― 高SPF日焼け止めの長期使用が血中ビタミンDに与える影響
日焼け止めの有益性は?
紫外線対策として推奨されている日焼け止め(サンスクリーン)。
一方で、「日焼け止めを使うとビタミンDが不足するのでは?」という疑問も以前から指摘されてきました。
これまでの研究の多くは実験室レベルや短期間の観察にとどまっており、実生活で日焼け止めを使用した場合に血中ビタミンDがどう変化するかについては、明確なエビデンスがありませんでした。
今回ご紹介するのは、
👉 SPF50+の日焼け止めを1年間使用した場合の影響を検証したランダム化比較試験(RCT)
です。
試験結果から明らかになったことは?
◆研究の概要
■ 研究デザイン
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 研究タイプ | ランダム化比較試験(RCT) |
| 対象 | オーストラリア在住 18~70歳 |
| 除外条件 | 日常的な日焼け止め使用者、ビタミンDサプリ使用者 |
| 介入 | SPF50+日焼け止めをUV指数≧3の日に使用 |
| 対照 | 日焼け止め使用は自由(通常行動) |
| 期間 | 約1年間 |
| 主要評価項目 | 血清25(OH)D濃度の変化 |
| 登録数 | 639人(解析対象628人) |
| 試験登録番号 | ACTRN12621001752853 |
◆主要結果
■ 血中ビタミンD濃度の変化
| 項目 | 介入群(SPF50+) | 対照群 |
|---|---|---|
| ベースライン | 63.5 nmol/L | 62.1 nmol/L |
| 1年後の変化量 | +1.6 nmol/L | +6.8 nmol/L |
| 群間差 | −5.2 nmol/L | |
| 95%CI | −7.2 ~ −3.2 | |
| 有意差 | あり |
➡ 日焼け止めを日常的に使用した群では、血中ビタミンDの上昇が有意に小さかった
■ ビタミンD欠乏(25(OH)D < 50 nmol/L)の割合
| 群 | 欠乏率 |
|---|---|
| SPF50+使用群 | 45.7% |
| 対照群 | 36.9% |
| リスク比 | 1.33(95%CI 1.14–1.55) |
➡ 日焼け止め使用群でビタミンD欠乏が有意に多い
試験結果から得られた重要なポイント
✔ 本研究から分かること
- 高SPFの日焼け止めを日常的に使用すると
👉 血中ビタミンD濃度は低下しやすい - 特に
- 日照時間が短い地域
- 屋外活動が少ない人
- 高齢者
では影響を受けやすい可能性
試験の限界
本研究は質の高いRCTですが、以下の限界点があります。
① 完全な「盲検化」は不可能
- 日焼け止めの使用有無は参加者自身が認識している
- 行動変容(外出回避など)の影響を完全には排除できない
② 実臨床アウトカムは未評価
- 骨折リスク
- 骨密度
- 免疫機能への影響
➡ 血中ビタミンD値のみの評価
③ 日本人データではない
- オーストラリア人が対象
- 紫外線量・皮膚タイプ・生活習慣が日本と異なる
④ サプリ併用は除外
- 実臨床ではサプリ併用が一般的
- 現実の使用状況とはやや乖離あり
臨床的にどう考えるべきか?
✔ 日焼け止めは「やめる」必要はない
皮膚がん・光老化予防の観点から
👉 日焼け止めの使用は依然として重要
✔ ただし「ビタミンD対策」は別途必要
特に以下の人では注意が必要:
- 高齢者
- 屋内生活が多い
- 冬季
- 骨粗鬆症リスクが高い
- 日焼け止めを毎日使用している
➡ 食事・サプリによる補充を検討すべき
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◆まとめ
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| 研究デザイン | RCT(約630人、1年間) |
| 主結果 | 日焼け止め使用で血中ビタミンD低下 |
| 欠乏リスク | 約1.3倍に増加 |
| 安全性 | 出血・重大副作用なし |
| 臨床的意義 | 日焼け止め+ビタミンD管理が重要 |

✅まとめ✅ 非盲検ランダム化比較試験の結果、高SPFの日焼け止めを日常的に塗布すると、日焼け止めを任意に使用する場合よりも25-ヒドロキシビタミンD濃度が低くなることが明らかとなった。
根拠となった試験の抄録
背景: 実験研究において、日焼け止めはビタミンDの産生を減少させると報告されています。これが現実世界にも当てはまるかどうかは不明です。
目的: 日焼け止め指数(SPF)の高い日焼け止めを1年間定期的に塗布すると、血清中の25-ヒドロキシビタミンD [25(OH)D]濃度が低下するかどうかを判断する。
方法: 日常的に日焼け止めを使用していない、またはビタミンDサプリメントを摂取していない18~70歳のオーストラリア人参加者を対象に、集団ベースのオープンラベルランダム化比較試験を実施した。参加者は、層別コンピューター生成の順列ブロックランダム化法を使用して、紫外線(UV)指数が3以上になると予測された日にSPF 50以上の日焼け止めを日常的に塗布する群(介入群)と、任意の日焼け止めを使用する群(対照群)に、約1年間ランダムに割り付けられた(1:1)。ベースライン(2022年冬/春)および2023年夏と冬の終わりに25(OH)D濃度を測定した。ベースライン後に濃度が測定されなかった参加者(n = 11)は解析から除外した。主要評価項目は、ベースラインからの25(OH)D濃度の変化であった。混合効果モデルとポアソン回帰を用いてデータを解析した。ベースラインの25(OH)D濃度、住宅地の紫外線(UVR)照射範囲、皮膚曝露量(屋外滞在時間と衣服の使用から算出)、および個人UVR曝露量(UVR照射範囲と皮膚曝露量を組み合わせて算出)で層別化した。サンプルおよびデータ解析はランダム化群を盲検化して実施した。本試験は、オーストラリア・ニュージーランド臨床試験登録簿(ACTRN12621001752853)に登録された。
結果: 2022年6月30日から11月29日までの間に、639名の参加者(介入群319名、対照群320名)を無作為に割り付けた。合計628名が解析対象となった(介入群312名、対照群316名、年齢中央値52歳(四分位範囲40~64歳)。女性415名(66.1%)、男性210名(33.4%)、男性3名(0.5%)が女性以外の性別であった。ベースラインの25(OH)D濃度の平均(SD)は均衡していた(介入群63.5(21.9)nmol/L、対照群62.1(22.8)nmol/L)。ベースラインからの調整平均差は、介入群で1.6 nmol L-1、対照群で6.8 nmol L-1であった(群間治療効果 -5.2 nmol L-1、95%信頼区間(CI)-7.2~-3.2)。治療効果はほぼすべてのサブグループで一貫していた。ビタミンD欠乏症(最終サンプル)は、介入群(n = 139/304; 45.7%)の方が対照群(n = 115/312; 36.9%)よりも高かった(有病率比1.33、95%信頼区間1.14~1.55)。
結論: 高SPFの日焼け止めを日常的に塗布すると、日焼け止めを任意に使用する場合よりも25(OH)D濃度が低くなります。日焼け止めを日常的に使用する場合は、ビタミンDサプリメントの摂取が必要になる場合があります。
引用文献
Effect of daily sunscreen application on vitamin D: findings from the open-label randomized controlled Sun-D Trial
Vu Tran et al. PMID: 40927943 DOI: 10.1093/bjd/ljaf310
Br J Dermatol. 2025 Nov 18;193(6):1128-1137. doi: 10.1093/bjd/ljaf310.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40927943/

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