中等度から重度の顔面肝斑に対するトリプルコンビネーションクリームとハイドロキノン4%クリームの比較検討(Open-RCT; J Cosmet Dermatol. 2007)

close view of womans face 11_皮膚・骨格筋系
Photo by Jenna Hamra on Pexels.com
この記事は約6分で読めます。
ランキングに参加しています!応援してもよいよという方はポチってください!

肝斑に対する外用クリームはどれが優れているのか?

皮膚肝斑は、すべての人種にみられる皮膚疾患ですが、アジアおよびヒスパニック系の肌の色が黒い、出産適齢期の女性に多くみらます(PMID: 7492140PMID: 11951128PMID: 3346120)。肝斑の発症には多くの要因が関与していますが、最も重要な要因は、紫外線(UV)、遺伝的素因、ホルモン機能障害であることに変わりはありません。肝斑の管理に対する現在のアプローチとしては、ゴールドスタンダードの脱色剤と考えられているハイドロキノン(HQ)のほか、アゼライン酸、トレチノイン(RA)、アルファおよびベータヒドロキシ酸、局所コルチコステロイドなどを単独または組み合わせて使用します(Cutis. 2006PMID: 8217756PMID: 2528260PMID: 7061192PMID: 8002642PMID: 421493PMID: 9798345PMID: 18482315PMID: 1119822)。

KligmanとWillisによる古典的な研究では、HQ、デキサメタゾン、またはRA単独で3ヵ月間治療しても、色素沈着に実質的な改善はみられませんでした。しかし、親水性軟膏にRA0.1%、HQ5.0%、デキサメタゾン0.1%を配合して使用した場合には、満足できる結果が観察されました(PMID: 1119822)。さらに、他の実験および臨床研究では、レチノイドの使用により、局所コルチコステロイドで起こり得る表皮の萎縮を防ぐことが示されました(PMID: 8299380PMID: 8776360)。これは、表皮細胞の過形成および皮膚のコラーゲン合成を引き起こすレチノイドを使用した結果として起こるものと思われました。

2000年頃、HQ4%、RA0.05%および低力価(米国分類クラスVI)コルチコステロイドであるフルシノロンアセトニド(FA)0.01% を含む安定した固定配合剤が開発され(PMID: 12889718)、現在、トリプルマクリーム(Gal-dermaLaboratories L.P.)として市販されています。

そこで今回は、中等度から重度の顔面肝斑患者を対象に。トリプルマクリーム(TC)とHQ4%の臨床的有効性と安全性を比較したランダム化比較試験の結果をご紹介します。

試験結果から明らかになったことは?

4週目以降、TCクリームはHQクリームよりも有意に高い効果を示しました。TCクリームを使用した全患者の35%において、病変が周囲の皮膚とほぼ同等になったのに対し、HQクリームを使用した患者では5%でした(P=0.0001)。75%以上の改善は、TCクリーム使用者の73%、HQクリーム使用者の49%で達成されました(P=0.007)。

有害事象(紅斑、灼熱感、落屑)の発生率は両群で同程度でした。薬物関連有害事象による試験脱落者は認められませんでした。

コメント

肝斑治療においては、外用クリームの使用が基本です。外用クリームとしてはハイドロキノン4%やトレチノイン0.05%が使用されていますが、併用効果については国内の診療ガイドラインでは、あまり言及されておらず推奨としての記載はありません。

さて、本試験結果によれば、中等度から重度の顔面肝斑の肝斑の静的グローバル重症度評価において、外用クリーム3剤併用(ハイドロキノン4%、トレチノイン0.05%、フルシノロンアセトニド0.01%)は、 ハイドロキノン4%単独療法よりも有効であることが示されました。

これは外用クリームの作用機序の違いのに基づいていると考えられます。想定されている作用機序としては、ハイドロキノンによりメラニン合成酵素であるチロジナーゼが阻害され、さらにメラニン色素を作るメラノサイトに対して細胞毒性を示すことでシミの生成が抑制されます。ビタミンA誘導体であるトレチノインについては、皮膚細胞の分化を促進することで皮膚のターンオーバーを促進させ、いわゆる古い角質を剥がすピーリング効果を示します。つまり作用機序と得られる効果が異なることから、併用する方が、個々の単独療法よりも優れていることは予想できます。

