カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)受容体拮抗薬アトゲパントの効果は?
3件の第3相臨床試験において、12週間の治療期間にわたるエピソード性片頭痛(EM)および慢性片頭痛(CM)に対するアトゲパントの有効性と安全性が示されました。しかし、これらの統合解析結果は報告されていません。
そこで今回は、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)受容体拮抗薬であるアトゲパントを片頭痛の予防的治療薬として経口投与した最初の4週間における有効性と機能的転帰の改善を評価するために実施された併合解析の結果をご紹介します。
ADVANCE、ELEVATE、PROGRESSは第3相多施設共同ランダム化二重盲検プラセボ対照12週間試験でした。ADVANCE試験およびELEVATE試験は、18~80歳のEM歴1年以上かつ月4~14回の片頭痛日数を有する患者が対象でした(ELEVATEは2~4クラスの経口予防薬による治療失敗歴を要し、PROGRESSは18~80歳でCM歴1年以上、月間頭痛日数15日以上、MMDs8回以上の参加者が対象でした)。
本解析では、アトゲパント60mg1日1回投与群およびプラセボ群について報告されました。
アウトカムには、有効性エンドポイント(1日目の片頭痛日数、1~4週目の週間片頭痛日数[WMDs]のベースラインからの変化、最初の4週目のMMDs)と、1~4週目のActivity Impairment in Migraine-Diary(AIM-D)、1~2週目と4週目のEuropean Quality-of-Life 5-Dimension 5-Level(EQ-5D-5L)による機能的エンドポイントが含まれました。
試験結果から明らかになったことは?
修正intent-to-treat集団には、ADVANCE試験(アトゲパント n=222、プラセボ n=214)、ELEVATE試験(アトゲパント n=151、プラセボ n=154)、PROGRESS試験(アトゲパント n=256、プラセボ n=246)が含まれました。
オッズ比 OR (95%CI) vs. プラセボ | |
ADVANCE試験 | OR 0.39(0.23~0.67) p=0.0006 |
ELEVATE試験 | OR 0.53(0.29~0.94) p=0.031 |
PROGRESS試験 | OR 0.63(0.43~0.93) p=0.021 |
アトゲパント投与群では、1日目に片頭痛を発症した参加者の割合がより減少しました。プラセボと比較したオッズ比は、ADVANCEで0.39(95%CI 0.23~0.67、p=0.0006)、ELEVATEで0.53(95%CI 0.29~0.94、p=0.031)、PROGRESSで0.63(95%CI 0.43~0.93、p=0.021)でした。
アトゲパント投与により、プラセボと比較して、1~4週目のWMDおよび最初の4週目のMMDが減少し、1~4週目のすべての評価時点においてAIM-DおよびEQ-5D-5Lが改善しました。
コメント
2025年1月現在、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)受容体拮抗薬は注射薬のみが承認されています。患者負担を踏まえると、より侵襲性の低い経口薬の開発が求められています。アトゲパント(atogepant)は経口投与可能なCGRP受容体拮抗薬であり、開発が進められています。
さて、アトゲパント60mgの1日1回投与は、エピソード性片頭痛(EM)2件と慢性片頭痛(CM)1件の計3件の予防試験において、投与開始後4週間の有効性と機能指標においてプラセボに対する優位性を示しました。
片頭痛の重症患者では、トリプタン系薬剤や他の鎮痛薬の効果が得られない場合も多く、QOLが著しく低下していることが報告されています。このアンメットニーズに対して、CGRP受容体拮抗薬が有望視されています。バルプロ酸やプロプラノロール、ロメリジンなどの予防薬で改善がみられない症例においては、CGRP受容体拮抗薬の使用が考慮されます。
開発が進み、より患者負担の少ないアトゲパントが承認されると、救われる患者が増えるかもしれません。ただし、治療コストは増えるため注意を要します。どのような患者で優先して使用した方が良いのか、保険対象や経済状況も含めた総合的な判断が求められます。
続報に期待。
✅まとめ✅ アトゲパント60mgの1日1回投与は、エピソード性片頭痛(EM)2件と慢性片頭痛(CM)1件の計3件の予防試験において、投与開始後4週間の有効性と機能指標においてプラセボに対する優位性を示した。
根拠となった試験の抄録
背景と目的:3件の第3相臨床試験において、12週間の治療期間にわたるエピソード性片頭痛(EM)および慢性片頭痛(CM)に対するアトゲパントの有効性と安全性が示された。本解析では、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)受容体拮抗薬であるアトゲパントを片頭痛の予防的治療薬として経口投与した最初の4週間における有効性と機能的転帰の改善を評価する。
方法 :ADVANCE、ELEVATE、PROGRESSは第3相多施設共同ランダム化二重盲検プラセボ対照12週間試験であった。ADVANCE試験およびELEVATE試験は、18~80歳のEM歴1年以上かつ月4~14回の片頭痛日数を有する患者を対象とした。ELEVATEは、2~4クラスの経口予防薬による治療失敗歴が必要であった。PROGRESSは、18~80歳でCM歴1年以上、月間頭痛日数15日以上、MMDs8回以上の参加者を対象とした。本解析では、アトゲパント60mg1日1回投与(QD)群およびプラセボ群について報告する。
アウトカムには、有効性エンドポイント(1日目の片頭痛日数、1~4週目の週間片頭痛日数[WMDs]のベースラインからの変化、最初の4週目のMMDs)と、1~4週目のActivity Impairment in Migraine-Diary(AIM-D)、1~2週目と4週目のEuropean Quality-of-Life 5-Dimension 5-Level(EQ-5D-5L)による機能的エンドポイントが含まれた。
結果:修正intent-to-treat集団には、ADVANCE試験(アトゲパント n=222、プラセボ n=214)、ELEVATE試験(アトゲパント n=151、プラセボ n=154)、PROGRESS試験(アトゲパント n=256、プラセボ n=246)が含まれた。アトゲパント投与群では、1日目に片頭痛を発症した参加者の割合がより減少した。プラセボと比較したオッズ比は、ADVANCEで0.39(95%CI 0.23~0.67、p=0.0006)、ELEVATEで0.53(95%CI 0.29~0.94、p=0.031)、PROGRESSで0.63(95%CI 0.43~0.93、p=0.021)であった。アトゲパント投与により、プラセボと比較して、1~4週目のWMDおよび最初の4週目のMMDが減少し、1~4週目のすべての評価時点においてAIM-DおよびEQ-5D-5Lが改善した。
考察:アトゲパント60mgQDは、EM2件とCM1件の計3件の予防試験において、投与開始後4週間の有効性と機能指標においてプラセボに対する優位性を示した。
試験登録:ClinicalTrials.gov NCT03777059; NCT04740827; NCT03855137.
申請:2018/12/13;2021/02/02;2019/02/25.
最初の患者登録:12/14/2018; 03/05/2021; 03/11/2019 clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT03777059. clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT04740827 clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT03855137.
エビデンスの分類:この試験は、EM患者およびCM患者において、アトゲパント60mgQDが投与開始から4週間以内に片頭痛の頻度を減少させ、機能的転帰を改善するというクラスⅡの証拠を提供する。
引用文献
Early Improvements With Atogepant for the Preventive Treatment of Migraine: Results From 3 Randomized Phase 3 Trials
Richard B Lipton et al. PMID: 39715475 PMCID: PMC11668519 (available on 2026-01-28) DOI: 10.1212/WNL.0000000000210212
Neurology. 2025 Jan 28;104(2):e210212. doi: 10.1212/WNL.0000000000210212. Epub 2024 Dec 23.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39715475/
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