過体重または肥満の治療における経口セマグルチドの効果は?
経口グルカゴン様ペプチド(GLP)-1アナログであるセマグルチドは、2型糖尿病治療薬として承認されています。GLP-1アナログ(受容体作動薬)は、副作用として消化器症状や食欲抑制、これに伴う体重減少が報告されています。したがって、過体重または肥満の治療としてセマグルチドが有効である可能性がありますが、充分に検証されていません。
そこで今回は、2型糖尿病を合併していない成人における過体重または肥満の治療において、セマグルチド50mgを1日1回服用した場合の有効性と安全性をプラセボと比較検討したOASIS 1試験の結果をご紹介します。
このランダム化、二重盲検、プラセボ対照、第3相、優越性試験は、BMIが30kg/m2以上、または27kg/m2以上で体重に関連した合併症や併存疾患を有しているものの、2型糖尿病を合併していない成人が登録されました。試験はアジア、ヨーロッパ、北米の9ヵ国50ヵ所の外来クリニックで行われました。
試験参加者は、双方向のウェブ応答システムにより、経口セマグルチドを50mgまで漸増した投与群、またはプラセボを1日1回、68週間、視覚的にマッチさせた投与群にランダムに割り付けられ(1:1)、さらに生活習慣への介入が行われました。グループ割り付けは参加者、治験責任医師、アウトカムを評価する医師に対してマスクされました。
本試験の主要評価項目は、体重の変化率および68週目に体重が5%以上減少したかどうかであり、セマグルチド50mgとプラセボを比較し、治療中止や他の体重減少療法の使用にかかわらず評価されました(intention-to-treat解析)。安全性は、試験薬を少なくとも1回投与された参加者を対象に評価されました。
試験結果から明らかになったことは?
2021年9月13日から11月22日まで、709例の参加者がスクリーニングを受け、そのうち667例がセマグルチド50mg(n=334)またはプラセボ(n=333)の経口投与にランダムに割り付けられました。
セマグルチド50mg経口投与群 | プラセボ投与群 | 推定治療差 (95%CI) | |
ベースラインから68週目までの推定平均体重変化 | -15.1%(SE 0.5) | -2.4%(SE 0.5) | -12.7%ポイント (-14.2 〜 -11.3) p<0.0001 |
ベースラインから68週目までの推定平均体重変化は、セマグルチド50mg経口投与群で-15.1%(SE 0.5)、プラセボ投与群で-2.4%(0.5)でした(推定治療差 -12.7%ポイント、95%CI -14.2 〜 -11.3;p<0.0001)。
セマグルチド50mg経口投与群 (317例) | プラセボ投与群 (295例) | オッズ比 OR (95%CI) | |
5%の体重減少を達成 | 269例(85%) | 76例(26%) | OR 12.6 (8.5~18.7) p<0.0001 |
10%の体重減少を達成 | 220例(69%) | 35例(12%) | OR 14.7 (9.6~22.6) |
15%の体重減少を達成 | 170例(54%) | 17例(6%) | OR 17.9 (10.4~30.7) |
20%の体重減少を達成 | 107例(34%) | 8例(3%) | OR 18.5 (8.8~38.9) |
プラセボに対するセマグルチド50mgの経口投与では、第68週に少なくとも5%の体重減少を達成した症例は317例中269例(85%)、295例中76例(26%)、オッズ比(OR)は12.6、95%CI 8.5~18.7、p<0.0001)、10%(220例[69%] vs. 35例[12%]、OR 14.7、9.6~22.6)、15%(170例[54%] vs. 17例[6%]、OR 17.9、10.4~30.7)、20%(107例[34%] vs. 8例[3%]、OR 18.5、8.8~38.9)でした。
有害事象はプラセボ群(333例中285例[86%])よりセマグルチド50mg経口投与群(334例中307例[92%])の方が高いことが示されました。消化器系の有害事象(ほとんどが軽度から中等度)は、セマグルチド50mg経口投与群で268例(80%)、プラセボ投与群で154例(46%)に報告されました。
コメント
GLP-1受容体作動薬により体重減少が示されることから、過体重あるいは肥満患者における治療への期待が寄せられています。
さて、本試験結果によれば、2型糖尿病を伴わない過体重または肥満の成人において、セマグルチド50mgの1日1回経口投与は、プラセボと比較して優れた臨床的に意義のある体重減少をもたらしました。
有害事象としては、既存のGLP-1受容体作動薬と同様に、消化器系の事象が多いことが示されました。
経口セマグルチドは服用方法に条件があることから、使用に際して障壁となっています。他のGLP-1受容体作動薬との比較が求められます。
続報に期待。
コメント