Resumption of sexual activity after acute myocardial infarction and long-term survival
Gali Cohen et al.
European Journal of Preventive Cardiology, zwaa011,
Published: 22 September 2020
PMID: 未登録
試験の目的
性活動は、生活の全般的な質の向上に重要な因子である。
心筋梗塞(MI)後の最初の数ヶ月以内の性活動頻度の再開が長期生存と関連しているかどうかを検討した。
方法
初発急性心筋梗塞の縦断的イスラエル調査から抽出された65歳以下の性的活動のある患者(n = 495、年齢中央値 53歳)を対象に、指標入院中(1992-93年)および3〜6ヵ月後に面接調査を行った。
性行為の再開は、心筋梗塞後と心筋梗塞前の自己申告の頻度に応じて禁忌/減少または維持/増加と定義した。
患者は、全国登録を通じて全死亡率および原因別死亡率について追跡調査された。
性行為再開の傾向スコアを算出し、それに基づいて逆確率加重Coxモデルを構築して関連性を検討した。
結果
・性行為の頻度を維持/増加させた患者[n = 263(53%)]は、控える/減少させた患者と比較して、社会経済的地位が高く、うつ病の発現レベルが低かった。
・プロペンシティスコアで加重した合成標本では、測定されたベースラインの共変量の分布は、曝露のカテゴリーを超えて類似していた。
・追跡期間中央値 22年の間に患者 211人(43%)が死亡した。
・性行為の頻度の維持/増加は、性行為を控える/減少させる場合と比較して、全死亡率[ハザード比(HR)0.65、95%信頼区間(CI)0.48〜0.88]と逆相関していた。
・この逆相関は、心血管系死亡(HR 0.90、95%CI 0.53~1.51)よりも非心血管系死亡(HR 0.56、95%CI 0.36~0.85)の方が頑健であった。
結論
心筋梗塞後1ヵ月以内の性的活動頻度の再開は長期生存率の改善と強く関連しており、心筋梗塞直後の性的カウンセリングの必要性が強調された。
コメント
心筋梗塞後の過度の持続的な運動は死亡リスク増加に関与している可能性が指摘されています。また座位姿勢が多い群と、適度な運動をする群において、性行為が死亡リスクとなるのは座位姿勢が多い群であることが報告されています。一方、性行為がQOL向上や鬱リスク低下、死亡リスク低下と相関していることも報告されています。
しかし、心筋梗塞後の間もない期間における性行為の再会が及ぼす影響は不明です。
さて、追跡期間 22年(中央値)という長期的な本試験の結果によれば、65歳以下の性的活動のある患者において、心筋梗塞1ヵ月後の性行為活動の再開は、性行為を控える/減少させる場合と比較して、全死亡率[ハザード比(HR)0.65、95%信頼区間(CI)0.48〜0.88]との逆相関が認められました。内訳としては、非心血管系死亡リスクの低下の方が大きかったようです。
そもそも全身体活動に占める性行為の割合は少なく、運動と呼べるほどの活動量ではないと考えます。また過去の報告では、死亡リスクに占める性行為の割合は1%以下のようですので、やはり性行為自体が死亡リスクを増加させる可能性は低いと考えます。ただし、冒頭で述べたように、そもそも身体活動が低い集団では、身体活動に占める性行為の割合が多くなるため注意が必要かもしれません。
本試験で、ベースの運動量について調整されているのは心筋梗塞後のみですが、この点については組入基準を考慮すると致し方ない気もします。ただ可能であれば、心筋梗塞前6〜12ヵ月のデータもあると、より内的妥当性が高くなるのではないかと考えます。
あくまでも相関関係までではありますが、有用な結果であると考えます。
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