中等度慢性腎臓病の心血管転帰に対する低用量スピロノラクトンの効果は?(RCT; BARACK-D試験; Nat Med. 2024)

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ステージ3bのCKD患者におけるスピロノラクトン25mg投与の効果は?

慢性腎臓病(CKD)は、末期腎臓病への進行と血管イベントのかなりのリスクと関連していることが報告されています。

非ステロイド性ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)であるフィネレノンは、CKDと糖尿病の患者に対して心腎保護作用を示しますが、ステロイド性MRAであるスピロノラクトンが同様の保護作用を示すかどうかは不明です。

そこで今回は、高齢の地域住民コホート(平均年齢 74.8歳、s.d. 8.1)において、ステージ3bのCKDにおける心血管系の転帰を減少させるために、通常ケアにスピロノラクトン25mgを追加した場合と通常のケア単独の場合の有効性を評価した非盲検ランダム化エンドポイント盲検試験(PROBE法)の結果をご紹介します。

英国のプライマリケアから成人1,434人をリクルートし、そのうち1,372人(96%)を一次解析に組み入れました。

本試験の主要アウトカムは、ランダム化から死亡、心疾患、脳卒中、心不全、一過性脳虚血発作、末梢動脈疾患による入院、またはベースライン時には存在しなかったとされる疾患が最初に発症するまでの期間でした。

試験結果から明らかになったことは?

通常ケア+スピロノラクトン25mg群通常ケア群ハザード比
(95%信頼区間)
主要エンドポイント677人中113人
(16.7%)
695人中111人
(16.0%)
ハザード比 1.05
0.81~1.37

3年間の追跡期間を通じて、主要エンドポイントはスピロノラクトンにランダムに割り付けられた677人中113人(16.7%)、通常ケアにランダムに割り付けられた695人中111人(16.0%)で発生しましたが、群間に有意差はありませんでした(ハザード比 1.05、95%信頼区間 0.81~1.37)。

スピロノラクトンにランダムに割り付けられた参加者の3分の2が6ヵ月以内に治療を中止しましたが、その主な理由は事前に規定された安全性中止基準を満たしたためでした。スピロノラクトンを中止した最も一般的な理由は、事前に規定された中止基準を満たす推定糸球体濾過量の減少(n=239、35.4%)であり、次いで治療副作用(n=128、18.9%)および高カリウム血症(n=54、8.0%)による中止でした。

コメント

ステロイド性MRAであるスピロノラクトンが、CKD患者において、心血管イベントの発生リスクを低減できるのかについては、充分に検証されていません。

さて、非盲検ランダム化比較試験の結果、ステージ3bのCKD患者において、スピロノラクトンが心血管転帰を低下させるというエビデンスは示されず、安全性の懸念から中止されることが多いことが明らかとなりました。

患者背景によらず、低用量スピロノラクトンを設定している理由は明記されていませんが、リスクベネフィットを踏まえたものと考えられます。

予定していた患者数は3,000例以上でしたが、組み入れが進まなかったため検出力が低かったものと考えられます。また、非盲検であったことから、eGFRやカリウム値の少しの変動により、予防的に早期中止された患者がいたものと考えられます。

現時点においては、標準ケアを受けるステージ3bのCKD患者において、低用量スピロノラクトンを追加する意義はないようです。追加する場合は、フィネレノンを優先した方が合理的です。とはいえ、前述の試験の限界を踏まえると、更なる検証が求められます。

続報に期待。

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✅まとめ✅ 非盲検ランダム化比較試験の結果、ステージ3bのCKD患者において、スピロノラクトンが心血管転帰を低下させるというエビデンスは示されず、安全性の懸念から中止されることが多いことがわかった。

根拠となった試験の抄録

背景:慢性腎臓病(CKD)は、末期腎臓病への進行と血管イベントのかなりのリスクと関連している。非ステロイド性ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)であるフィネレノンは、CKDと糖尿病の患者に対して心腎保護作用を示すが、ステロイド性MRAであるスピロノラクトンが同様の保護作用を示すかどうかは不明である。この前向き非盲検ランダム化エンドポイント盲検試験(PROBEでは、高齢の地域住民コホート(平均年齢 74.8歳、s.d. 8.1)において、ステージ3bのCKDにおける心血管系の転帰を減少させるために、通常のケアにスピロノラクトン25mgを追加した場合と通常のケア単独の場合の有効性を評価した。

方法:英国のプライマリケアから成人1,434人をリクルートし、そのうち1,372人(96%)を一次解析に組み入れた。主要アウトカムは、ランダム化から死亡、心疾患、脳卒中、心不全、一過性脳虚血発作、末梢動脈疾患による入院、またはベースライン時には存在しなかったとされる疾患が最初に発症するまでの期間とした。

結果:3年間の追跡期間を通じて、主要エンドポイントはスピロノラクトンにランダムに割り付けられた677人中113人(16.7%)、通常ケアにランダムに割り付けられた695人中111人(16.0%)で発生したが、群間に有意差はなかった(ハザード比 1.05、95%信頼区間 0.81~1.37)。スピロノラクトンにランダムに割り付けられた参加者の3分の2が6ヵ月以内に治療を中止したが、その主な理由は事前に規定された安全性中止基準を満たしたためであった。スピロノラクトンを中止した最も一般的な理由は、事前に規定された中止基準を満たす推定糸球体濾過量の減少(n=239、35.4%)であり、次いで治療副作用(n=128、18.9%)および高カリウム血症(n=54、8.0%)による中止であった。

結論:ステージ3bのCKD患者において、スピロノラクトンが心血管転帰を低下させるというエビデンスはないものの、安全性の懸念から中止されることが多いことがわかった。スピロノラクトンはステージ3bのCKD患者には、他に明確な治療適応がない限り使用すべきではない。

試験登録番号:ClinicalTrials.gov登録. ISRCTN44522369

引用文献

Low-dose spironolactone and cardiovascular outcomes in moderate stage chronic kidney disease: a randomized controlled trial
F D Richard Hobbs et al. PMID: 39349629 DOI: 10.1038/s41591-024-03263-5
Nat Med. 2024 Sep 30. doi: 10.1038/s41591-024-03263-5. Online ahead of print.
— 読み進める https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39349629/

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