お茶を飲む習慣は血管疾患のリスクを低下させるのか?

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― 約49万人を対象とした中国の大規模コホート研究(J Intern Med. 2026)

臨床疑問

習慣的にお茶を飲む人は、飲まない人と比較して血管疾患の発症リスクが低いのか?

お茶の種類、濃さ、温度、摂取量によって関連は異なるのか?

さらに、喫煙習慣や身体活動量を組み合わせて評価した場合、お茶の摂取と血管疾患の関連はどのように変化するのか?

研究の背景

お茶の摂取と血管の健康

お茶には、カテキン類やその他のポリフェノールなど、さまざまな成分が含まれている。これらの成分については、抗酸化作用や血管内皮機能などに関連する基礎研究が行われており、お茶の摂取と心血管疾患との関連も疫学研究で検討されてきた。ただし、成分の生理作用が示されていることと、実際にお茶を飲むことで血管疾患が予防できることは同義ではない。

また、お茶の摂取習慣は、食事、喫煙、運動、社会経済的背景など、ほかの生活習慣と関連している可能性がある。

そのため、お茶の摂取と血管疾患との関連を評価する際には、交絡因子を考慮する必要がある。

お茶の種類や飲み方によって関連は異なるのか?

お茶には緑茶や紅茶など複数の種類があり、製造工程や成分組成が異なる。また、同じ種類のお茶であっても、抽出濃度、飲用温度、1日の摂取量などには個人差がある。従来のお茶に関する疫学研究では、摂取の有無や摂取量に着目した研究が多い一方、複数の飲用特性を同時に検討したエビデンスは限られていた。

さらに、お茶の摂取と喫煙、身体活動などを組み合わせた場合の関連についても、十分に明らかではなかった。

そこで本研究では、中国の大規模コホートを用いて、お茶の飲用特性と血管疾患の発症との関連を検討するとともに、喫煙および身体活動との組み合わせや交互作用を評価した。

研究の概要

PECO

項目内容
P(対象)China Kadoorie Biobankに参加した485,934人
E(曝露)習慣的なお茶の摂取、お茶の種類・濃さ・温度・摂取量
C(比較)お茶の摂取習慣が異なる集団
O(評価項目)血管疾患全体および12のサブタイプの発症
追加解析喫煙、身体活動との組み合わせ・交互作用
研究デザイン前向きコホート研究

使用したデータ

本研究では、中国の大規模住民コホートであるChina Kadoorie Biobank(CKB)のデータを使用した。

解析では、多変量Cox比例ハザードモデルを用いて、血管疾患の発症に関するハザード比(HR)と95%信頼区間を推定した。また、お茶の摂取量と血管疾患リスクの用量反応関係、および喫煙・身体活動との組み合わせや交互作用についても検討した。

なお、抄録には具体的な調整変数の一覧や、12種類の血管疾患の個別の結果は示されていない。

試験結果から明らかになったことは?

習慣的なお茶の摂取と血管疾患全体

習慣的なお茶の摂取は、血管疾患全体の発症リスク低下と関連していた。

習慣的なお茶の摂取と血管疾患全体

HR 0.888は、習慣的なお茶の摂取群で血管疾患の発症ハザードが相対的に約11.2%低かったことを意味する。また、主要な心血管疾患および脳血管疾患の一部についても、逆方向の関連が認められた。

ただし、これはお茶を飲むことで血管疾患の発症確率が11.2%低下すると証明されたことを意味しない。

お茶の種類・濃さ・温度による違い

本研究では、お茶の飲み方によって血管疾患との関連が異なることが報告された。

お茶の飲用特性主な結果
紅茶緑茶より一貫したリスク低下との関連
緑茶紅茶ほど一貫した逆方向の関連は認められなかった
中程度の濃さ血管疾患リスク低下との関連
非常に熱いお茶血管疾患リスク上昇との関連

特に注目すべき結果は、非常に熱いお茶の摂取である。

非常に熱いお茶(“burning hot”)

この結果は、非常に熱いお茶を飲む習慣が、血管疾患の発症リスク上昇と関連していたことを示している。ただし、抄録には「非常に熱いお茶」の具体的な温度(℃)や参照群の詳細が示されていない。そのため、何℃以上のお茶を避けるべきかという具体的な温度基準は不明である。

