【新薬2017年】バロキサビル(ゾフルーザ®)の効果はどのくらい?

09_感染症
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Cap-dependent Endonuclease Inhibitor S-033188 for the Treatment of Influenza: Results from a Phase 3, Randomized, Double-Blind, Placebo- and Active-Controlled Study in Otherwise Healthy Adolescents and Adults with Seasonal Influenza

1回飲むだけのインフル新薬、5月発売へ

2月2日の朝日新聞DIGITALで新薬について採り上げられていました。早速、効果を検証してみようと臨床試験の結果を検索したところ以下の文献が見つかりました。

 

残念ながら Abstractのみですが、ご紹介します。

Disclosures 開示

著者は全員、塩野義製薬株式会社の社員


図1. インフルエンザウイルスの増殖過程と薬剤の作用点(塩野義製薬株式会社の資料より筆者作成)

論文の抄録


背景

キャップ依存性エンドヌクレアーゼ(CEN)は、インフルエンザウイルスポリメラーゼのPAサブユニットに存在し、ウイルスmRNA生合成中の「キャップスナッチ」プロセスを媒介する。 つまりウイルス増殖における重要なプロセスである。S-033188(バロキサビル、ゾフルーザ®️)は、CENの強力かつ選択的な小分子阻害剤である。本稿ではグローバル第3相試験CAPSTONE-1の臨床的およびウイルス学的結果を報告する。

方法

多施設、ランダム化、二重盲検、プラセボ対照試験およびアクティブコントロール試験を実施した。主要な適格基準には次の通り。  

・12-64歳 ・発熱(腋窩温度≧38.0℃) ・一般症状が1以上 ・呼吸器症状が1以上(中等度から重度) ・発症から48時間以内

  20〜64歳の患者を 2:2:1の比率でランダム割付し、バロキサビル、プラセボ、またはオセルタミビルを5日間単回経口投与した(オセルタミビルは 75mgを 1日2回)。 12〜19歳の患者を 2:1の比率でランダム割付し、バロキサビルまたはプラセボの単回経口投与を受けた。 主要有効性エンドポイントは、インフルエンザ感染集団(intent to treat)におけるインフルエンザ症状の緩和時間(the Time To Alleviation of influenza Symptoms:TTAS)であった。ウイルス力価および RNA含量は、投与前および投与後の鼻/咽頭の拭い取り試料から判定した。

結果

1436人の患者がランダム化された。 TTASはバロキサビル群でプラセボ群よりも有意に短かった。 TTAS中央値  バロキサビル群:53.7時間  プラセボ群  :80.2時間(P <0.0001) ウイルス脱核中止の平均時間  バロキサビル群 :24時間  オセルタミビル群:72時間(P <0.0001)  プラセボ群   :96時間(P <0.0001)   バロキサビル群では、3日目(オセルタミビルと比較して)または5日目(プラセボと比較して)までの全ての時点で、オセルタミビル群またはプラセボ群よりもウイルス力価および RNA含量のベースラインから有意に大きな減少を示した。 バロキサビル群は、一般的に良好な耐容性を示し、治療に伴う有害事象の発生率がオセルタミビルよりも低かった。

結論

バロキサビルは、インフルエンザ症状を緩和する上でプラセボより優れており、さらにウイルス学的アウトカムにおいてオセルタミビルおよびプラセボより優れていた。 バロキサビルの安全性プロファイルはオセルタミビルと比較して良好であった。

コメント

アブストラクトのみ。一般症状と呼吸器症状の詳細が知りたい。早く全文読みたいところ。 バロキサビルは、プラセボに比べインフルエンザ症状を 26.5時間短くするにとどまった(オセルタミビルとの比較はどうだったのだろう?)。ウイルス脱核を中止する時間は、バロキサビルを使用することで、オセルタミビルに対し 48時間、プラセボに比べ 72時間短くなった。個人的には、症状緩和とウイルス脱核中止時間がパラレルでないところが面白いと感じました。 学校や仕事を休めれば良いが、そうもいかない時もあると思う、また試験や受験等、どうしても早く治したい時もあると思う。つまり患者背景により “例え 1日だとしても” 症状を早々に緩和したい時もあると思う。ただアウトブレイクの一因(一員)となることも忘れないで欲しい。 1日1回服用で終わりなのは良いね。zohuru-za      

追記(2021年5月)

いくつかの臨床試験において、バロキサビル・マルボキシル(ゾフルーザ®️)に対する耐性ウイルスの発現率の高さが報告されています。特に12歳未満の小児における耐性率の高さが問題視され、使用される機会は少なくなっています(2020年〜2021年)。

また治療は1回の服用で完了するものの、嘔吐など、1回服用がデメリットになるケースや治療コストが既存薬よりも数倍かかることなども使用における障壁となっています。

やはり、どのような患者でバロキサビル・マルボキシルの有効性が高いのか、メリットが得られ易いのかについて、検証していく必要があると考えます。

-Evidence never tells you what to do-




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