主要心血管イベントに対するアンギオテンシン受容体拮抗薬の効果はどのくらいですか?(RCTのSR&MA; BMC Cardiovasc Disord. 2020.)

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Assessing the risk of angiotensin receptor blockers on major cardiovascular events: a systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials

Yara Wanas et al.

BMC Cardiovasc Disord. 2020.

PMID: 32316917

PMCID: PMC7175553

DOI: 10.1186/s12872-020-01466-5

Keywords: Angiotensin receptor blockers; Cardiovascular events; Meta-analysis; Risk.

背景

アンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)は、多くの心血管疾患の治療薬として一般的に使用されているが、その安全性は疑問視されている。

VALUE試験では、他の降圧薬と比較してARB投与群で心筋梗塞のリスクが高いことが明らかになった。

本メタアナリシスの目的は、ランダム化比較試験(RCT)の利用可能なエビデンスを統合し、ARBが心血管イベントのリスクを増加させるかどうかを明らかにすることである。

方法

ARBの安全性を評価するRCTを特定するために包括的な検索を行った。

すべての論文のタイトルと抄録は、著者2名によって独立してスクリーニングされた。

データ抽出と質の評価も独立して行った。 全死亡、心筋梗塞、脳卒中の相対リスク(RR)をIVhetモデルを用いてプールした。

異なる参加者の特徴に解析を限定することで、ARBの効果を評価するために多重感度解析を行った。

結果

参加者170,794例からなるRCT45件が解析に含まれた。その結果、ARBは全死亡(RR 1.00、95%CI 0.97〜1.04)、心筋梗塞(RR 1.01、95%CI 0.96〜1.06)、脳卒中(RR 0.92、95%CI 0.83〜1.01)のリスクを増加させないことが明らかになった。

・感度解析では、ARB使用による心血管イベントのリスクが増加する特定の患者群は得られなかった。

・集団における喫煙者の割合が25%未満(RR 0.91、95%CI 0.84〜0.98)と女性(RR 0.76、95%CI 0.68〜0.84)の場合、全死亡と脳卒中のリスクはそれぞれARBにより減少した。

結論

ARBは主要な心血管イベントのリスクを増加させず、患者への使用は安全である。

コメント

以前から心血管アウトカムに対するACE阻害薬とARBの効果には差異がある可能性が示唆されています。事実、メタ解析の結果において、ACE阻害薬とARBを統合解析した場合と、個々の集団として解析した場合に差が認められています。

さて、本試験結果によれば、ARB使用により、全死亡、心筋梗塞、脳卒中のリスク増加あるいはリスク減少は認められませんでした。一方、サブグループ解析では、喫煙率25%未満あるいは女性においては、全死亡および脳卒中リスクの低下が認められました。

本試験の特徴は、患者集団の背景因子とアウトカムとの関連性(相関性)について検討しているところであると考えます。興味深いアプローチであると思います。

これまでの報告と大きな違いはありませんが、試験によっては、ARB使用によりリスク増加あるいはリスク減少が報告されていますので、現時点ではどちらともいえないのではないかと考えます。一方で、ACE阻害薬の使用による上記アウトカムのリスク減少については、ある程度一貫して認められています。この差のメカニズムも気になるところです。

続報を待ちたい。

✅まとめ✅ ARB使用による全死亡、心筋梗塞、脳卒中のリスク増加あるいはリスク減少は認められなかったが、喫煙率25%未満あるいは女性においてはリスクが減少するかもしれない

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