オセルタミビルによる入院予防効果はどのくらいか?
オセルタミビルは広く使用されているにもかかわらず、外来患者に投与した場合に入院リスクが低下するかどうかについては、先行するメタ解析による要約エビデンスでは矛盾した結論が得られています。また、医師主導の大規模ランダム化臨床試験のいくつかは、まだメタ解析に組み入れられていないことから、さらなる検証が求めされています。
そこで今回は、インフルエンザに感染した成人および思春期の外来患者の入院を予防するオセルタミビルの有効性と安全性を評価することを目的に実施されたメタ解析の結果をご紹介します。
データ源は、PubMed、Ovid MEDLINE、Embase、Europe PubMed Central、Web of Science、Cochrane Central、ClinicalTrials.gov、WHO International Clinical Trials Registryであり、開始時から2022年1月4日まで検索されました。
インフルエンザ感染が確認された外来患者において、オセルタミビルとプラセボまたは非活性対照を比較したランダム化臨床試験が組み入れられました。
この系統的レビューおよびメタ解析では、Preferred Reporting Items for Systematic Reviews and Meta-analyses(PRISMA)の報告ガイドラインに従い、2人の独立した査読者(R.H.およびÉ.B.C.)がデータを抽出し、Cochrane Risk of Bias Tool 2.0でバイアスリスクが評価されました。各効果量は、制限付き最尤ランダム効果モデルによりプールされました。エビデンスの質は、GRADE(Grading of Recommendations, Assessment, Development and Evaluations)の枠組みで評価されました。
本試験の主要アウトカムは入院であり、リスク比(RR)およびリスク差(RD)推定値と95%CIでプールされました。
試験結果から明らかになったことは?
同定された2,352件の研究のうち、15件が組み入れられました。Intention-to-treat感染者(ITTi)集団は6,166例で構成され、54.7%がオセルタミビルを処方されていました。研究集団全体では、53.9%(10,471例中5,610例)が女性であり、平均年齢は45.3(14.5)歳でした。
リスク比 RR (95%CI) | リスク差 RD (95%CI) | |
ITTi集団 | RR 0.79 (0.48~1.29) | RD -0.17% (-0.23~0.48) |
高齢者集団 (平均年齢65歳以上) | RR 1.01 (0.21~4.90) | – |
入院リスクが高いと考えられる患者 | RR 0.65 (0.33~1.28) | – |
全体として、オセルタミビルはITTi集団における入院リスクの低下とは関連していませんでした(RR 0.79、95%CI 0.48~1.29; RD -0.17%、95%CI -0.23~0.48)。また、オセルタミビルは、高齢者集団(平均年齢65歳以上:RR 1.01、95%CI 0.21~4.90)または入院リスクが高いと考えられる患者(RR 0.65、95%CI 0.33~1.28)における入院の減少とは関連していませんでした。
安全性集団において、オセルタミビルは悪心(RR 1.43、95%CI 1.13~1.82)および嘔吐(RR 1.83、95%CI 1.28~2.63)の増加と関連しましたが、重篤な有害事象(RR 0.71、95%CI 0.46~1.08)は増加しませんでした。
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オセルタミビルは、インフルエンザウイルスに感染した細胞からウイルスが遊離するのを阻害することによりウイルスの増殖を抑えることから、A型またはB型インフルエンザウイルス感染症の治療に用いられています。しかし、薬剤による患者転帰への影響については充分に検証されていません。
さて、インフルエンザ感染外来患者を対象とした系統的レビュー・メタ解析において、オセルタミビルは入院リスクの低下とは関連していませんでした。一方、悪心・嘔吐といった消化器系の有害事象の増加と関連していました。
これまでの報告から、オセルタミビルはインフルエンザ有症状を1日程度減少させることが報告されていますが、入院リスクの低減については明確ではないようです。どのような患者でオセルタミビルを使用した方が良いのか、更なる検証が求められます。
続報に期待。
✅まとめ✅ インフルエンザ感染外来患者を対象としたこの系統的レビューおよびメタ解析において、オセルタミビルは入院リスクの低下とは関連しなかったが、消化器系の有害事象の増加とは関連していた。
根拠となった試験の抄録
試験の重要性:オセルタミビルは広く使用されているにもかかわらず、外来患者に投与した場合に入院リスクが低下するかどうかについては、先行するメタアナリシスによる要約エビデンスでは矛盾した結論が得られている。医師主導の大規模ランダム化臨床試験のいくつかは、まだメタアナリシスされていない。
目的:インフルエンザに感染した成人および思春期の外来患者の入院を予防するオセルタミビルの有効性と安全性を評価すること。
データ源:PubMed、Ovid MEDLINE、Embase、Europe PubMed Central、Web of Science、Cochrane Central、ClinicalTrials.gov、WHO International Clinical Trials Registryを開始時から2022年1月4日まで検索した。
研究の選択:インフルエンザ感染が確認された外来患者において、オセルタミビルとプラセボまたは非活性対照を比較したランダム化臨床試験を組み入れた。
データの抽出と統合:この系統的レビューおよびメタ解析では、Preferred Reporting Items for Systematic Reviews and Meta-analyses(PRISMA)の報告ガイドラインに従った。2人の独立した査読者(R.H.およびÉ.B.C.)がデータを抽出し、Cochrane Risk of Bias Tool 2.0を用いて偏りのリスクを評価した。各効果量は、制限付き最尤ランダム効果モデルを用いてプールされた。エビデンスの質は、GRADE(Grading of Recommendations, Assessment, Development and Evaluations)の枠組みを用いて評価した。
主な転帰と測定:入院はリスク比(RR)およびリスク差(RD)推定値と95%CIでプールされた。
結果:同定された2,352件の研究のうち、15件が組み入れられた。Intention-to-treat感染者(ITTi)集団は6,166例で構成され、54.7%がオセルタミビルを処方されていた。研究集団全体では、53.9%(10,471例中5,610例)が女性であり、平均年齢は45.3(14.5)歳であった。全体として、オセルタミビルはITTi集団における入院リスクの低下とは関連していなかった(RR 0.79、95%CI 0.48~1.29; RD -0.17%、95%CI -0.23~0.48)。また、オセルタミビルは、高齢者集団(平均年齢65歳以上:RR 1.01、95%CI 0.21~4.90)または入院リスクが高いと考えられる患者(RR 0.65、95%CI 0.33~1.28)における入院の減少とは関連していなかった。安全性集団において、オセルタミビルは悪心(RR 1.43、95%CI 1.13~1.82)および嘔吐(RR 1.83、95%CI 1.28~2.63)の増加と関連したが、重篤な有害事象(RR 0.71、95%CI 0.46~1.08)は増加しなかった。
結論と関連性:インフルエンザ感染外来患者を対象としたこの系統的レビューおよびメタアナリシスにおいて、オセルタミビルは入院リスクの低下とは関連しなかったが、消化器系の有害事象の増加とは関連していた。この目的での使用継続を正当化するためには、適切な高リスク集団を対象とした十分な検出力を有する試験が必要である。
引用文献
Evaluation of Oseltamivir Used to Prevent Hospitalization in Outpatients With Influenza: A Systematic Review and Meta-Analysis
Ryan Hanula et al. PMID: 37306992 PMCID: PMC10262060 DOI: 10.1001/jamainternmed.2023.0699
JAMA Intern Med. 2024 Jan 1;184(1):18-27. doi: 10.1001/jamainternmed.2023.0699.
— 読み進める https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37306992/
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