健康診断の効果はどのくらいなのか？
高リスク集団における健康診断後の患者転帰については充分に検証されていません。
そこで今回は、健診後の病院への受診時期と心血管イベントによる入院および全死亡リスクとの関連を検討することを目的に実施したデータベース研究の結果をご紹介します。
本研究では、全国健康保険協会（協会けんぽ）の健康保険請求データベースに登録された高リスク者412,059例を、健診後12ヵ月間の受診時期によって4群に分類しました（早期：3ヵ月未満、中間：4～6ヵ月、後期：7～12ヵ月、受診なし）。
Cox比例ハザード回帰モデルを用いて、健診後の受診時期と脳卒中、冠動脈性心疾患、心不全による入院リスク、全死亡リスクとの関連が検討されました。
試験結果から明らかになったことは？
追跡期間中央値4.3年の間に、脳卒中、冠動脈性心疾患、心不全による初回入院、または全死因死亡という複合アウトカムを有する症例が合計15,860例同定されました。
| 健診後から受診までの期間 | 複合アウトカムの完全調整ハザード比 HR（95％信頼区間） vs. 健診後に受診しない |
| 早期：3ヵ月未満 | HR 0.78（0.74〜0.81） |
| 中間：4～6ヵ月 | HR 0.84（0.78〜0.89） |
| 後期：7～12ヵ月 | HR 0.94（0.89〜1.00） |
健診後に受診しなかった高リスク成人と比較して、複合転帰の完全調整ハザード比（95％信頼区間）は、早期、中間、後期の受診でそれぞれ0.78（0.74〜0.81）、0.84（0.78〜0.89）、0.94（0.89〜1.00）でした。
受診しなかった場合と比較すると、早期受診はすべてのエンドポイントのリスク低下と関連しており、脳卒中と心不全による入院ではリスク低下はより大きいようでした。
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健康診断の効果については充分に検証されていません。また、受診者を層別化していないことによるバイアスの影響を排除しきれていないと考えられます。そこで今回は、高リスク集団における患者転帰について検証した日本のデータベース研究を取り上げました。
協会けんぽのデータを用いた研究の結果、健康診断後の早期受診が、高リスク者における主要な心血管イベントによる入院および全死亡のリスク低下と関連するというエビデンスが示されました。脳卒中による入院リスク、冠動脈性心疾患による入院リスク、心不全による入院リスク、全死亡リスクのうち、特に脳卒中による入院リスク、心不全による入院リスクの低下が大きく影響しているとのことです。
追跡期間が約4年であることから致し方ない側面はありますが、全死亡リスク以外は、代用のアウトカムであることから、更なる検証が求められます。
早期受診を促す前に、高リスク集団をどのように抽出するのかが課題であると考えます。より健康診断を受けてもらえるような取り組みが求められます。
続報に期待。
✅まとめ✅ データベース研究の結果、健康診断後の早期受診が、高リスク者における主要な心血管イベントによる入院および全死亡のリスク低下と関連するというエビデンスが示された。
根拠となった試験の抄録
背景と目的：高リスク集団における健診後の受診時期と心血管イベントによる入院および全死亡リスクとの関連を検討することを目的とした。
方法：全国健康保険協会の健康保険請求データベースに登録された高リスク者412,059例を、健診後12ヵ月間の受診時期によって4群に分類した（早期：3ヵ月未満、中間：4～6ヵ月、後期：7～12ヵ月、受診なし）。Cox比例ハザード回帰モデルを用いて、健診後の受診時期と脳卒中、冠動脈性心疾患、心不全による入院リスク、全死亡リスクとの関連を検討した。
結果：追跡期間中央値4.3年の間に、脳卒中、冠動脈性心疾患、心不全による初回入院、または全死因死亡という複合アウトカムを有する症例が合計15,860例同定された。健診後に受診しなかった高リスク成人と比較して、複合転帰の完全調整ハザード比（95％信頼区間）は、早期、中間、後期の受診でそれぞれ0.78（0.74〜0.81）、0.84（0.78〜0.89）、0.94（0.89〜1.00）であった。受診しなかった場合と比較すると、早期受診はすべてのエンドポイントのリスク低下と関連しており、脳卒中と心不全による入院ではリスク低下はより大きいようであった。
結論：実世界のデータを用いた本研究は、健康診断後の早期受診が、高リスク者における主要な心血管イベントによる入院および全死亡のリスク低下と関連するというエビデンスを提供した。
キーワード：心血管疾患、診療所受診、コホート研究、健康診断、健康保険請求データ、予防医療、リアルワールドエビデンス
引用文献
Timing of clinic visits after health checks and risk of hospitalization for cardiovascular events and all-cause death among the high-risk population
Jia-Yi Dong et al. PMID: 38109818 DOI: 10.1016/j.atherosclerosis.2023.117409
Atherosclerosis. 2024 Jan:388:117409. doi: 10.1016/j.atherosclerosis.2023.117409. Epub 2023 Dec 3.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38109818/
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