Use of renin–angiotensin–aldosterone system inhibitors and risk of COVID-19 requiring admission to hospital: a case-population study
Prof Francisco J de Abaj et al.
Lancet 2020
Published:May 14, 2020
DOI:https://doi.org/10.1016/S0140-6736(20)31030-8
Funding: Instituto de Salud Carlos III.
背景
レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系(RAAS)阻害薬が重症COVID-19の発症を引き起こす可能性が懸念されているが,疫学的なエビデンスは不足している. 本研究では、COVID-19の発生以来、スペインのマドリードで行われた症例集団調査の結果を報告する。
方法
この症例集団研究では、マドリード市内の病院7施設から、PCRでCOVID-19と確定診断され、2020年3月1日から3月24日までの間に入院した18歳以上の患者を連続的に抽出した。
基準群として、スペインの一次医療データベースであるBase de datos para la Investigación Farmacoepidemiológica en Atención Primaria(BIFAP)から、年齢、性別、地域(すなわち、マドリッド)、入院日(月と日、指標日)を個別にマッチさせ、1症例につき患者10人をランダムにサンプリングした(最終入手可能年2018年)。
症例と対照の両方の電子カルテから、指標日の前月までの併存疾患と処方(すなわち、現在の使用)に関する情報を抽出した。
関心のあるアウトカムはCOVID-19患者の入院であった。
適応症による交絡を最小限に抑えるために、主な解析では、COVID-19の入院を必要とする患者とRAAS阻害薬の使用との関連を、他の降圧薬の使用と比較して評価することに焦点を当てた。
条件付きロジスティック回帰を用いて、年齢、性別、心血管系合併症および危険因子を調整したオッズ比(OR)および95%CIを算出した。 本試験のプロトコールは、EUの承認後試験電子登録簿(EUPAS34437)に登録された。
所見
・症例1,139例と対照群11,390例のデータを収集した。
・症例のうち444例(39.0%)は女性で、平均年齢は69.1歳(SD 15.4)であり、性別と年齢は一致していたが、心血管疾患の既往(OR =1.98、95%CI 1.62〜2.41)と危険因子(1.46、1.23〜1.73)を有する症例の割合が対照群に比べて有意に高かった。
・他の降圧薬使用者と比較して、RAAS阻害薬使用者では、COVID-19による入院を必要とする調整後ORは0.94(95%CI 0.77〜1.15)であった。
・アンジオテンシン変換酵素阻害薬(調整済みOR =0.80、0.64〜1.00)またはアンジオテンシン受容体拮抗薬(1.10、0.88〜1.37)のいずれでもリスクの増加は認められなかった。
・RAAS阻害薬の使用とCOVID-19の入院を必要とするリスクとの間の調整済みORは、性別、年齢および背景にある心血管系リスクでは変わらなかったが、RAAS阻害薬の使用者である糖尿病患者ではCOVID-19の入院を必要とするリスクの低下が認められた(調整済みOR =0.53、95%CI 0.34〜0.80)。
・調整後のORはCOVID-19の重症度にかかわらず同様であった。
結果の解釈
RAAS阻害剤は、致死的な症例や集中治療室への入院を必要とするCOVID-19のリスクを高めるものではないため、COVID-19の重症化を防ぐためには投与を中止すべきではない。
コメント
これまでにCOVID-19とACE2との関連性が報告されており、ACE阻害薬あるいはARBのリスク増加またはリスク低下との関連性がin vitro試験で示唆されていました。
さて、今回ご紹介する論文は、スペイン、マドリードの病院7施設で行われた症例対照研究です。
本試験結果によれば、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬(調整済みOR =0.80、0.64〜1.00)またはアンジオテンシン受容体拮抗薬ARB(1.10、0.88〜1.37)のいずれにおいても、リスク増加は認められませんでした。また糖尿病患者ではCOVID-19による入院リスクの低下が認められました(調整済みOR =0.53、95%CI 0.34〜0.80)。
あくまでも仮説生成的な結果ですが、COVID-19による入院リスクとACE阻害薬/ARBとの関連性はなさそうです。
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