アピキサバンはアスピリンより脳出血リスクが低い?(RCTのメタ解析; Stroke. 2025)

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脳梗塞予防におけるリスクベネフィット評価

心原性脳梗塞の予防には抗凝固薬が有効ですが「脳出血が怖いからアスピリンを使っている」というケースは決して珍しくありません。
しかし、出血リスクの薬剤比較は充分に行われていません。

そこで今回は、アピキサバンとアスピリンの「脳出血リスク」を直接比較したメタ解析の結果をご紹介します。


根拠となった研究は?

  • 研究デザイン:ランダム化比較試験(RCT)3件のメタ解析
  • 対象者:虚血性脳卒中予防を目的とした計10,626人の被験者
  • 比較群:アピキサバン vs. アスピリン
  • アウトカム:頭蓋内出血(intracranial hemorrhage)発生率

主な結果は?

比較内容相対リスク(RR)95%信頼区間P値
アピキサバン vs. アスピリン(頭蓋内出血)0.670.43~1.080.10
アピキサバン vs. アスピリン(出血性脳卒中)0.720.39~1.310.28
  • いずれも統計学的に有意ではなかったものの、傾向としてはアピキサバンの方がリスクが低い結果。
  • 感度分析(統計手法の変更、予防目的での解析、アウトカム変更など)でも傾向は一貫。

結論は?

アピキサバンはアスピリンと比較して、頭蓋内出血のリスクが同等かそれ以下の可能性があると示唆されました。
「脳出血が心配だからアスピリンで妥協する」という臨床判断は、再考の余地があるかもしれません。しかし、まだまだ検証が求められるところであり、本メタ解析の結果をもって、アピキサバンを優先的に使用するという結論にはなりません。

再現性の確認を含めて更なる検証が求められます。

続報に期待。


この研究の限界は?

  • 対象となったRCTがわずか3件、イベント発生も74件と少数
  • 相対リスクの信頼区間は1をまたいでおり、明確な優劣は未確定
  • 各試験のデザインや対象患者の違いが、異質性の原因となる可能性があります。

現場での活かし方

  • 高齢者や出血リスクが懸念される患者にも、アピキサバンの選択を検討する根拠として活用可能。
  • エビデンスとしては補助的であり、個別のリスク評価に基づいた薬剤選択が前提です。
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✅まとめ✅ ランダム化比較試験3件のメタ解析の結果、アピキサバンは頭蓋内出血リスクに関してアスピリンと同等、あるいはおそらくはアスピリンよりも優れている安全性プロファイルを示した。

根拠となった試験の抄録

背景: 経口抗凝固薬は抗血小板薬よりも心因性塞栓性脳卒中の予防に優れているが、頭蓋内出血リスクの上昇に対する懸念から使用が制限されている。リバーロキサバンはアスピリンと比較して頭蓋内出血リスクを明らかに上昇させるものの、アピキサバンとアスピリンの頭蓋内出血リスクの比較は依然として不明である。本研究では、ランダム化比較試験のメタアナリシスを通じてこのリスクを明らかにすることを目的とした。

方法: PubMed、EMBASE、Cochrane Central Register of Controlled Trials、ClinicalTrials.gov を用いて、虚血性脳卒中予防におけるアピキサバンとアスピリンを比較したランダム化比較試験を検索した。両群とも頭蓋内出血イベントが報告されていない試験は除外した。
主要解析では、マンテル・ヘンツェル法を用いて、アピキサバンとアスピリン療法における頭蓋内出血の相対リスクをメタ解析した。これらの知見の強度を検証し、副次的アウトカムである出血性脳卒中(硬膜外血腫および硬膜下血腫は除外)を検証するために感度分析を実施した。

結果: 本試験の組み入れ基準を満たしたランダム化比較試験は3件で、計10,626名の患者と74件の頭蓋内出血イベントが含まれた。統合解析において、アピキサバンとアスピリン療法を比較した場合の頭蓋内出血の相対リスクは0.67([95%CI 0.43-1.08]; P=0.10)であった。これらの結果は、代替統計推定値を用いた感度分析、一次予防試験に限定した解析、および出血性脳卒中のアウトカムを用いた解析において一貫していた(相対リスク 0.72 [95%CI 0.39-1.31]; P=0.28)。

結論: 虚血性脳卒中予防を評価するランダム化比較試験において、アピキサバンは頭蓋内出血リスクに関してアスピリンと同等、あるいはおそらくはアスピリンよりも優れている安全性プロファイルを示した。これらの知見は、頭蓋内出血リスクへの懸念から、アピキサバンよりもアスピリンを優先する臨床実践を再考する根拠となる。

キーワード: アピキサバン、アスピリン、頭蓋内出血、虚血性脳卒中、ランダム化比較試験

引用文献

Risk of Intracranial Hemorrhage With Apixaban Versus Aspirin Therapy: A Meta-Analysis of Randomized Controlled Trials
Iyas Daghlas et al. PMID: 40464082 DOI: 10.1161/STROKEAHA.125.051088
Stroke. 2025 Jun 4. doi: 10.1161/STROKEAHA.125.051088. Online ahead of print.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40464082/

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