また、この結果だけで、高温による組織への刺激が血管疾患の直接的な原因であると判断することもできない。

お茶の摂取量と血管疾患リスク

お茶の摂取量と血管疾患リスクの関係は、単純な直線関係ではなく、非線形の用量反応関係を示した。週単位でお茶を飲む習慣のある集団では、1日約6~8杯で推定リスクが最も低かった。

ここで注意したいのは、1日6~8杯という値は、観察データから推定されたリスク曲線の最小点であるということである。したがって、1日6~8杯のお茶を飲むことが最適な摂取量であると証明されたわけではない。また、抄録には1杯当たりの容量や、この摂取量におけるHRと95%信頼区間が示されていない。

そのため、具体的な摂取量を一般的な推奨値として提示することは適切ではない。

お茶の摂取・喫煙・身体活動の組み合わせ

本研究では、お茶の摂取習慣だけでなく、喫煙および身体活動との組み合わせも検討された。その結果、習慣的なお茶の摂取、非喫煙、高い身体活動量の3条件を満たす集団で、最も低い血管疾患リスクが観察された。

この結果は、3つの生活習慣を組み合わせた集団で、血管疾患の発症ハザードが参照群より約45.2%低かったことを示している。ただし、抄録にはこの組み合わせ解析の厳密な参照群の定義が記載されていない。

また、この結果をお茶の摂取だけによる効果と解釈することはできない。

非喫煙と身体活動は、それぞれ血管の健康に関連する重要な生活習慣であるため、複数の生活習慣を組み合わせた結果として理解する必要がある。

交互作用の解釈:お茶と運動の効果は相加的なのか?

本研究では、お茶の摂取と身体活動の間に、相加性を下回る交互作用(sub-additive interaction) が認められたと報告されている。これは重要な結果である。

相加的交互作用とは?

疫学研究では、2つの曝露が同時に存在する場合の関連を、それぞれの曝露が単独で存在する場合の関連と比較することがある。例えば、お茶の摂取と高い身体活動量が、それぞれ血管疾患のリスク低下と関連していたとする。

両方を組み合わせた場合、その関連が単独の関連から予想される大きさより強いのか、弱いのかを評価することができる。本研究で報告された「相加性を下回る交互作用」は、お茶と身体活動を組み合わせた場合の関連が、相加的な予測から外れていたことを示唆する。ただし、交互作用の解釈では、評価に用いた尺度や参照群が重要となる。

抄録には交互作用の具体的な指標や推定値が示されていないため、どの程度相加性を下回っていたのか、あるいはその機序については判断できない。また、相加性を下回る交互作用が認められたことは、お茶と運動を組み合わせることに意味がないということではない。

実際、本研究では、習慣的なお茶の摂取、非喫煙、高い身体活動量を組み合わせた集団で、最も低い血管疾患リスクが観察されている。

批判的吟味(研究の限界)

① 観察研究であり、因果関係を証明できない

本研究は前向きコホート研究であり、お茶の摂取をランダムに割り付けた研究ではない。多変量Coxモデルによって交絡因子を調整しているものの、測定されていない交絡や残余交絡の可能性が残る。例えば、お茶を習慣的に飲む人は、食生活、健康意識、医療へのアクセスなどが異なる可能性がある。

そのため、お茶を飲むこと自体が血管疾患のリスクを低下させたと結論づけることはできない。

② お茶の摂取量や飲み方の測定誤差

お茶の摂取習慣は、種類、濃さ、温度、量など、多くの要素を含む。しかし、日常的な飲用習慣を完全に測定することは難しい。例えば、1杯当たりの容量、茶葉の使用量、抽出時間などが異なれば、同じ1杯でも摂取する成分量は異なる。また、追跡期間中に飲用習慣が変化した可能性もある。

