新規アルドステロン合成酵素阻害薬バクスドロスタットは治療抵抗性高血圧を改善するのか?

stethoscope near decorative coil tie in heart shape on pink surface 02_循環器系
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― Bax24試験(国際第3相ランダム化比較試験)


臨床疑問(Clinical Question)

3剤以上の降圧薬を使用しても血圧がコントロールできない治療抵抗性高血圧患者において、アルドステロン合成酵素阻害薬バクスドロスタットは24時間血圧を低下させるのか?


研究の背景

治療抵抗性高血圧では、アルドステロン分泌の調節異常が重要な病態要因と考えられている。

従来はスピロノラクトン、エプレレノン、フィネレノンなどのミネラルコルチコイド受容体拮抗薬が使用されるが、アルドステロン自体の産生を抑制する治療戦略は十分確立されていない。

バクスドロスタットはアルドステロン合成酵素(CYP11B2)を選択的に阻害する薬剤であり、先行研究では診察室血圧の低下が報告されている。

本研究(Bax24試験)は24時間自由行動下血圧(ABPM)への影響を検証するために実施された。


PICO

P:3剤以上の降圧薬(利尿薬含む)を使用しても収縮期血圧≥140mmHgの治療抵抗性高血圧患者 217例

I:バクスドロスタット 2mg/日 108例

C:プラセボ 109例

O:24時間自由行動下収縮期血圧の変化(ベースラインから12週間後)


試験デザイン

項目内容
研究タイプ第3相ランダム化二重盲検プラセボ対照試験
試験名Bax24 trial
試験施設22カ国79施設
対象治療抵抗性高血圧
ランダム化1:1
介入期間12週間
主要評価項目24時間SBP変化
登録患者217例

患者背景

項目内容
患者数217例
男性65%
女性35%
中央値年齢60歳
平均併用降圧薬数3.75剤
ベースライン24h SBP約141mmHg

試験結果から明らかになったことは?

主要アウトカム

指標バクスドロスタット
(95%CI)
プラセボ
(95%CI)
24h SBP変化−16.6mmHg
(−18.8 〜 −14.3)
−2.6mmHg
(−4.7 〜 −0.4)
−14.0mmHg
(−17.2 〜 −10.8)
p<0.0001

副次アウトカム

指標バクスドロスタットプラセボp値
夜間SBP変化−16.0mmHg−2.1mmHg<0.0001
日中SBP変化−16.8mmHg−2.7mmHg<0.0001
診察室SBP変化−14.9mmHg−4.7mmHg<0.0001
24h SBP <130mmHg達成71%17%<0.0001

DBP変化

指標治療差
24h DBP−6.8mmHg
夜間DBP−6.9mmHg
日中DBP−6.7mmHg

安全性

有害事象バクスドロスタットプラセボ
有害事象52%37%
重篤有害事象1%1%
高カリウム血症
(>6mmol/L, mEq/L)
3%0%
eGFR 30%以上低下24%5%

試験の限界(批判的吟味)

本研究にはいくつかの制限がある。

第一に、試験期間は12週間と短期間であり、長期的な心血管イベントや腎機能への影響は評価されていない。

第二に、参加者の構成として女性および黒人患者の割合が実臨床より少ない点が挙げられる。そのため、結果の一般化には注意が必要である。

第三に、主要解析はベースラインと12週の両方で有効なABPM測定が得られた患者のみを対象としており、測定不能例は除外されている。ただし、欠測値を補完した感度解析では同様の結果が得られている。

第四に、背景降圧薬の服薬遵守は血中濃度測定ではなく錠剤カウントで評価されており、完全な客観評価ではない。

最後に、本研究はスポンサー企業(AstraZeneca)が試験設計、データ解析、論文作成に関与している点にも注意が必要である。


コメント(臨床的解釈)

本試験は、

  • 真の治療抵抗性高血圧
  • ABPMによる厳密な血圧評価
  • 国際多施設RCT

という点で重要な研究である。

特に、24時間SBP −14mmHgというプラセボ補正効果は大きく、夜間血圧も同程度低下した点は臨床的に注目される。

一方で、高カリウム血症、eGFR低下が認められており、ミネラルコルチコイド系薬剤と同様に電解質・腎機能モニタリングが必要と考えられる。

また、血圧低下が心血管イベント減少につながるかは未検証であり、長期アウトカム試験が必要である。


まとめ

Bax24試験では、アルドステロン合成酵素阻害薬バクスドロスタットが治療抵抗性高血圧患者の24時間血圧を有意に低下させた。

ただし、高カリウム血症、腎機能低下、長期アウトカム未評価などの課題があり、今後の長期試験が必要とされる。

SGLT-2阻害薬においてもInitial dip(初期のeGFR低下)がみられ、この期間は2週間から2か月とされています。新薬候補であるバクスドロスタットも同様であるのかは不明ですが、腎機能(eGFR)低下や高K血症が長期的に認められるのか関心が高いところです。

