SGLT2阻害薬とGLP-1受容体作動薬、腎保護効果はどちらが優れる?(標的試験模倣研究; JAMA Intern Med. 2026)

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― デンマーク全国データを用いた比較研究から読み解く


はじめに

2型糖尿病(T2DM)患者において、慢性腎臓病(CKD)や急性腎障害(AKI)の発症予防は、心血管イベントと並ぶ重要な治療目標です。
近年、SGLT2阻害薬(SGLT2i)とGLP-1受容体作動薬(GLP-1RA)はいずれも腎保護作用を有すると報告されていますが、

「実際に腎アウトカムにより有効なのはどちらか?」

という問いに、直接答えたランダム化試験はこれまで存在していませんでした。

今回ご紹介する論文は、デンマーク全国レジストリを用いた “ターゲットトライアル・エミュレーション研究” により、SGLT2iとGLP-1RAを直接比較した非常に重要な研究です。


試験結果から明らかになったことは?

◆研究概要

研究デザイン

項目内容
研究タイプ観察研究(ターゲットトライアル・エミュレーション)
データデンマーク全国医療データベース
対象メトホルミン治療中の2型糖尿病患者
期間2014年1月~2020年11月開始、2024年10月まで追跡
比較SGLT2阻害薬 vs GLP-1受容体作動薬
症例数SGLT2i:36,279例 / GLP-1RA:18,782例

◆評価項目

■ 主要評価項目(2つ)

  1. 慢性腎臓病(CKD)
    • eGFR 40%以上低下
    • 重度アルブミン尿
    • 腎不全(透析・腎移植など)
  2. 急性腎障害(AKI)
    • 繰り返し発生を考慮した累積発生数(MCC)

■ 副次評価項目

  • アルブミン尿
  • 全死亡

◆主な結果

① CKD発症リスク(5年間)

5年累積リスクリスク比
SGLT2阻害薬6.7%(95%CI 6.4–7.0)0.81
GLP-1RA8.2%(95%CI 7.8–8.6)参照

SGLT2阻害薬はCKD発症リスクを約19%低下


② 急性腎障害(AKI)

指標SGLT2iGLP-1RA
5年MCC(100人あたり)25.228.7
比率0.88(95%CI 0.83–0.93)参照

AKI発症回数もSGLT2阻害薬で有意に少ない


③ 副次評価項目

項目結果
アルブミン尿GLP-1RAでやや低下
死亡GLP-1RAでわずかに低下
CKD・AKISGLT2iが明確に優位

サブグループ解析のポイント

  • 腎疾患を有さない患者ほど、SGLT2阻害薬の腎保護効果が顕著
  • 心血管疾患の有無にかかわらず、傾向は一貫
  • すでにCKDを有する患者では差はやや縮小

一次予防としてのSGLT2阻害薬の有用性が強く示唆


臨床的な解釈

本研究の結果から:

✔ CKD・AKI予防 → SGLT2阻害薬が優位
✔ 体重減少・死亡抑制 → GLP-1RAがやや有利
✔ 両薬剤は「競合」ではなく「役割が異なる」

という構図が明確になりました。


試験の限界

本研究は非常に質の高い解析ですが、以下の限界があります。

① ランダム化比較試験ではない

  • 観察研究(ターゲットトライアル設計)であり、
  • 未調整の交絡因子が残存する可能性がある

② 薬剤選択バイアス

  • 医師が「腎保護を期待してSGLT2iを選択」している可能性
  • 完全な因果推論は困難

③ 用量・継続状況の詳細不明

  • 実際の服薬アドヒアランスは評価できていない
  • 途中中止・切替の影響が残る可能性

④ 人種差

  • デンマーク人中心
  • 日本人特有の体格・腎機能特性への外挿には注意

コメント

◆まとめ

✔ SGLT2阻害薬は
👉 CKD・AKIの一次予防においてGLP-1RAより優れる

✔ GLP-1RAは
👉 体重減少・死亡抑制に強み

✔ 治療選択は
👉 「腎保護重視か」「代謝・心血管重視か」で使い分ける時代

併用することもあることから、相乗効果が得られるのかなど、更なる検証が求められます。

続報に期待。

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✅まとめ✅ デンマークの観察データを用いた標的試験模倣研究の結果、2型糖尿病患者におけるSGLT2阻害薬(SGLT2i)治療開始は、GLP-1RA治療開始と比較して、5年間のCKDリスクおよび5年間のAKI発症数の低下と関連していることが示された。