抄録からは、曝露情報の測定方法や追跡中の再評価について十分に確認できないため、測定誤差の影響には注意が必要である。

③ 「1日6~8杯」を推奨摂取量とすることはできない

本研究では、週単位でお茶を飲む集団において、1日約6~8杯で推定リスクが最も低かった。しかし、これは非線形の用量反応解析から得られた推定値である。抄録には、各摂取量におけるHRや95%信頼区間、摂取量ごとの対象者数が記載されていない。そのため、6~8杯という推定値がどの程度安定しているかを判断することは難しい。また、カフェインの摂取量なども考慮する必要がある。

したがって、血管疾患予防のために1日6~8杯のお茶を飲むよう勧める根拠としては不十分である。

④ 紅茶と緑茶の比較には交絡の可能性

本研究では、紅茶の方が緑茶より一貫した逆方向の関連を示したと報告されている。ただし、紅茶と緑茶を飲む人では、居住地域、食習慣、社会経済的背景などが異なる可能性がある。そのため、紅茶の方が緑茶より血管疾患の予防効果に優れていると断定することはできない。

また、抄録には両者の直接比較に関する効果推定値は示されていない。

⑤ 非常に熱いお茶と血管疾患の関連

非常に熱いお茶では、HR 1.160(95%信頼区間1.090~1.236)と、血管疾患リスク上昇との関連が認められた。しかし、非常に熱いお茶を飲む習慣が、ほかの生活習慣と関連している可能性がある。また、具体的な飲用温度が不明であるため、温度とリスクの定量的な関係を評価することはできない。

したがって、この結果は注意すべき疫学的知見であるものの、高温のお茶が血管疾患を直接引き起こすことを証明したものではない。

⑥ 複数の評価項目・曝露特性を検討している

本研究では、血管疾患全体に加えて12のサブタイプを評価し、お茶の種類、濃さ、温度、摂取量、喫煙、身体活動との関連を検討している。このように多くの比較を行う場合、偶然によって統計学的な関連が認められる可能性も考慮する必要がある。

抄録には、多重比較への対応や各解析の事前規定の詳細が示されていない。

そのため、個別のサブグループで認められた関連については、原著全文で解析計画や結果の一貫性を確認することが重要である。

⑦ 中国の集団から得られた結果である

本研究は中国の大規模コホートを対象としている。お茶の種類、飲み方、食習慣、喫煙率、身体活動量などは国や地域によって異なる可能性がある。

特に、日本と中国では緑茶や紅茶の飲用習慣が異なる可能性があるため、今回の結果を日本人にそのまま適用することには注意が必要である。

⑧ 絶対リスク差や治療必要数を評価できない

本研究の抄録では、HRと95%信頼区間が報告されている。しかし、曝露群別の血管疾患発症率や絶対リスク差は示されていない。したがって、お茶を習慣的に飲むことで何人の血管疾患を予防できるかという具体的な絶対効果を算出することはできない。

また、本研究は介入試験ではないため、治療必要数(NNT)を用いて因果的な予防効果を表現することも適切ではない。

臨床への応用

本研究の結果は、お茶の摂取習慣と血管疾患との関連を考えるうえで興味深い知見である。特に、お茶の摂取を単独で評価するだけでなく、喫煙や身体活動などの生活習慣と組み合わせて評価した点に意義がある。一方、現時点では、お茶の摂取量や種類を変更することで血管疾患を予防できると断定することはできない。

薬剤師が生活習慣について患者に説明する際には、以下のように整理するとよいだろう。

臨床での確認事項考え方
お茶を飲む習慣習慣的摂取と血管疾患リスク低下の関連が報告されている
お茶の種類紅茶と緑茶で関連に違いがみられたが、優劣は確定していない
お茶の温度非常に熱いお茶ではリスク上昇との関連が報告された
お茶の摂取量6~8杯/日は推定リスクの最小点であり、推奨量ではない
喫煙禁煙を優先すべき重要な生活習慣として評価する
身体活動患者の状態に応じた継続的な身体活動を支援する

特に重要なのは、お茶の摂取を、禁煙や身体活動の代替として位置付けないことである。本研究で最も低い血管疾患リスクが認められたのは、お茶の摂取だけでなく、非喫煙と高い身体活動量を組み合わせた集団であった。

