年末年始の無計画妊娠リスクはどのくらいか?
年末年始などの大型連休において、無計画の妊娠リスク増加が懸念されます。しかし、充分に検証されていません。
そこで今回は、無計画妊娠リスクについて大晦日と元旦の連休後の緊急避妊薬の売上増加を推定した時系列分析の結果をご紹介します。
本試験は自己回帰積分移動平均(ARIMA)モデルを用いた時系列分析です。2016年から2022年までの米国における伝統的な小売店舗が対象でした(食料品店、ドラッグストア、量販店、クラブストア、ダラーストア、ミリタリーアウトレット)。
本研究のデータソースは2016年から2022年の間に収集された、緊急避妊薬に分類される品目の週間売上集計に関するマーケティングデータ(n=362)でした。日付に基づき、週を年末年始休暇後(n=6)とそうでない(n=356)に分類されました。
本研究の主要アウトカム評価項目は米国人口における生殖年齢女性1,000人当たりのレボノルゲストレル(levonorgestrel)緊急避妊薬の週間売上高でした。
試験結果から明らかになったことは?
年末年始の休暇後 (15~44歳の女性1,000人当たり) | |
レボノルゲストレル緊急避妊薬の売上 | 0.63 (95%信頼区間 0.58~0.69) |
レボノルゲストレル緊急避妊薬の売上は、年末年始の休暇後に有意に増加しました(15~44歳の女性1,000人当たり0.63、95%信頼区間 0.58~0.69)。
無防備な性交渉のリスクの上昇を年末年始と共有している祝日(バレンタインデー、セントパトリックデー、アメリカ独立記念日)は、15~44歳の女性1,000人当たりの売上増加率がそれぞれ0.31(0.25~0.38)、0.14(0.06~0.23)、0.20(0.11~0.29)であり、程度は低いものの売上増加と関連していました。
これらの予想がない祝日(復活祭、母の日、父の日)は、レボノルゲストレル緊急避妊薬の売上と有意な関連はありませんでした。
コメント
年末年始に緊急避妊薬の売上が増加する可能性が予想されますが充分に検証されていません。
さて、時系列分析の結果、年末年始に緊急避妊薬の売上が増加することが示されました。本解析結果から、この時期が他の祝日に比べて無防備な膣性交のリスク増加と関連していることを示唆しています。
あくまでも相関関係が示されたに過ぎませんが、希望しない妊娠の発生リスクを低減させるための施策立案のために、更なる検証が求められます。
続報に期待。
【まとめ】年末年始に緊急避妊薬の売上が増加することは、この時期が他の祝日に比べて無防備な膣性交のリスク増加と関連していることを示唆している。
根拠となった試験の抄録
目的:大晦日と元旦の連休後の緊急避妊薬の売上増加を推定すること。
試験デザイン:自己回帰積分移動平均(ARIMA)モデルを用いた時系列分析。
試験設定:2016年から2022年までの米国における伝統的な(つまり「実店舗とモルタル」の)小売店舗(食料品店、ドラッグストア、量販店、クラブストア、ダラーストア、ミリタリーアウトレット)。
データソース:2016年から2022年の間に収集された、緊急避妊薬に分類される品目の週間売上集計に関するマーケティングデータ(n=362)。日付に基づき、週を年末年始休暇後(n=6)とそうでない(n=356)に分類した。
主要アウトカム評価項目:米国人口における生殖年齢女性1,000人当たりのレボノルゲストレル緊急避妊薬の週間売上高。
結果:レボノルゲストレル緊急避妊薬の売上は、年末年始の休暇後に有意に増加した(15~44歳の女性1,000人当たり0.63(95%信頼区間 0.58~0.69)。無防備な性交渉のリスクの上昇を年末年始と共有している祝日(バレンタインデー、セントパトリックデー、アメリカ独立記念日)は、15~44歳の女性1,000人当たりの売上増加率がそれぞれ0.31(0.25~0.38)、0.14(0.06~0.23)、0.20(0.11~0.29)であり、程度は低いものの売上増加と関連していた。これらの予想がない祝日(復活祭、母の日、父の日)は、レボノルゲストレル緊急避妊薬の売上と有意な関連はなかった。
結論:年末年始に緊急避妊薬の売上が増加することは、この時期が他の祝日に比べて無防備な膣性交のリスク増加と関連していることを示唆している。行動上のリスク、性的暴力を緩和するための予防戦略、休日前後の避妊へのアクセスの改善をターゲットとすることで、無防備な膣性交に関連するリスクを抑制できる可能性がある。
引用文献
Retail demand for emergency contraception in United States following New Year holiday: time series study
Brandon Wagner et al. PMID: 38123174 PMCID: PMC10731423 DOI: 10.1136/bmj-2023-077437
BMJ. 2023 Dec 20:383:e077437. doi: 10.1136/bmj-2023-077437.
— 読み進める https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38123174/
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