ワクチン接種をためらう理由とは?
COVID-19パンデミックの緊急フェーズは収束し、Withコロナ時代と呼ばれる複雑で致命的となりうる呼吸器ウイルスのシーズンが続くという遺産が残されました。ウイルス情勢が変化する中、毎年接種されるワクチンを同様に認識しているのか、あるいは共同接種やコミュニケーションに影響を与えるような違いがあるのかなど、関連するワクチンに対する市民の見解を理解することが新たに急務となっています。
そこで今回は、米国のプログラムおよび政策決定の指針とするため、COVID-19およびインフルエンザワクチンに対する意識を調査した研究結果をご紹介します。
調査データは、2023年7月7日から16日にかけて、米国の18歳以上の成人を対象に、全国を代表する確率ベースのサンプルで実施されたものです。この調査は、ハーバード大学T.H.チャン公衆衛生大学院(HSPH)の研究者が、Association of State and Territorial Health OfficialsおよびNational Public Health Information Coalitionのスタッフの意見を取り入れながら設計したもので、HSPHの機関審査委員会により免除と決定された。参加者は調査を通じて同意を得た。米国世論調査協会(AAPOR)の報告ガイドラインに従いました。
回答者は、COVID-19およびインフルエンザワクチンの有効性と安全性に対する考え方、ワクチン接種の意向、接種をためらう主な理由を報告した。成人全体と、重症化リスクが高いと考えられる50歳以上の成人のデータを調査した。データは米国国勢調査のパラメータで加重平均し、全国を代表する推定値を作成した。差はStata統計ソフトバージョン15.0(StataCorp)で両側t検定を用いて検討した。統計的有意性はP<0.05とした。
試験結果から明らかになったことは?
3,232例の招待参加者のうち、1,430例(44%)がアンケートに回答しました。
(有効性に関するアンケート結果) | COVID-19ワクチン | インフルエンザワクチン |
重篤な病気や入院を防ぐのに非常に有効であると回答した割合 | 42% | 40% |
COVID-19ワクチン(42%)とインフルエンザワクチン(40%)は、重篤な病気や入院を防ぐのに非常に有効であるとほぼ同じ割合で回答されました(パーセンテージはすべて加重平均)。
COVID-19ワクチン | インフルエンザワクチン | |
非常に安全であると回答した割合 | 55% | 41% |
接種する可能性が非常に高いと回答した割合 | 49% | 36% |
ワクチンの安全性については見解が分かれ、COVID-19ワクチンに比べてインフルエンザワクチンは非常に安全であると答えた割合が高いことが示された(55% vs. 41%)。同様に、接種意向も異なっていた:49%が今シーズンインフルエンザワクチンを接種する可能性が非常に高いと回答したのに対し、COVID-19ワクチンの更新接種についても同様の回答が36%であった。このパターンは50歳以上の成人でも同様でした。
ワクチン接種をためらう成人(接種する可能性があまり高くない成人)では、COVID-19とインフルエンザワクチンの更新に対する懸念は異なっていました。テーマ別では、COVID-19ワクチン接種をためらう成人は、インフルエンザワクチン接種をためらう成人と比較して、ためらう主な理由として「もっと研究してほしい」、「ワクチンの安全性と有効性についての心配」、「過去のワクチン接種や感染によってすでに十分な予防を受けていると考えている」を挙げる割合が高いことが示されました。
さらに、COVID-19とインフルエンザワクチンを推進している政府機関や製薬会社は同じであるにもかかわらず、COVID-19ワクチン接種をためらう成人は、これらの機関や会社に対する不信感を挙げる割合が高いことが示されまし。結果は50歳以上の成人でも同様でした。
ためらいの程度(ややありそう、あまりなさそう、まったくなさそう)によるサブ解析によると、ためらいの理由には多くの違いがあり、各程度のためらいでCOVID-19ワクチンに懸念を持つ割合が高いことが示されました(data not shown)。
コメント
感染症予防戦略の一つとしてワクチン接種が挙げられますが、接種をためらう理由から集団免疫の獲得が困難となっています。上記の理由については充分に調査されていません。
さて、米国の調査結果によれば、インフルエンザワクチンと比較して、COVID-19ワクチン接種をためらう理由として、「もっと研究してほしい」、「ワクチンの安全性と有効性についての心配」、「過去のワクチン接種や感染によってすでに十分な予防を受けていると考えている」を挙げる割合が多いことが示されました。またワクチン接種を推進している政府機関や製薬会社に対する不信感を理由として挙げる割合も多いことが明らかとなりました。
各ウイルスに対してワクチンを選択する必要があることから、定期的なワクチン接種が求められます。陰謀論を持ち出すケースもありますが、これは「知らないこと≒怖いこと」として本能的に忌避行動を示しているものと考えられます。対応策としては、知る機会を作ること、より平易な言葉でアナウンスしていくこと等が挙げられます。
アンケート調査は時代や個人の環境の変化により結果が異なります。経時的な調査が求められます。
続報に期待。
✅まとめ✅ インフルエンザワクチンと比較して、COVID-19ワクチン接種をためらう理由として、「もっと研究してほしい」、「ワクチンの安全性と有効性についての心配」、「過去のワクチン接種や感染によってすでに十分な予防を受けていると考えている」を挙げる割合が多かった。またワクチン接種を推進している政府機関や製薬会社に対する不信感を理由として挙げる割合も多かった。
根拠となった試験の抄録