したがって、生活習慣全体を評価することが重要と考えられる。

結論

中国の大規模コホート485,934人を対象とした研究では、習慣的なお茶の摂取が、血管疾患全体の発症リスク低下と関連していた。習慣的なお茶の摂取に関するHRは0.888(95%信頼区間0.857~0.921)であった。一方、非常に熱いお茶ではHR 1.160(95%信頼区間1.090~1.236)と、リスク上昇との関連が認められた。また、週単位でお茶を飲む集団では、1日約6~8杯で推定リスクが最も低い非線形の用量反応関係が報告された。さらに、習慣的なお茶の摂取、非喫煙、高い身体活動量を組み合わせた集団では、HR 0.548(95%信頼区間0.492~0.609)と、最も低い血管疾患リスクが観察された。

本研究は、お茶の摂取と血管疾患の関連を考える際に、摂取量だけでなく、お茶の種類、濃さ、温度、さらに喫煙や身体活動を含めた生活習慣全体を評価することの重要性を示している。ただし、観察研究であることから、お茶の摂取による血管疾患の予防効果が証明されたわけではない。

現時点では、お茶の摂取を増やすことを独立した血管疾患予防策として推奨するよりも、禁煙や適切な身体活動など、確立された生活習慣改善を優先することが妥当と考えられる。

また、国や地域によって、得られる効果が異なる可能性がある。再現性の確認を含めて更なる検証が求められる。

続報に期待。

person pouring beverage on clear glass

✅まとめ✅ 中国のコホート研究の結果、習慣的なお茶の摂取は血管疾患リスクの低下と関連しており、その関連性は飲用特性や摂取量によって異なっていた。茶の摂取と非喫煙、および高レベルの身体活動を組み合わせた場合、リスクが最も低かった。

根拠となった試験の抄録

背景:お茶の摂取は血管の健康と関連していることが示されているが、多面的なお茶の飲用特性およびそれらが他の生活習慣要因と併せて及ぼす影響に関するエビデンスは依然として限られている。

目的:多面的なお茶の飲用特性と血管疾患(VD)との関連性を検討し、喫煙および身体活動(PA)との併合的な関連性および相互作用を評価すること。

方法:中国カドゥーリー・バイオバンク(CKB)の参加者485,934名を対象とした。多変量Coxモデルを用いて、血管疾患(VD)全体および12のサブタイプについて、ハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)を推定した。また、茶摂取量と喫煙および身体活動(PA)との用量反応関係、ならびにそれらの共同関連および相互作用を評価した。

結果:平均9.05年の追跡期間中に、14,863例の新規VD症例が発生した。習慣的な茶の摂取は、総VDリスクの低下(HR = 0.888、95%CI 0.857-0.921)およびいくつかの主要な心血管・脳血管アウトカムのリスク低下と関連していた。この関連性は茶の飲用特性によって異なった。紅茶は緑茶よりも一貫した逆相関を示し、中程度の濃さのお茶はリスクの低下と関連したのに対し、「熱々」のお茶はVDリスクの上昇と関連していた(HR = 1.160、95%CI 1.090-1.236)。お茶の摂取量には非線形の用量反応関係が認められ、週に1回以上飲む人において、1日あたり約6~8杯の摂取で推定リスクが最も低かった。習慣的なお茶の摂取、非喫煙、および高レベルの身体活動(PA)の組み合わせは、VDリスクが最も低いこと(HR = 0.548、95%CI 0.492-0.609)と関連しており、お茶と身体活動の相互作用には亜加法的傾向が認められた。

結論:習慣的なお茶の摂取は血管疾患リスクの低下と関連しており、その関連性は飲用特性や摂取量によって異なっていた。茶の摂取と非喫煙、および高レベルの身体活動を組み合わせた場合、リスクが最も低かった。これらの知見は、血管の健康に関する研究において、多面的な茶の飲用パターンや生活習慣パターンを考慮することの重要性を裏付けている。

キーワード:身体活動;喫煙;茶の摂取;血管疾患

引用文献

Habitual tea consumption is associated with lower cardiovascular disease risk
Zichen Ye et al. PMID: 42902821 DOI: 10.1111/joim.70172
J Intern Med. 2026 Oct 21. doi: 10.1111/joim.70172.Online ahead of print.
― 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/42902821/

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