根拠となった試験の抄録

試験の重要性: 急性および慢性腎臓病の結果を軽減するためのナトリウム-グルコース共輸送体-2 阻害剤 (SGLT2i) とグルカゴン様ペプチド-1 受容体作動薬 (GLP-1RA) 治療の有効性を直接比較したランダム化臨床試験はありません。

目的: 2 型糖尿病患者の急性および慢性腎臓病の結果に対する SGLT2i と GLP-1RA 治療の有効性を比較検討する。

試験デザイン、設定、および参加者: 本比較効果研究は、デンマークの全国規模の人口ベースデータを用いた標的試験エミュレーションデザインを採用した。参加者は、2014年1月から2020年11月までにSGLT2阻害薬またはGLP-1RAによる治療を開始し、2024年10月まで追跡調査を受けたメトホルミン治療中の2型糖尿病患者であった。

曝露: SGLT2i または GLP-1RA の開始。

主要評価項目および評価基準: 2つの主要評価項目は、慢性腎臓病(CKD;推定糸球体濾過率(eGFR)の40%低下、重度のアルブミン尿、または腎不全)と急性腎障害(AKI)であった。副次評価項目は、CKD、アルブミン尿、および死亡の個々の要素であった。治療意図効果は、Aalen-Johansen推定値で評価したCKDリスクと、平均累積カウント(MCC;複数のAKIイベントが発生する可能性があるため、1人あたりの平均イベント数)を比較し、逆確率重み付けを用いて推定した。サブグループ解析では、既存の心血管疾患または腎疾患による層別化を行った。

結果: 本研究には、SGLT2阻害薬(SGLT2i)を開始した36,279人とGLP-1RAを開始した18,782人が含まれ、年齢中央値(IQR)は63歳(55~71歳)対61歳(52~70歳)で、糖尿病罹病期間、eGFR、尿中アルブミン・クレアチニン比は同等であった。加重5年CKDリスクは、SGLT2阻害薬開始者で6.7%(95%信頼区間6.4%~7.0%)、GLP-1RA開始者で8.2%(95%信頼区間7.8%~8.6%)であった(リスク比:0.81 [95%信頼区間0.76~0.87]、リスク差:-1.5% [95%信頼区間-2.0%~-1.0%])。 100人あたりのAKIの5年MCCは、SGLT2阻害薬開始群では25.2(95%信頼区間:24.4~26.1)、GLP-1RA開始群では28.7(95%信頼区間:27.4~30.0)でした(MCC比:0.88 [95%信頼区間:0.83~0.93]、MCC差:-3.5 [95%信頼区間:-5.0~-2.0])。対照的に、副次的評価項目であるアルブミン尿および死亡率は、GLP-1RA開始群でわずかに減少しました。結果はサブグループ間で一貫しており、SGLT2阻害薬によるCKDおよびAKIの減少は、既存の腎疾患のない患者で最も顕著でした。

結論と関連性: 本比較効果試験では、2型糖尿病患者におけるSGLT2阻害薬(SGLT2i)治療開始は、GLP-1RA治療開始と比較して、5年間のCKDリスクおよび5年間のAKI発症数の低下と関連していることが示されました。これらの知見は、2型糖尿病患者における腎疾患の一次予防におけるSGLT2阻害薬治療の可能性を強調しています。

引用文献

SGLT2 Inhibitors vs GLP-1 Receptor Agonists for Kidney Outcomes in Individuals With Type 2 Diabetes
Simon K Jensen et al.
JAMA Intern Med. 2026 Jan 20. doi: 10.1001/jamainternmed.2025.7409. Online ahead of print.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41557360/

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