血液透析を受けている心不全(HFrEF)患者におけるガイドラインに沿った内科的治療はどれが優れていそうですか?(小規模・短施設; 後向きコホート研究; International Journal of Cardiology 2022)

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血液透析を受けている心不全患者においてもレニン-アンジオテンシン系阻害薬(RASi)およびβ遮断薬は有効なのか?

レニン-アンジオテンシン系阻害薬(RASi)およびβ遮断薬は、心不全および駆出率低下(HFrEF)患者のガイドラインに沿った治療(GDMT)として、予後を改善する効果があります。しかし、定期的な血液透析を受けている心不全患者における良好な効果に関するデータは限られています。

そこで今回は、定期的な血液透析を受けているHFrEF患者において、RASiとβ遮断薬の予後への影響を評価することを目的に実施された後向きコホート研究の結果をご紹介します。

この後向き単一施設観察研究では、HFのために入院し、退院まで生存した患者2,110例のうち、定期的な血液透析を受けているHFrEF患者97例が解析対象でした。退院時の処方薬により、RASiとβ遮断薬の両方(Dual-GDMT群:n=55)、RASiかβ遮断薬のどちらか(Mono-GDMT群:n=34)、RASiもβ遮断薬も使わない(No-GDMT群:n=8)に分類され、退院時の処方薬により3群に分類されました。本試験の主要評価項目は、全死亡と心不全による再入院の複合でした。

試験結果から明らかになったことは?

平均年齢は66歳で、79%が男性でした。中央値501日の追跡期間中に、43例(44%)で主要評価項目が発生しました。

ハザード比 HR
(95%CI)
vs. No-GDMT
RASi・β遮断薬群
(Dual-GDMT)
HR 0.04
(95%CI 0.005〜0.32
RASi or β遮断薬群
(Mono-GDMT)
HR 0.08
(95%CI 0.01〜0.50

Kaplan-Meier解析の結果、Dual-GDMT群は主要評価項目の発生率が最も低いことが明らかとなりました(傾向に関するログランク検定:p<0.001)。多様な共変量で調整した後(多変量Cox回帰)でも、Dual-GDMT(ハザード比[HR] 0.04、95%信頼区間(CI) 0.005〜0.32)およびMono-GDMT(HR 0.08、95%CI 0.01〜0.50)群はNo-GDMT群より予後が良好であることが示されました。

コメント

血液透析患者を対象とした試験は限られており、特に循環器疾患を合併した患者におけるデータは不足しています。

さて、本試験結果によれば、血液透析を受けているHFrEF患者において、RASiおよび/またはβ遮断薬の処方は、RASiもβ遮断薬も使わない場合と比較して、退院後の全死亡と心不全による再入院の複合リスクを低下させることが示唆されました。

あくまでも相関関係が示されたに過ぎず、試験デザインから結果を過大評価している可能性があります。とはいえ、血液透析を受けている心不全(HFrEF)患者においても、RASiおよび/またはβ遮断薬の処方は予後を改善するようです。

続報に期待。

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✅まとめ✅ 血液透析を受けているHFrEF患者において、RASiおよび/またはβ遮断薬の処方は、RASiもβ遮断薬も使わない場合と比較して、退院後の全死亡と心不全による再入院の複合リスクを低下させることが示唆された。

根拠となった試験の抄録

ハイライト

  • 定期的な血液透析を受けている患者は、一般に心不全のランダム化転帰試験から除外されていた。
  • 定期的な血液透析を受けている心不全患者におけるガイドラインに従った内科的治療の予後効果に関するデータは限られている。
  • レニン-アンジオテンシン系阻害薬および/またはβ遮断薬の処方は、心不全および駆出率低下を有する血液透析患者の臨床転帰の改善と関連することが示された。

背景:レニン-アンジオテンシン系阻害薬(RASi)およびβ遮断薬は、心不全および駆出率低下(HFrEF)患者のガイドラインに沿った治療(GDMT)として、予後を改善する効果がある。しかし、定期的な血液透析を受けているこのような患者における良好な効果に関するデータは限られている。我々は、定期的な血液透析を受けているHFrEF患者において、RASiとβ遮断薬の予後への影響を評価することを目的とした。

方法:この後向き単一施設観察研究では、HFのために入院し、退院まで生存した連続した患者2,110例のうち、定期的な血液透析を受けているHFrEF患者97例を解析対象とした。退院時の処方薬により、RASiとβ遮断薬の両方(Dual-GDMT群:n=55)、RASiかβ遮断薬のどちらか(Mono-GDMT群:n=34)、RASiもβ遮断薬も使わない(No-GDMT群:n=8)に分類され、指標入院の後、退院時の処方薬により3群に分類された。
主要評価項目は、全死亡と心不全による再入院の複合とした。

結果:平均年齢は66歳で、79%が男性であった。中央値501日の追跡期間中に、43例(44%)で主要評価項目が発生した。Kaplan-Meier解析の結果、Dual-GDMT群は主要評価項目の発生率が最も低かった(傾向に関するログランク検定:p<0.001)。多様な共変量で調整した後(多変量Cox回帰)でも、Dual-GDMT(ハザード比[HR] 0.04、95%信頼区間(CI) 0.005〜0.32)およびMono-GDMT(HR 0.08、95%CI 0.01〜0.50)群はNo-GDMT群より予後が良好であることが示された。

結論:定期的に血液透析を受けているHFrEF患者において、RASiおよび/またはβ遮断薬の処方は退院後の有害事象発生率を低下させることが示唆された。

キーワード:心不全、ガイドラインに沿った薬物療法、血液透析

引用文献

Prognostic impact of guideline-directed medical therapy in patients with heart failure on regular hemodialysis
Makoto Kishihara et al.
International Journal of Cardiology 2022. Published:October 18, 2022 DOI:https://doi.org/10.1016/j.ijcard.2022.10.131
ー 続きを読む https://www.internationaljournalofcardiology.com/article/S0167-5273(22)01642-4/fulltext?dgcid=raven_jbs_aip_email

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