心房細動および心臓弁膜症を有する患者においてアピキサバンとリバーロキサバン、どちらが良いのか?
心房細動(AF)と心臓弁膜症(VHD)を有する患者には、アピキサバンとリバーロキサバンがよく使用されていますが、これらの患者における2剤の比較検討は限られています。
そこで今回は、心房細動と心臓弁膜症患者におけるアピキサバンとリバーロキサバンの有効性と安全性を比較検討した傾向スコアマッチ・人口ベースコホート研究の結果をご紹介します。
本試験の対象はアピキサバンまたはリバーロキサバンの新規使用者で、抗凝固療法開始前にAFおよびVHDの診断を受けていた患者でした。使用されたのは、2013年1月1日〜2020年12月31日までの民間医療保険データベースでした。
本試験の有効性の主要評価項目は、虚血性脳卒中または全身性塞栓症の複合、安全性の主要評価項目は、消化管出血または頭蓋内出血の複合でした。
試験結果から明らかになったことは?
ハザード比(95%CI) アピキサバン vs. リバーロキサバン | |
虚血性脳卒中または全身性塞栓症の発生率 | HR 0.57(95%CI 0.40~0.80) |
出血の発生率 | HR 0.51(95%CI 0.41~0.62) |
傾向スコアをマッチさせた19,894例(各薬剤を投与された9,947例)のコホートにおいてリバーロキサバンと比較すると、アピキサバンは虚血性脳卒中または全身性塞栓症の発生率(HR 0.57、95%CI 0.40~0.80)と出血(HR 0.51、95%CI 0.41~0.62)と関連がありました。
脳卒中または全身性塞栓症の発生率の 絶対的減少 | 出血イベント発生率の 絶対的減少 | |
治療開始後6ヵ月以内 | 0.0026 | 0.012 |
治療開始後1年以内 | 0.011 | 0.019 |
アピキサバンのリバーロキサバンに対する脳卒中または全身性塞栓症の発生率の絶対的減少は、治療開始後6ヵ月以内に0.0026、1年以内に0.011でした。また、アピキサバンがリバーロキサバンと比較して出血イベント発生率の絶対的減少は、治療開始後6ヵ月で0.012、1年で0.019でした。
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心房細動(AF)と心臓弁膜症(VHD)を有する患者において、ビタミンK拮抗薬であるワルファリンが使用されますが、定期的な頻回の検査が必要であったり食事制限があったりと、利便性が低いことから代替治療、代替薬の提案が求められています。
経口抗凝固薬(DOAC, NOAC, OAC)は、定期的な検査が不要(確立された検査方法がほぼない)であったり、食事制限がなかったりと、代替的治療薬として期待されていますが、DOAC間での比較検討のデータは不充分であり、また心臓弁膜症に対しては適応を有していません。
さて、本試験結果によれば、心房細動と心臓弁膜症を有する患者を対象としたコホート研究において、アピキサバン投与患者はリバーロキサバン投与患者と比較して、虚血性脳卒中や全身性塞栓症のリスク、出血リスクが低い可能性が示されました。
あくまでも相関関係が示されたに過ぎませんが、これまでの報告と矛盾しません。
続報に期待。
✅まとめ✅ 心房細動と心臓弁膜症を有する患者を対象としたコホート研究において、アピキサバン投与患者はリバーロキサバン投与患者と比較して、虚血性脳卒中や全身性塞栓症のリスク、出血のリスクが低かった。
根拠となった試験の抄録
背景:心房細動(AF)と心臓弁膜症(VHD)を有する患者には、アピキサバンとリバーロキサバンがよく使用されているが、これらの患者における2剤の比較検討は限られている。
目的:心房細動と心臓弁膜症患者におけるアピキサバンとリバーロキサバンの有効性と安全性のターゲット試験をエミュレートすること。
試験デザイン:新規使用者、実薬対照、コホート研究デザイン。
試験設定:2013年1月1日〜2020年12月31日までの民間医療保険データベース。
対象患者:アピキサバンまたはリバーロキサバンの新規使用者で、抗凝固療法開始前にAFおよびVHDの診断を受けていた者。
測定方法:有効性の主要評価項目は、虚血性脳卒中または全身性塞栓症の複合とした。安全性の主要評価項目は、消化管出血または頭蓋内出血の複合とした。
ロバスト分散推定法を用いたCox比例ハザード回帰により、ハザード比(HR)および95%CIを算出した。
結果:傾向スコアをマッチさせた19,894例(各薬剤を投与された9,947例)のコホートにおいてリバーロキサバンと比較すると、アピキサバンは虚血性脳卒中または全身性塞栓症の発生率(HR 0.57、95%CI 0.40~0.80)と出血(HR 0.51、95%CI 0.41~0.62)と関連があった。アピキサバンのリバーロキサバンに対する脳卒中または全身性塞栓症の発生率の絶対的減少は、治療開始後6ヵ月以内に0.0026、1年以内に0.011であった。また、アピキサバンがリバーロキサバンと比較して出血イベントの発生率を減少させる絶対値は、治療開始後6ヵ月で0.012、1年で0.019であった。
制限事項:追跡期間が短く、一部の心臓弁膜症を確認できない。
結論:心房細動と心臓弁膜症を有する患者を対象としたコホート研究において、アピキサバン投与患者はリバーロキサバン投与患者と比較して、虚血性脳卒中や全身性塞栓症のリスク、出血のリスクが低かった。
主な資金源:米国国立衛生研究所(National Institutes of Health)
引用文献
Apixaban Versus Rivaroxaban in Patients With Atrial Fibrillation and Valvular Heart Disease : A Population-Based Study
Ghadeer K Dawwas et al. PMID: 36252244 DOI: 10.7326/M22-0318
Ann Intern Med. 2022 Oct 18. doi: 10.7326/M22-0318. Online ahead of print.
— 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36252244/
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