急性心不全患者におけるポイントオブケアは、通常ケアと比較して死亡リスクを低減する?(段階的ウェッジクラスターRCT; COACH試験; N Engl J Med. 2022)

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急性心不全患者におけるポイントオブケアは、通常ケアより優れるのか?

急性心不全の患者は、有害事象リスクが不明であることや迅速なフォローアップの選択肢が充分でないことから、頻繁にあるいは計画的に入院させられています。臨床医が患者を退院させるか入院させるかの判断を支援する戦略を用い、外来診療での迅速なフォローアップと組み合わせることが転帰に影響を与えるかどうかはまだ不明です。

そこで今回は、対照期(通常ケア)から介入期(ポイントオブケア)への一方向のクロスオーバーの開始日をずらし、10病院をランダムに割り付け、発症後30日以内のあらゆる原因による死亡または心血管系原因による入院と、20ヵ月以内の複合アウトカム(主要アウトカム)について検証した段階的ウェッジクラスターランダム化試験の結果をご紹介します。

本試験の介入期では、ポイントオブケアアルゴリズムを使用して急性心不全患者を死亡リスクに応じて層別化しました。介入期には、低リスクの患者は早期退院(3日以内)して標準化された外来治療を受け、高リスクの患者は入院しました。

試験結果から明らかになったことは?

合計5,452例の患者が試験に登録されました(対照期 2,972例、介入期 2,480例)。

介入期対照期
(観察期)
調整ハザード比
(95%CI)
30日以内の何らかの原因による死亡
または心血管系原因による入院
301例
(12.1%)
430例
(14.5%)
調整ハザード比 0.88
0.78~0.99
P=0.04
20ヵ月以内の何らかの原因による死亡
または心血管系原因による入院
54.4%
48.6~59.9
56.2%
54.2~58.1
調整ハザード比 0.95
0.92~0.99

30日以内の何らかの原因による死亡または心血管系原因による入院は、介入期に登録された301例(12.1%)および対照期に登録された430例(14.5%)に認められました(調整ハザード比 0.88、95%信頼区間[CI] 0.78~0.99、P=0.04)。

20ヵ月以内の主要アウトカム事象の累積発生率は、介入期に登録された患者では54.4%(95%CI 48.6~59.9)、対照期に登録された患者では56.2%(95%CI 54.2~58.1)でした(補正ハザード比 0.95、95%CI 0.92~0.99)。

低または中リスクの患者では、退院後30日以内の最初の外来受診までに発生した死亡またはあらゆる原因による入院は6件未満でした。

コメント

急性心不全患者は基本的に入院加療となり、安定したら退院します。しかし、入院に関する基準については、明確ではありません。

さて、本試験結果によれば、救急医療を受診した急性心不全患者において、臨床的意思決定と迅速なフォローアップを支援する病院ベースの戦略の活用は、通常ケアと比較して、30日以内のあらゆる原因による死亡または心血管原因による入院の複合リスクの低減につながりました。

本試験では段階的ウェッジクラスターランダム化法を用いており、施設ごとの介入を実施しています。ポイントオブケアを実施する上で、医者をはじめとする医療従事者間の影響があることから、同施設内における介入効果の適切な群間比較の実施が困難となります。これは同施設内における医療従事者間での意見・情報交換が可能であるためです。したがって、段階的ウェッジクラスターランダム化法を適応することは妥当であると考えられます。

続報に期待。

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✅まとめ✅ 救急医療を受診した急性心不全患者において、臨床的意思決定と迅速なフォローアップを支援する病院ベースの戦略の活用は、通常ケアと比較して、30日以内のあらゆる原因による死亡または心血管原因による入院の複合リスクの低減につながった。

根拠となった試験の抄録

背景:急性心不全の患者は、有害事象リスクが不明であることや迅速なフォローアップの選択肢が充分でないことから、頻繁にあるいは計画的に入院させられている。臨床医が患者を退院させるか入院させるかの判断を支援する戦略を用い、外来診療での迅速なフォローアップと組み合わせることが転帰に影響を与えるかどうかはまだ不明である。

方法:カナダのオンタリオ州で実施された段階的ウェッジクラスターランダム化試験*において、対照期(通常ケア)から介入期への一方向のクロスオーバーの開始日をずらし、10病院をランダムに割り付けた。この介入期では、ポイントオブケアアルゴリズムを使用して急性心不全患者を死亡リスクに応じて層別化した。介入期には、低リスクの患者は早期退院(3日以内)して標準化された外来治療を受け、高リスクの患者は入院した。
主要アウトカムは、発症後30日以内のあらゆる原因による死亡または心血管系原因による入院の複合アウトカムと、20ヵ月以内の複合アウトカムとした。
*クラスターレベルで介入時期をランダム化し、順番に観察期から介入期に移行する試験デザイン。ランダム化比較試験で言うところの対照が観察期にあたり、介入が介入期にあたる自己対照(Self-controlled)のクラスターランダム化比較試験。

結果:合計5,452例の患者が試験に登録された(対照期 2,972例、介入期 2,480例)。30日以内の何らかの原因による死亡または心血管系原因による入院は、介入期に登録された301例(12.1%)および対照期に登録された430例(14.5%)に認められた(調整ハザード比 0.88、95%信頼区間[CI] 0.78~0.99、P=0.04)。20ヵ月以内の主要アウトカム事象の累積発生率は、介入期に登録された患者では54.4%(95%CI 48.6~59.9)、対照期に登録された患者では56.2%(95%CI 54.2~58.1)であった(補正ハザード比 0.95、95%CI 0.92~0.99)。低または中リスクの患者では、退院後30日以内の最初の外来受診までに発生した死亡またはあらゆる原因による入院は6件未満であった。

結論:救急医療を受診した急性心不全患者において、臨床的意思決定と迅速なフォローアップを支援する病院ベースの戦略の活用は、通常ケアと比較して、30日以内のあらゆる原因による死亡または心血管原因による入院の複合リスクの低減につながった。

資金提供:オンタリオ州SPOR支援ユニット他

ClinicalTrials.gov 番号:NCT02674438

段階的ウェッジクラスターランダム化比較試験(stepped-wedge, cluster-randomized trial)とは?

クラスターレベルで介入時期をランダム化し、順番に観察期から介入期に移行する試験デザイン。ランダム化比較試験で言うところの対照が観察期にあたり、介入が介入期にあたる自己対照(Self-controlled)のクラスターランダム化比較試験。

以下の3つの特徴を有する試験デザイン。
・全てのクラスターが、時間差ではあるが介入を受ける(自己対照)。つまり未介入のクラスターが生じない。
・通常のクラスターランダム化比較試験と比較して、研究期間が著しく長期化する可能性が高い。
・コントロールから介入への切り替えの回数(step)と、切り替えと切り替えの間の期間に依存が生じる、同時対照を置いていないなどバイアスが入り込む余地が多いことから、あくまで実用的(Pragmatic)な試験デザインであることを理解する必要があり、他の試験デザインが利用可能な状況であれば、本試験デザインを採用する意義は低い。

引用文献

Trial of an Intervention to Improve Acute Heart Failure Outcomes
Douglas S Lee et al. PMID: 36342109 DOI: 10.1056/NEJMoa2211680
N Engl J Med. 2022 Nov 5. doi: 10.1056/NEJMoa2211680. Online ahead of print.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36342109/

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