤師の役割はここに尽きると思います。

そんな未来を実現するために、新しい地で自分にできることをまず実践していきます。

2020年1月1日元日


【論文の抄録】

心不全は深刻な状態であり、症状の負担と死亡率の点で悪性疾患と同等である。現時点では、比較的少数の心不全患者のみが専門の緩和ケアを受けている。

心不全患者には、難治性の多面的な症状、コミュニケーションと意思決定の問題、家族支援の必要性など、一般的な緩和ケアのニーズがある。

欧州心臓病学会心不全協会の高度心不全研究グループは、緩和ケアの必要性に対する認識を高めるために、心不全の緩和ケアの問題に取り組むワークショップを開催した。

追加の目的には、心不全患者の緩和ケアのアクセシビリティと品質の改善、および欧州全体での心不全指向の緩和ケアサービスの開発の促進が含まれテイル。

本ドキュメントは、ワークショップ中のプレゼンテーションとディスカッションの統合を表しており、患者と家族への質の高いケアの提供、教育、治療の調整、研究と政策の分野における推奨事項を説明している。

コメント

  1. […] […]

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