― 感情抑制と死亡リスクについて検証した前向きコホート研究(J Psychosom Res. 2013)
臨床疑問
感情抑制(emotion suppression)は、全死亡・がん死亡・心血管死亡のリスクと関連するのか?
研究の背景
感情の抑制は心理的ストレスや身体健康に影響する可能性が指摘されてきたが、死亡リスクとの関連については一貫した結果が得られていなかった。特に長期予後への影響を検証した前向き研究は限られている。
PICO
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| P(対象) | 米国一般集団(n=729) |
| I(曝露) | 感情抑制(スコア高 vs 低) |
| C(比較) | 低抑制群(25パーセンタイル) |
| O(アウトカム) | 全死亡、がん死亡、心血管死亡 |
試験デザイン
- 研究タイプ:前向きコホート研究
- データ:General Social Survey–National Death Index(GSS-NDI)
- ベースライン:1996年
- 追跡期間:12年間(1996–2008)
- 死亡数:111例
- 心血管死亡:37例
- がん死亡:34例
- 解析:Cox比例ハザードモデル
- 調整因子:年齢、性別、教育、人種
試験結果(抄録ベース)

全死亡
| 比較 | ハザード比 HR(95%CI) |
|---|---|
| 高抑制 vs 低抑制 | HR 1.35(1.00–1.82) |
👉 有意差あり(P=0.049)
がん死亡
| 比較 | HR(95%CI) |
|---|---|
| 高抑制 vs 低抑制 | HR 1.70(1.01–2.88) |
👉 有意差あり(P=0.049)
心血管死亡
| 比較 | HR(95%CI) |
|---|---|
| 高抑制 vs 低抑制 | HR 1.47(0.87–2.47) |
👉 有意差なし(P=0.148)
試験の限界(批判的吟味)
- コホート研究の中では、比較的サンプルサイズが小さい(n=729、死亡111例)
- 観察研究であり因果関係は不明
- 感情抑制は自己報告尺度で測定 ⇒バイアスが入り込みやすい
- 交絡因子(生活習慣、精神疾患など)の影響残存の可能性
- 心血管死亡は有意差なしで解釈に注意
- 単一時点での評価であり変化を追跡していない
コメント(結果の解釈)
本研究では、感情抑制が全死亡およびがん死亡のリスク増加と関連することが示された。特にがん死亡との関連が示された点は興味深いが、心血管死亡では有意差がなく、結果の一貫性には限界がある。
まとめ
- 感情抑制が高いと全死亡リスク増加
- がん死亡リスクも上昇
- 心血管死亡は有意差なし
- 心理要因と予後の関連を示唆
非常に興味深い研究結果ではありますが、自己申告のスケール評価であるため思い出しバイアスを排除できません。
また人種によっては、抑制の程度などの感情コントロールに差が生じると考えられます。国や地域などの様々な背景を踏まえた解析結果が気にかかるところです。
再現性の確認を含めて更なる検証が求められます。
続報に期待。

✅まとめ✅ 12年年間のコホート研究の結果、感情を抑制することは、がんによる死亡を含む早期死亡のリスクを高める可能性が示唆された。
根拠となった試験の抄録
目的: 感情の抑制は健康に影響を与えると考えられてきたが、これまでの実証研究では結果がまちまちであった。本研究では、米国を代表するサンプルを用いて、12年間の追跡調査期間における感情抑制と全死因死亡率、心血管疾患死亡率、がん死亡率との関連性を検討した。
方法: 2008年の一般社会調査-全国死亡指数(GSS-NDI)コホートを使用しました。このコホートには、1996年に729人に実施された感情抑制尺度が含まれています。1996年から2008年までの111人の死亡(心血管疾患による死亡37人、癌による死亡34人)について、年齢、性別、教育、少数民族/人種で調整したCox比例ハザードモデルを使用して、前向き死亡率追跡調査を行いました。
結果: 感情抑制スコアの75パーセンタイルと25パーセンタイルを比較すると、全死因死亡率のハザード比(HR)は1.35(95%信頼区間[95% CI]=1.00、1.82、P=.049)でした。がんおよび心血管疾患による死亡率のHRは、それぞれ1.70(95% CI=1.01、2.88、P=.049)および1.47(95% CI=.87、2.47、P=.148)でした。
結論: 感情抑制は、がんによる死亡を含む早期死亡のリスクを高める可能性がある。このリスクの生物心理社会的なメカニズム、および感情抑制と様々な死亡形態との関連性の性質をより深く理解するためには、さらなる研究が必要である。
キーワード: 全死因死亡率、がん死亡率、心血管疾患死亡率、感情、一般社会調査、抑制
引用文献
Emotion suppression and mortality risk over a 12-year follow-up
Benjamin P Chapman et al. PMID: 24119947 PMCID: PMC3939772 DOI: 10.1016/j.jpsychores.2013.07.014
J Psychosom Res. 2013 Oct;75(4):381-5. doi: 10.1016/j.jpsychores.2013.07.014. Epub 2013 Aug 6.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/24119947/

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