はじめに:COVID-19パンデミックの緊急フェーズは終わったが、今後より複雑で致命的となりうる呼吸器ウイルスのシーズンが続くという遺産が残された。ウイルス情勢が変化する中、毎年接種されるワクチンを同様に認識しているのか、あるいは共同接種やコミュニケーションに影響を与えるような違いがあるのかなど、関連するワクチンに対する米国成人の見解を理解することが新たに急務となっている。プログラムおよび政策決定の指針とするため、COVID-19およびインフルエンザワクチンに対する意識を調査した。
調査方法:データは、2023年7月7日から16日にかけて、米国の18歳以上の成人を対象に、全国を代表する確率ベースのサンプルで実施された調査によるものである。この調査は、ハーバード大学T.H.チャン公衆衛生大学院(HSPH)の研究者が、Association of State and Territorial Health OfficialsおよびNational Public Health Information Coalitionのスタッフの意見を取り入れながら設計したもので、HSPHの機関審査委員会により免除と決定された。参加者は調査を通じて同意を得た。米国世論調査協会(AAPOR)の報告ガイドラインに従った。
回答者は、COVID-19およびインフルエンザワクチンの有効性と安全性に対する考え方、ワクチン接種の意向、接種をためらう主な理由を報告した。成人全体と、重症化リスクが高いと考えられる50歳以上の成人のデータを調査した。データは米国国勢調査のパラメータで加重平均し、全国を代表する推定値を作成した。差はStata統計ソフトバージョン15.0(StataCorp)で両側t検定を用いて検討した。統計的有意性はP<0.05とした。
結果:3,232例の招待参加者のうち、1,430例(44%)がアンケートに回答した。COVID-19ワクチン(42%)とインフルエンザワクチン(40%)は、重篤な病気や入院を防ぐのに非常に有効であるとほぼ同じ割合で回答した(パーセンテージはすべて加重平均)。ワクチンの安全性については見解が分かれ、COVID-19ワクチンに比べてインフルエンザワクチンは非常に安全であると答えた割合が高かった(55% vs. 41%)。同様に、接種意向も異なっていた:49%が今シーズンインフルエンザワクチンを接種する可能性が非常に高いと回答したのに対し、COVID-19ワクチンの更新接種についても同様の回答が36%であった。このパターンは50歳以上の成人でも同様であった。
ワクチン接種をためらう成人(接種する可能性があまり高くない成人)では、COVID-19とインフルエンザワクチンの更新に対する懸念は異なっていた。テーマ別では、COVID-19ワクチン接種をためらう成人は、インフルエンザワクチン接種をためらう成人と比較して、ためらう主な理由として「もっと研究してほしい」「ワクチンの安全性と有効性についての心配」「過去のワクチン接種や感染によってすでに十分な予防を受けていると考えている」を挙げる割合が高かった。さらに、COVID-19とインフルエンザワクチンを推進している政府機関や製薬会社は同じであるにもかかわらず、COVID-19ワクチン接種をためらう成人は、これらの機関や会社に対する不信感を挙げる割合が高かった。結果は50歳以上の成人でも同様であった。ためらいの程度(ややありそう、あまりなさそう、まったくなさそう)によるサブ解析によると、ためらいの理由には多くの違いがあり、各程度のためらいでCOVID-19ワクチンに懸念を持つ割合が高いことが示された(data not shown)。
考察:COVID-19パンデミックは、過去一世代で最大規模の感染症流行であり、わずか3年間で100万人以上の米国住民が死亡した。歴史的な基準からすると、ワクチンは記録的な速さで開発され、高い安全性と高い有効性を持ち、長年にわたるインフルエンザワクチンの有効性を上回った。しかし、重症化リスクの最も高い高齢者を含む米国の成人は、COVID-19ワクチンに対して、インフルエンザワクチンよりも躊躇しており、この調査研究で示されたように、懸念事項が異なっている。したがって、医療従事者は、COVID-19ワクチンに対する需要は限定的であり、インフルエンザワクチンに対する関心は中程度であると予想すべきである。COVID-19ワクチンとインフルエンザワクチンの同時接種が実施される場合、より人気のあるインフルエンザワクチンから情報を発信し、両ワクチンの安全性と有効性に関する一貫したメッセージを提供し、COVID-19の先行感染による予防の限界など、ワクチン特有の信念に対処すべきである。また、公衆衛生機関は、信頼できるメッセンジャーと協力し、信頼関係を築くべきである。
この研究の限界には、横断的な自己報告データの使用と、非回答バイアスの可能性が含まれる。米国におけるワクチン接種のためらいは一枚岩ではなく、今シーズン以降のワクチン接種を促進するためには、医療専門家とコミュニケーターが世論のニュアンスの違いに対処することが不可欠である。
引用文献
Divergent Attitudes Toward COVID-19 Vaccine vs Influenza Vaccine
Gillian K SteelFisher et al. PMID: 38127351 PMCID: PMC10739094 DOI: 10.1001/jamanetworkopen.2023.49881
JAMA Netw Open. 2023 Dec 1;6(12):e2349881. doi: 10.1001/jamanetworkopen.2023.49881.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38127351/
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