皮膚のより深い層のシミについては、ハイドロキノンが届かないことから、よりシミを薄くしたい場合は、トレチノインを併用した方が良いと考えられます。ただし、トレチノインは使用初期に皮膚炎が起こりやすいことが報告されていますので、使用開始後1〜2週間はより注視しておいた方が良いと考えられます。皮膚炎が軽度であれば経過観察で問題ありませんが、中等度から重度の場合は使用を中止し、皮膚科を受診した方が良いと考えられます。またトレチノイン耐性と呼ばれる、トレチノインの効果が得られなくなる時期があることも報告されていますので、医師の指示に従い休薬期間を守った方が良いと考えられます。

woman s face

✅まとめ✅ 中等度から重度の顔面肝斑の治療において、外用クリーム3剤併用(ハイドロキノン4%、トレチノイン0.05%、フルシノロンアセトニド0.01%)は、 ハイドロキノン4%単独療法よりも有効だった。

根拠となった試験の抄録

背景:本研究の目的は、中等度から重度の顔面肝斑の治療において、3剤併用(TC)クリーム(ハイドロキノン4%、トレチノイン0.05%、フルオシノロンアセトニド0.01%)とハイドロキノン(HQ)クリームによる単剤治療の有効性と安全性を比較することであった。

方法:ブラジルの4病院から参加した120例の患者に、TCクリームを1日1回、またはHQクリームを1日2回、8週間塗布した。評価項目は、肝斑の静的グローバル重症度評価、肝斑の経時的改善度、局所忍容性、有害事象などであった。

結果:4週目以降、TCクリームはHQクリームよりも有意に高い効果を示した。TCクリームを使用した全患者の35%において、病変が周囲の皮膚とほぼ同等になったのに対し、HQクリームを使用した患者では5%だった(P=0.0001)。75%以上の改善は、TCクリーム使用者の73%、HQクリーム使用者の49%で達成された(P=0.007)。
有害事象(紅斑、灼熱感、落屑)の発生率は両群で同程度であった。薬物関連有害事象による試験脱落者はいなかった。

結論:TCクリームは、中等度から重度の顔面肝斑の治療において、HQクリームよりも有効であった。両製品とも安全性プロファイルは同様であった。

引用文献

A comparison of triple combination cream and hydroquinone 4% cream for the treatment of moderate to severe facial melasma
Tania Ferreira Cestari et al. PMID: 17348994 DOI: 10.1111/j.1473-2165.2007.00288.x
J Cosmet Dermatol. 2007 Mar;6(1):36-9. doi: 10.1111/j.1473-2165.2007.00288.x.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/17348994/

関連記事

【中等度から重度の肝斑患者における経口トラネキサム酸の有効性・安全性は?(単施設・小規模RCT; J Am Acad Dermatol. 2018)】

中等度から重度の肝斑患者における経口トラネキサム酸の有効性・安全性は?(単施設・小規模RCT; J Am Acad Dermatol. 2018)
肝斑治療にトラネキサム酸が用いられているが、その有効性はどの程度なのか? 肝斑は一般的な色素性疾患であり、しばしば治療が困難であるとされています。トラネキサム酸は、肝斑の有望な治療薬として注目されていますが、対照試験はほとんど存在しません。...

【肝斑治療におけるトラネキサム酸内服とハイドロキノン外用の併用療法はハイドロキノン外用よりも治療効果が高い(DB-RCT; Australas J Dermatol. 2020)】

肝斑治療におけるトラネキサム酸内服とハイドロキノン外用の併用療法はハイドロキノン外用よりも治療効果が高い(DB-RCT; Australas J Dermatol. 2020)
肝斑は一般的な色素沈着症であり、これまでの研究でトラネキサム酸の内服が一定の有効性を示しています。国内の診療ガイドラインでは「トラネキサム酸の内服および注射は肝斑の治療に有効である(グレード C1)」とされています。また同ガイドラインにおいて、「ハイドロキノン単体では,4%製剤で肝斑治療に有効であ…

【肝斑治療におけるトラネキサム酸と外用クリーム3剤(フルシノロン+ハイドロキノン+トレチノイン)併用と外用クリーム3剤の比較(RCT; J Ayub Med Coll Abbottabad. Apr-Jun 2021)】

肝斑治療におけるトラネキサム酸と外用クリーム3剤(フルシノロン+ハイドロキノン+トレチノイン)併用と外用クリーム3剤の比較(RCT; J Ayub Med Coll Abbottabad. Apr-Jun 2021)
肝斑は、日光にさらされる部位、主に顔面に生じる非常に一般的な皮膚の色素沈着性疾患であり、世界的に報告されており、すべての人種および男女に影響を及ぼしています。肝斑は、顔面中央部、顴骨部、下顎部など、さまざまなパターンが報告されています。個人の全体的な外観に影響を与えるため、患者のQOLに影響を与え…

コメント

タイトルとURLをコピーしました