SARS-CoV-2に対するPCR検査において唾液サンプルと鼻咽頭拭い液サンプルの陽性率はどのくらい一致しますか?

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2020年6月2日 唾液サンプルによるPCR検査が日本でも可能になった

背景

サンプルとして採取しやすい唾液は、以前から注目されており、海外ではすでに唾液を用いたPCR検査が実施されています。日本では2020年6月2日から唾液サンプルによるPCR検査が可能となりました。

しかし、サンプル採取部位により感度が異なることが報告されています。そこで、唾液サンプルを用いたPCR検査の感度について、よく用いられている鼻咽頭拭い液サンプルと比較した研究を調べてみました。

論文1:Saliva as a Non-Invasive Specimen for Detection of SARS-CoV-2

Eloise Williams et al.

J Clin Microbiol. 2020 Apr 21;JCM.00776-20. doi: 10.1128/JCM.00776-20. Online ahead of print.

PMID: 32317257

DOI: 10.1128/JCM.00776-20

以下、結果のみ抜粋;

・全体では、39/622人(6.3%;95%信頼区間[CI] 4.6%〜8.5%)の患者がPCR陽性の鼻咽頭拭い液(nasopharyngeal swabs, NPS)を有し、33/39人(84.6%;95%CI 70.0%〜93.1%)の患者が唾液中にSARS-CoV-2を検出した。

・周期閾値(Ct)中央値は唾液よりもNPSで有意に低く(Figure 1A)、NPSではウイルス負荷が高いことが示唆され、両サンプルともCt値と症状発現からの日数に相関があった(Figure 1B)。

(Figure 1A)
Figure 1. (A)Median cycle threshold (Ct) value in nasopharyngeal swabs and saliva specimens positive for SARS-CoV-2. Abbreviations: NPS, nasopharyngeal swab. (B)Median cycle threshold (Ct) value and days from symptom onset in nasopharyngeal swabs and saliva specimens positive for SARS-CoV-2. Data points represent the medianCt value from patient samples and bars represent the 102interquartile range.The slope represents the line of best fit. (本文より引用)

・特異性を評価するために、PCR陰性の患者50人の唾液検体のセットも検査した。 注目すべきは、SARS-CoV-2が1/50(2%;95%CI 0.1%〜11.5%)のこれらの唾液検体で検出されたことであり、これはNPSの収集の質の違いを反映している可能性がある。

論文2:Saliva as an Alternate Specimen Source for Detection of SARS-CoV-2 in Symptomatic Patients Using Cepheid Xpert Xpress SARS-CoV-2

Clare McCormick-Baw et al.

J Clin Microbiol. 2020 May 15;JCM.01109-20. doi: 10.1128/JCM.01109-20. Online ahead of print.

PMID: 32414838

DOI: 10.1128/JCM.01109-20

以下、結果のみ抜粋;

・鼻咽頭拭い液(Nasopharyngeal swab, NPS)と唾液検体ペアの合計156検体が検査された。

・全体の陽性率は50/156(32.1%)、平均年齢は47.8歳、男女(M/F)比は90/66であった。

・採取週の集団陽性率は11.1%であった。

・153/156(98%、95%信頼区間(CI)94.48~99.60%)サンプルは全体的に一致していた。

・NPSと比較した場合、47/49サンプルが唾液中で陽性であり、96%(95%CI 86.02〜99.5%)の陽性率で一致していた。

・105/106サンプルは唾液とNPSが陰性であった。1 つのサンプルは唾液中のSARS-CoV-2核酸の検出可能なレベルを示したが、NPS は陰性(1/106)であり、99%の陰性のパーセント一致(95%CI 94.86〜99.98%)となった。平均サイクル閾値をTable 1にまとめて比較した。

Table 1: Average cycle threshold values for targets E and N2 in nasopharyngeal and 1 saliva specimens (n = 50) from Xpert Xpress SARS-CoV-2 PCR assay.(本文より引用)

コメント

鼻咽頭拭い液と唾液サンプルの陽性率は、ほぼ一致していました。ただし、鼻咽頭拭い液の方が、唾液サンプルよりも陽性率が高い可能性が示されています。それでも違いは数%ですので、実臨床でそこまでxつ大きな問題とはならないと考えます。

サンプル採取の簡便さや患者の負担を考慮すれば、唾液サンプルで充分であると考えます。

✅まとめ✅ SARS-CoV-2に対するPCR検査において、唾液サンプルは鼻咽頭拭い液サンプルと高い陽性一致率を示した

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