ポリファーマシーを有する心房細動患者における経口抗凝固薬はNOACの方が良い?(メタ解析; Thromb Haemost. 2023)

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ポリファーマシーを有する心房細動患者

心房細動は加齢に伴う不整脈であり、65~85歳の高齢者が心房細動患者の70%近くを占めています。高齢の心房細動患者は、しばしば合併症の大きな負担とポリファーマシーの使用を伴います。ポリファーマシーとは、 個人が同時に複数の薬剤を使用する状況を指しますが、 薬剤使用の閾値や測定方法に関する国際的なコンセンサスはありません(PMID: 29017448)。

心房細動患者では、血栓性イベントを予防するために経口抗凝固療法が必要です。現在のエビデンスでは、非ビタミンK拮抗経口抗凝固薬(NOAC)は、非弁膜症性心房細動患者にとって、ワルファリンよりも安全で効果的な代替薬であり、薬物-食物相互作用が少なく、作用発現が速いことが示されています(PMID: 19717844PMID: 24251359PMID: 21870978PMID: 21830957)。しかし、ポリファーマシーに遭遇すると、治療上の重大な問題が生じます。このような状況において、ポリファーマシーを有する抗凝固患者は、経口抗凝固薬(OAC)療法に対して予期しない用量反応関係を示すことが多く、ポリファーマシーは出血や血栓塞栓症などの抗凝固関連イベントのリスク因子であることが実証されています(PMID: 30536652PMID: 27306620PMID: 26673560)。

そこで今回は、ポリファーマシーを有する心房細動患者におけるNOACsとビタミンK拮抗薬(VKAs)の有効性と安全性を明らかにするために、質の高い研究による包括的な系統的レビューとメタ解析による研究結果をご紹介します。

本メタ解析では、 (1)ポリファーマシーを有する心房細動患者と有さない心房細動患者における脳卒中、死亡、出血のリスク比較、(2)ポリファーマシーを有する心房細動患者におけるNOACとVKAの有効性と安全性のアウトカム評価、(3)ポリファーマシーを有する心房細動患者と有さない心房細動患者におけるNOACとVKAの効果が評価されました。

ポリファーマシーを有する心房細動患者におけるNOAC vs. VKAのデータを報告したランダム化対照試験または観察研究が対象となりました。検索は2022年11月までのPubMedおよびEmbaseデータベースで行われました。

試験結果から明らかになったことは?

767,544例の心房細動患者を対象とした計12件の研究が対象となりました。

脳卒中または全身性塞栓症
vs. VKA
大出血
vs. VKA
中等度のポリファーマシー
(研究により異なるが4〜9の薬剤使用)
HR 0.77
(95%CI 0.69〜0.86
HR 0.87
(95%CI 0.74〜1.01
重度のポリファーマシー
(研究により異なるが9〜10以上の薬剤使用)
HR 0.76
(95%CI 0.69〜0.82
HR 0.91
(95%CI 0.79〜1.06

主要アウトカムについて、中等度のポリファーマシー(ハザード比[HR] 0.77、95%信頼区間[CI] 0.69〜0.86)および重度のポリファーマシー(HR 0.76、95%CI 0.69〜0.82)のAF患者において、VKAと比較したNOACの使用は脳卒中または全身性塞栓症のリスク低下と有意に関連していましたが、大出血について有意差はありませんでした(中等度のポリファーマシー: HR 0.87、95%CI 0.74〜1.01;重度のポリファーマシー: HR 0.91、95%CI 0.79〜1.06)。

副次的アウトカムでは、虚血性脳卒中、全死亡、消化管出血の発生率にNOAC使用者とVKA使用者の間に差はありませんでしたが、NOAC使用者はVKA使用者に比べてあらゆる出血のリスクが低下していました。頭蓋内出血のリスクは、VKAと比較して、中等度のポリファーマシーを有するNOAC使用者で減少しましたが、重度のポリファーマシーでは減少しませんでした。

コメント

ポリファーマシーは薬剤数が5〜10以上の状態に過ぎませんが、薬物-薬物相互作用などの影響により患者アウトカムに悪影響を及ぼします。高齢者は多併存疾患を有することから、しばしばポリファーマシー状態になりますが、どのような患者アウトカムに影響するのかについては充分に検証されていません。

さて、本メタ解析の結果によれば、ポリファーマシーを有する心房細動患者において、NOACは脳卒中または全身性塞栓症、あらゆる出血においてVKAより優れており、大出血、虚血性脳卒中、全死亡、頭蓋内出血、消化管出血においてはVKAと同等でした。

大規模ランダム化比較試験の結果だけでなく、他の試験の結果も同様の傾向を示していること、各試験の占める割合はバランスが取れていると捉えられることから、結果の信頼性は低くないと考えられます。

心房細動以外にも高齢者に共通する併存疾患は多いことから、他の疾患におけるポリファーマシーの影響についても検証が求められます。

続報に期待。

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✅まとめ✅ ポリファーマシーを有する心房細動患者において、NOACは脳卒中または全身性塞栓症、あらゆる出血においてVKAより優れており、大出血、虚血性脳卒中、全死亡、頭蓋内出血、消化管出血においてはVKAと同等であった。

根拠となった試験の抄録

背景:今回のメタ解析の目的は、ポリファーマシーを有する心房細動(AF)患者において、非ビタミンK拮抗経口抗凝固薬(NOAC)とビタミンK拮抗薬(VKA)の有効性と安全性を評価することである。

方法:ポリファーマシーを有する心房細動患者におけるNOAC対VKAのデータを報告したランダム化対照試験または観察研究を対象とした。検索は2022年11月までのPubMedおよびEmbaseデータベースで行った。

結果:767,544例の心房細動患者を対象とした計12件の研究が対象となった。主要アウトカムについて、中等度のポリファーマシー(ハザード比[HR] 0.77、95%信頼区間[CI] 0.69〜0.86)および重度のポリファーマシー(HR 0.76、95%CI 0.69〜0.82)のAF患者において、VKAと比較したNOACの使用は脳卒中または全身性塞栓症のリスク低下と有意に関連していたが、大出血については有意差はなかった(中等度のポリファーマシー: HR 0.87、95%CI 0.74〜1.01;重度のポリファーマシー: HR 0.91、95%CI 0.79〜1.06)。副次的アウトカムでは、虚血性脳卒中、全死亡、消化管出血の発生率にNOAC使用者とVKA使用者の間に差はなかったが、NOAC使用者はVKA使用者に比べてあらゆる出血のリスクが低下していた。頭蓋内出血のリスクは、VKAと比較して、中等度のポリファーマシーを有するNOAC使用者で減少したが、重度のポリファーマシーでは減少しなかった。

結論:ポリファーマシーを有する心房細動患者において、NOACは脳卒中または全身性塞栓症、あらゆる出血においてVKAより優れており、大出血、虚血性脳卒中、全死亡、頭蓋内出血、消化管出血においてはVKAと同等であった。

引用文献

Effect of Oral Anticoagulants in Atrial Fibrillation Patients with Polypharmacy: A Meta-analysis
Yuxiang Zheng et al. PMID: 37399842 DOI: 10.1055/s-0043-1770724
Thromb Haemost. 2023 Jul 3. doi: 10.1055/s-0043-1770724. Online ahead of print.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37399842/

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