退院間近のCOVID-19入院患者のリハビリ運動負荷時のサージカルマスク着用は安全か?(小規模ランダム化クロスオーバー試験; Clin Rehabil. 2022)

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COVID-19入院患者のリハビリ中のマスク着用は安全か?

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染を軽減するために、入院患者におけるサージカルマスクの着用がリハビリテーションを含むケア中に推奨されるようになりました。しかし、マスクは呼吸困難を増加させる可能性があり、急性期以降のCOVID-19患者のリハビリテーション活動を推進する上で懸念されます。

そこで今回は、退院間近のCOVID-19入院患者を対象に、1分間座位から立位までの立ち上がり試験における呼吸困難、運動パフォーマンス、心肺反応に及ぼすサージカルマスクの影響を評価したランダム化クロスオーバー試験の結果をご紹介します。

本試験では、翌日退院予定のCOVID-19患者を対象に、サージカルマスクを装着した場合と装着しない場合の2回の立ち上がり試験がランダムに実施されました。各試験の前、終了時、回復2分後にアウトカム指標として呼吸困難(修正ボルグスケール)、心肺パラメータ、および座位から立位への反復回数が測定されました。

試験結果から明らかになったことは?

52±10歳の患者28例が対象となりました。

マスクをしていない状態と比較して、椅子立ち上がりテスト前と終了時において、マスクをしている方が呼吸困難*が有意に高かった(平均差 1.0[95%CI 0.6〜1.4] vs. 平均差 1.7 [95%CI 0.8〜2.6])。この差は回復期を過ぎた後は有意ではなかった。マスクは心肺機能や座位から立位への移行回数に影響を与えなかった。

*修正ボルグスケール(modified Borg scale)による評価:修正ボルグスケールとは、0から10の段階で呼吸困難の程度を表す直接評価スケールのこと。患者自身が評価する主観的なスケールでリハビリテーション時の評価として有用である。

修正ボルグスケール
0何も感じない(nothing at all)
0.5非常に弱い(very very weak)
1やや弱い(very weak)
2弱い(weak)
3
4多少強い(some what strong)
5強い(strong)
6
7とても強い(very strong)
8
9
10非常に強い(very very strong)
修正ボルグスケールによる主観的運動強度

コメント

新型コロナウイルス感染症の蔓延防止措置として、マスク着用を含め基本的な感染予防対策が実施されています。退院間際のCOVID-19患者は、社会生活復帰のためにリハビリテーションを実施しますが、このリハビリテーション実施時にも当然マスク着用が求められます。しかし、マスクは呼吸困難を増加させる可能性があり、急性期以降のCOVID-19患者のリハビリテーション活動を推進する上で懸念されます。

さて、本試験結果によれば、退院間近の急性期COVID-19入院患者において、サージカルマスク着用は、マスクを着用しない場合と比較して、安静時および最大下運動負荷試験時の呼吸困難を有意に増強しましたが、心肺反応や運動パフォーマンスに対する影響はありませんでした。呼吸困難の評価として修正ボルグスケールが用いられましたが、このスケールのポイントを見てみると、群間に認められた差に大きな懸念がないことがわかります。統計学的に有意な差が、臨床上重要な差であるかどうかは別であると考えられます。

したがって、退院間際のCOVID-19入院患者のリハビリテーション実施時におけるサージカルマスク着用は、大きな懸念なく実施できると考えられます。ただし、本試験は小規模な検討結果であることから、より規模の大きい試験の実施が求められます。

続報に期待。

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✅まとめ✅ 退院間近の急性期COVID-19入院患者において、サージカルマスク着用は、マスクを着用しない場合と比較して、安静時および最大下運動負荷試験時の呼吸困難をやや増強したが、心肺反応や運動パフォーマンスには影響を与えなかった。

根拠となった試験の抄録

背景:新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染を軽減するために、入院患者におけるサージカルマスクの着用がリハビリテーションを含むケア中に推奨されるようになった。しかし、マスクは呼吸困難を増加させる可能性があり、急性期以降のCOVID-19患者のリハビリテーション活動を推進する上で懸念される。

目的:退院間近のCOVID-19入院患者を対象に、1分間座位から立位までの立ち上がり試験における呼吸困難、運動パフォーマンス、心肺反応に及ぼすサージカルマスクの影響を評価すること。

方法:翌日退院予定のCOVID-19患者を対象に、サージカルマスクを装着した場合と装着しない場合の2回の立ち上がり試験をランダムに実施した。各試験の前、終了時、回復2分後にアウトカム指標を記録した。呼吸困難(修正ボルグスケール)、心肺パラメータ、および座位から立位への反復回数を測定した。

結果:52±10歳の患者28例を対象とした。マスクをしていない状態と比較して、椅子立ち上がりテスト前と終了時にマスクをしている方が呼吸困難が有意に高かった(平均差 1.0[95%CI 0.6〜1.4] vs. 平均差 1.7 [95%CI 0.8〜2.6])。この差は回復期を過ぎた後は有意ではなかった。マスクは心肺機能や座位から立位への移行回数に影響を与えなかった。

結論:退院間近の急性期COVID-19入院患者において、サージカルマスクは安静時および最大下運動負荷試験時の呼吸困難を増強したが、心肺反応や運動パフォーマンスには影響を与えなかった。COVID-19から回復した患者は、身体活動やリハビリテーション活動中にサージカルフェイスマスクを着用することが安全であることを再確認する必要がある。また、これらのデータは、マスク着用が義務化されたリハビリテーションセンターにおいて、これらの患者を紹介する際の不安を軽減することができる。

キーワード:COVID-19と新型コロナウイルス感染症、身体活動、椅子立ち上がり試験(sit-to-stand test)、最大下運動試験(submaximal exercise test)、サージカルマスク

引用文献

Impact of surgical mask on performance and cardiorespiratory responses to submaximal exercise in COVID-19 patients near hospital discharge: A randomized crossover trial
William Poncin et al. PMID: 35473371 PMCID: PMC9047665 DOI: 10.1177/02692155221097214
Clin Rehabil. 2022 Apr 27;2692155221097214. doi: 10.1177/02692155221097214. Online ahead of print.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35473371/

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