― レセプトデータベース解析(2014–2023)
臨床疑問(Clinical Question)
日本において帯状疱疹(HZ)の発症率や帯状疱疹後神経痛(PHN)はどの程度発生しており、年齢によってリスクはどのように変化するのか?
研究の背景
帯状疱疹(Herpes zoster)は水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)の再活性化により発症する疾患であり、高齢者では帯状疱疹後神経痛(PHN)などの合併症が問題となる。
近年、帯状疱疹ワクチンの普及が進んでいるが、
- 日本における発症率
- PHN発生率
- 年齢によるリスク差
などの疫学データは十分整理されていない。
そこで本研究は、日本のレセプトデータベースを用いて、
- 帯状疱疹発症率
- PHN発症率
- 入院リスク
- 年齢による変化
を解析した。
PICO
P:日本の医療データベースに登録された患者
I:帯状疱疹発症
C:年齢層別比較
O:帯状疱疹発症率、PHN発症率、入院リスク
試験デザイン
- 研究タイプ:レセプトデータベース解析
- 対象期間:2014年4月〜2023年3月
- 評価項目
- 帯状疱疹発症率
- PHN発症率
- 入院リスク
- 補助解析:水痘発症率(全国サーベイランス)
試験結果から明らかになったことは?
発症率
| 指標 | 発症率 |
|---|---|
| 帯状疱疹 | 9.58 / 1,000人年 |
| PHN | 1.00 / 1,000人年 |
発症率の年次変化
| 疾患 | 年間変化率 |
|---|---|
| 帯状疱疹 | 1.16%増加(95%CI 0.52–2.00) |
| PHN | 0.99%増加(95%CI 0.09–3.04) |
年齢別発症率
帯状疱疹
| 年齢 | 発症率(/1000人年) |
|---|---|
| 40–49歳 | 7.17 |
| 50–59歳 | 9.73 |
| 60–69歳 | 13.96 |
| 70–79歳 | 17.99 |
| ≥80歳 | 18.81 |
PHN
| 年齢 | 発症率(/1000人年) |
|---|---|
| 40–49歳 | 0.37 |
| 50–59歳 | 0.78 |
| 60–69歳 | 1.78 |
| 70–79歳 | 2.97 |
| ≥80歳 | 2.98 |
帯状疱疹後の転帰
| 指標 | 発生率 |
|---|---|
| 入院 | 4.8% |
| PHN | 10.4% |
70歳以上では、50–59歳と比較して入院およびPHNのリスクが約2〜3倍であった。
季節性
帯状疱疹発症は夏に高い傾向がみられた。また、水痘発症率との関連はほとんど認められなかった。
試験の限界(批判的吟味)
本研究にはいくつかの制約がある。
まず、レセプトデータを用いた解析であるため、診断は保険請求情報に基づいており、臨床診断の正確性を完全に確認することはできない。
次に、PHNの診断もデータベース定義に依存するため、症状の重症度や臨床的評価を詳細に把握することはできない。
さらに、レセプトデータでは以下の情報が限定される可能性がある。
- ワクチン接種歴
- 生活習慣
- 免疫状態
- 基礎疾患の詳細
これらは帯状疱疹発症リスクに影響する可能性がある。
また、本研究は観察研究であるため、発症率の増加が
- 高齢化
- 医療受診行動
- 診断意識の変化
などの影響を受けている可能性を完全には排除できない。
コメント(臨床的解釈)
本研究は、日本の大規模レセプトデータを用いて帯状疱疹の疫学を整理した研究である。
重要なポイントは次の3点である。
①帯状疱疹発症率は年齢とともに増加する
特に60歳以降で発症率が大きく上昇している。
②PHNの年齢依存性はさらに強い
PHNは高齢者ほど発症率が高く、70歳以上で顕著に増加している。
③帯状疱疹発症率は年々増加傾向
年間約1%の増加が観察されている。
これらの結果は、帯状疱疹ワクチンの接種戦略を検討するうえで重要な疫学情報となる可能性がある。
まとめ
日本のレセプトデータ解析では、
- 帯状疱疹発症率:9.58 / 1,000人年
- PHN発症率:1.00 / 1,000人年
であり、発症率は年々増加していた。
また、年齢が上がるほど発症率とPHNリスクが高く、70歳以上では入院やPHNのリスクが約2〜3倍であった。
これらの結果は、帯状疱疹およびPHNの予防戦略を検討するうえで重要な疫学的情報を提供している。
引き続き追っていきたいテーマです。続報に期待。

✅まとめ✅ 日本のレセプトデータ解析の結果、帯状疱疹や帯状疱疹後神経痛の発症率は年々増加していた。また、年齢が上がるほど発症率とPHNリスクが高く、70歳以上では入院やPHNのリスクが約2〜3倍であった。
根拠となった試験の抄録
背景: 帯状疱疹(HZ)は世界的な公衆衛生上の懸念事項です。帯状疱疹ワクチン接種は帯状疱疹とその合併症の両方を軽減することが期待されていますが、ワクチン接種戦略の指針となる包括的な疫学データは不足しています。
方法: 2014年4月から2023年3月までの帯状疱疹および帯状疱疹後神経痛(PHN)の標準化発症率を調べるため、日本の保険請求データベースの大規模な分析を実施した。また、帯状疱疹後の入院およびPHNのリスクを評価し、国のサーベイランスデータを用いて水痘発症率を分析した。
結果: 全体の標準化罹患率は、HZとPHNでそれぞれ1,000人年あたり9.58と1.00であった。2014年から2023年にかけてこれらの罹患率は増加し、推定年率変化率はHZで1.16%(95%信頼区間0.52~2.00)、PHNで0.99%(0.09~3.04)であった。HZの罹患率は年齢とともに着実に増加し、40~49歳で7.17、50~59歳で9.73、60~69歳で13.96、70~79歳で17.99、80歳以上で18.81であった。加齢の影響はPHNにおいてより顕著で、それぞれ0.37、0.78、1.78、2.97、2.98でした。帯状疱疹後の入院およびPHNの全体的なリスクはそれぞれ4.8%および10.4%であり、70歳以上の高齢者では50~59歳の高齢者よりもリスク比が約2~3倍高くなりました。帯状疱疹の発生率は夏季に高く、水痘の発生率との関連はほとんどありませんでした。
結論: 私たちの研究結果は、帯状疱疹とその合併症を予防するための戦略を策定する上で個人や政策立案者に役立つ証拠を提供します。
補足情報: オンライン版には10.1186/s12879-026-12534-0 で参照できる補足資料が含まれている。
キーワード: クレームデータベース、疫学、帯状疱疹、帯状疱疹後神経痛、水痘帯状疱疹ウイルス
引用文献
Epidemiology of herpes zoster and postherpetic neuralgia in Japan: analysis of a large-scale claims database
Maho Adachi-Katayama et al. PMID: 41519725 PMCID: PMC12882626 DOI: 10.1186/s12879-026-12534-0
BMC Infect Dis. 2026 Jan 10;26(1):287. doi: 10.1186/s12879-026-12534-0.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41519725/

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