再現性の確認を含めて、より長期的な試験結果の公表が待たれます。

続報に期待。

finger pointing on digital blood pressure monitor

✅まとめ✅ 二重盲検ランダム化比較試験の結果、選択的アルドステロン合成酵素阻害薬であるバクドロスタットは、難治性高血圧患者においてプラセボと比較して24時間歩行時収縮期血圧を有意に低下させた。

根拠となった試験の抄録

背景: アルドステロン調節異常は、難治性高血圧の発症機序において重要な要因である。本研究では、選択的アルドステロン合成酵素阻害薬であるバクドロスタットが、難治性高血圧患者の24時間血圧に及ぼす影響を評価することを目的とした。

方法: Bax24国際第3相無作為化二重盲検プラセボ対照試験では、22か国の79の臨床施設(一次、二次、三次医療センター、研究センターを含む)から、利尿薬を含む3種類以上の降圧薬を服用しているにもかかわらず、座位収縮期血圧(SBP)が140mmHg以上170mmHg未満の成人(18歳以上)を募集した。2週間のプラセボ導入期間の後、24時間歩行時SBPが130 mm Hg以上の患者は、背景療法(ベースライン歩行時SBPが140mmHg未満または140mmHg以上で層別化)に加えて、1日1回12週間、バクスドロスタット2mgまたはプラセボを経口投与される群に1:1で無作為に割り付けられた。治験責任医師、患者、および治験スタッフは、治療割り付けについて盲検化されていた。主要評価項目は、ベースラインから12週目までの24時間歩行時収縮期血圧の変化であり、ベースラインおよび12週目に有効な歩行時収縮期血圧測定値が得られ、治験薬を少なくとも1回投与された患者を対象に、共分散分析によって評価した。欠損値または無効な歩行時収縮期血圧測定値は補完しなかった。安全性解析には、治験薬を少なくとも1回投与されたすべての患者が含まれた。本試験はClinicalTrials.gov(NCT06168409)に登録されており、完了している。

結果: 2024年3月1日から2025年4月16日の間に、854人の患者がスクリーニングされ、636人が除外され(プラセボ導入前に437人、プラセボ導入中に199人)、217人がバクスドロスタット(n=108)またはプラセボ(n=109)にランダムに割り付けられ、投与を受けた。患者の内訳は、男性140人(65%)、女性77人(35%)、白人170人(78%)であった。年齢の中央値は60.0歳(四分位範囲 51.0~68.0歳)であった。 12週目において、最小二乗平均24時間歩行収縮期血圧のベースラインからの変化は、バクスドロスタット群(n=89)で-16.6mmHg(95%CI -18.8 ~ -14.3)、プラセボ群(n=95)で-2.6mmHg(-4.7 ~ -0.4)でした。推定プラセボ補正差は-14.0mmHg(-17.2 ~ -10.8、p<0.0001)でした。有害事象は、バクスドロスタット群の108例中56例(52%)、プラセボ群の109例中40例(37%)に発生しました。カリウム値が6 mmol/Lを超えることが確認されたのは、バクスドロスタット投与群の108例中3例(3%)で、プラセボ投与群では0例でした。

解釈: バクスドロスタットは、難治性高血圧患者においてプラセボと比較して24時間歩行時収縮期血圧を有意に低下させ、アルドステロン合成酵素阻害が難治性高血圧の治療に有効である可能性を示すさらなる証拠となった。

資金提供: アストラゼネカ

引用文献

Effect of baxdrostat on ambulatory blood pressure in patients with resistant hypertension (Bax24): a phase 3, randomised, double-blind, placebo-controlled trial
Michel Azizi et al. PMID: 41794437 DOI: 10.1016/S0140-6736(25)02549-8
Lancet. 2026 Mar 7;407(10532):988-999. doi: 10.1016/S0140-6736(25)02549-8.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41794437/

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