― 高血圧と脳梗塞を引き起こした症例から考える
エナジードリンクのリスクとは?
エナジードリンクは、眠気覚ましや集中力向上を目的に日常的に摂取される飲料です。しかしその一方で、高カフェイン摂取が心血管系に与える影響については、十分に認識されていない現状があります。
今回ご紹介する論文では、エナジードリンクの大量摂取が重度高血圧と脳梗塞に関与した可能性のある症例が報告されています。
論文:
Energy drink consumption as a potential risk factor for stroke and cardiovascular disease
PMID: 41365773
本記事では、この症例報告の内容をもとに
✔ 何が起こったのか
✔ どこまで因果関係が示唆されているのか
✔ 臨床で注意すべき点
✔ 試験(症例報告)の限界
を整理して解説します。
試験結果から明らかになったことは?
◆症例の概要
■ 患者背景
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 年齢 | 50代男性 |
| 既往歴 | 特記すべき基礎疾患なし |
| 生活状況 | 普段は健康、運動習慣あり |
| 主訴 | 左片麻痺、しびれ、運動失調 |
■ 来院時の状態
- MRIで 視床梗塞(虚血性脳卒中) を確認
- 来院時血圧:254 / 150 mmHg(極度の高血圧)
- 二次性高血圧の精査(内分泌・腎性など)はすべて陰性
■ 入院後の経過
- 降圧薬開始により収縮期血圧は一時 170mmHgまで低下
- 退院後、5剤併用でも血圧が再上昇
- コントロール不良が続く
原因として判明した「エナジードリンクの大量摂取」
再度詳細な問診を行った結果、以下が判明しました。
▶ エナジードリンク摂取量
- 1日8本
- 1本あたりカフェイン160mg
- 総摂取量:約1,280mg/日
※ 一般的に推奨される安全上限
👉 400mg/日(欧州食品安全機関・米国FDA)
介入後の経過
| 介入 | 結果 |
|---|---|
| エナジードリンク中止 | 血圧が速やかに低下 |
| 降圧薬 | 段階的に減量 → 最終的に中止 |
| 再発 | なし |
👉 カフェイン摂取の中止のみで血圧が正常化
この症例から考えられる病態メカニズム
論文では、以下の作用が関与した可能性が示唆されています。
① 交感神経刺激作用
- カフェイン → ノルアドレナリン増加
- 心拍数・血圧上昇
② 血管収縮作用
- 末梢血管抵抗↑
- 脳血流調節の破綻
③ 血圧日内変動の増大
- 夜間高血圧
- 早朝高血圧 → 脳卒中リスク増加
④ 不整脈誘発の可能性
- 高カフェイン摂取は心房細動との関連も報告あり
本症例から得られる臨床的示唆
✅ 医療者側の視点
- 高血圧・脳卒中患者では
👉 「エナジードリンク摂取歴」を必ず確認 - 薬剤調整前に「生活因子」の確認が重要
- 若年・健康そうな患者でも例外ではない
✅ 一般向けメッセージ
- エナジードリンクは「飲料」だが
👉 実質的には中枢刺激薬 - 「飲みすぎ」は高血圧・脳卒中のリスクになり得る
試験(症例報告)の限界
本論文*症例報告(Case Report)であり、以下の制限があります。
❗ 限界点
- 単一症例である
- 因果関係を証明するものではない
- 他の交絡因子を完全には否定できない
- 食生活・ストレス・睡眠など
- 用量反応関係は検証できない
- 一般化はできない
- すべての人に同様の影響が出るわけではない
- 長期的リスク評価は不可能
👉 あくまで
「注意喚起として重要な症例」
という位置づけで解釈すべきです。
コメント
◆まとめ
✔ エナジードリンクの大量摂取が
→ 重度高血圧・脳梗塞に関与した可能性が示された症例
✔ 中止により血圧が正常化
✔ 降圧薬が不要になった点は臨床的に重要
✔ ただし因果関係を断定できる研究ではない
👉 高血圧・脳卒中患者では、服薬だけでなく“飲料習慣”の確認が極めて重要
薬以外の情報の収集はなかなか難しいところがありますが、血圧コントロール不良例ではエナジードリンクの摂取頻度等について確認してみるのもよさそうです。
続報に期待。

✅まとめ✅ 血圧コントロール不良例において、エナジードリンクの関与が示された。症例報告であることを踏まえつつ、高血圧患者のコントロール不良の要因としてエナジードリンクを考慮することの重要性が示された。
根拠となった試験の抄録
普段は健康であった50代の男性が、MRIで虚血性視床梗塞と確認され、左側の脱力、しびれ、運動失調を呈した。入院時の血圧は254/150 mmHgだった。二次性高血圧の検査結果はすべて正常だった。入院72時間後、降圧剤の服用を開始したところ収縮期血圧が170 mmHgまで低下した。しかし、退院後、血圧は再び上昇し、降圧剤を5種類に増量したにもかかわらず、高値を維持した。さらに問診を行ったところ、患者は1日平均8缶のエナジードリンクを消費しており、1缶あたり160 mgのカフェインが含まれていることが明らかになった。入院時にはこの習慣について具体的に尋ねられていなかった。摂取を中止したところ、血圧は正常化し、降圧剤を中止することができた。この記事では、この事例から、エナジードリンクの摂取が脳卒中や心血管疾患の危険因子となる可能性があるかどうか、また、臨床現場での的を絞った質問と一般の認識を高めることの重要性について、何を学ぶことができるかを探ります。
キーワード: 不整脈、動脈、高血圧、脳卒中
引用文献
Energy drinks, hypertension and stroke
Martha Coyle et al. PMID: 41365773 DOI: 10.1136/bcr-2025-267441
BMJ Case Rep. 2025 Dec 9;18(12):e267441. doi: 10.1136/bcr-2025-267441.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41365773/

コメント