急性虚血性脳卒中患者におけるブチルフタリドの効果はどのくらい?(DB-RCT; BAST試験; JAMA Neurol. 2023)

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ブチルフタリドはどんな薬剤なのか?

DL-3-n-ブチルフタリド(NBP)は、Apium graveolens(中国のセロリ)の種子から単離されたL-3-n-ブチルフタリドに基づく合成化合物です。2002年に虚血性脳卒中の治療のためにラセミ3-n-ブチルフタリド(dl-NBP)が中国食品医薬品局で承認されました。NBPの治療効果の根底にあるメカニズムは、複数の研究で報告されており、議論の余地がありますが、複数の活性標的に作用することにより神経保護作用を示すと考えられています。

しかし、再灌流療法を受けている急性虚血性脳卒中患者におけるNBPの有効性はまだ不明です。

そこで今回は、静脈内血栓溶解療法や血管内治療による再灌流療法を受けている急性虚血性脳卒中患者におけるNBPの有効性と安全性を評価した二重盲検ランダム化比較試験の結果をご紹介します。

この多施設共同二重盲検プラセボ対照並行ランダム化比較試験は、中国の59施設で実施され、90日間の追跡が行われました。急性虚血性脳卒中患者1,236例のうち、米国国立衛生研究所脳卒中スケールスコアが4~25の急性虚血性脳卒中と診断され、症状発現から6時間以内に試験薬を開始でき、遺伝子組換え型組織プラスミノーゲン活性化因子(rt-PA)静注療法または血管内治療、または血管内治療への橋渡しとなるrt-PA静注療法のいずれかを受けた18歳以上の患者1,216例が、参加拒否または適格基準を満たさない患者20例を除外した後に登録されました。データは2018年7月1日から2022年5月22日まで収集されました。

本試験では、症状発現後6時間以内に、NBPまたはプラセボを投与する群に1:1の割合でランダムに割り付けられました。

本試験の有効性の主要評価項目は、ベースラインの脳卒中重症度に応じて0~2ポイントの閾値が設定された90日修正Rankin Scaleスコア(0[症状なしまたは完全に回復]~6[死亡]のグローバルな脳卒中障害スケール)に基づく良好な転帰を得た患者の割合でした。

試験結果から明らかになったことは?

登録患者1,216例中、827例(68.0%)が男性で、年齢中央値は66(IQR 56〜72)歳でした。合計607例がブチルフタリド群に、609例がプラセボ群にランダムに割り付けられました。

オッズ比
(95%CI)
90日後に良好な機能的転帰が得られた患者オッズ比 1.70
1.35〜2.14
P<0.001

90日後に良好な機能的転帰が得られたのは、ブチルフタリド群344例(56.7%)、プラセボ群268例(44.0%)でした(オッズ比 1.70、95%CI 1.35〜2.14;P<0.001)。

90日以内の重篤な有害事象は、ブチルフタリド群で61例(10.1%)、プラセボ群で73例(12.0%)に発生しました。

コメント

脳梗塞急性期における治療戦略の原則は、迅速な血流再開と脳細胞保護にあります。迅速な血流再開において課題となるのが、血流再開による脳の虚血再灌流障害(脳浮腫の増悪、出血性の梗塞など)です。血流再開時期と再灌流障害発生について、脳梗塞発症1〜2時間以内ならば血流を再開しても臨床的に問題となるような再灌流障害は回避できるとの考えが一般的なようです。

虚血性脳卒中の治療のためにラセミ3-n-ブチルフタリド(dl-NBP)が中国食品医薬品局で承認されていますが、再灌流療法を受けている急性虚血性脳卒中患者におけるNBPの有効性はまだ不明です。

さて、二重盲検ランダム化比較試験の結果によれば、静脈内血栓溶解療法および/または血管内治療を受けた急性虚血性脳卒中患者において、DL-3-n-ブチルフタリドはプラセボと比較して90日後に良好な機能的転帰を得た患者の割合が高いことが示されました。一方、90日以内の重篤な有害事象の発生は、プラセボと同様でした。事象の内訳については抄録には記載されていませんので注意を要します。

なお、2023年6月現在、DL-3-n-ブチルフタリド(NBP)は日本で承認されていません。

続報に期待。

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✅まとめ✅ 静脈内血栓溶解療法および/または血管内治療を受けた急性虚血性脳卒中患者において、DL-3-n-ブチルフタリドはプラセボと比較して90日後に良好な機能的転帰を得た患者の割合が高かった。

次のページに根拠となった論文情報を掲載しています。

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