1型糖尿病に対する同種異系幹細胞由来膵島細胞治療「ジミスレセル(zimislecel)」の有効性評価(第1, 2相試験; VX-880-101 FORWARD試験; N Engl J Med. 2025)

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ジミスレセル(zimislecel):同種異系幹細胞由来の膵島細胞治療

1型糖尿病は自己免疫反応により膵島β細胞が破壊され、インスリン分泌が失われる疾患です。インスリン注射や持続皮下インスリン注入が標準治療ですが、依然として重度低血糖や血糖コントロール困難が課題となっています。

膵島移植は有効な選択肢ですが、ドナー不足や拒絶反応が問題です。今回報告された「ジミスレセル(zimislecel)」は、同種異系幹細胞由来の膵島細胞治療であり、新しい治療選択肢として注目されています。


試験結果から明らかになったことは?

◆研究の概要

  • 試験デザイン:第1–2相試験
  • 対象:1型糖尿病患者
  • 介入
    • Part A:半量投与(0.4×10⁹細胞)、必要に応じて2回目投与可能
    • Part B・C:全量投与(0.8×10⁹細胞)
  • 免疫抑制:ステロイドを含まない免疫抑制療法を併用
  • 主要評価項目
    • Part A:安全性
    • Part C:重度低血糖イベントからの解放+HbA1c <7%または1%以上低下
  • 副次評価項目:インスリン不要率、安全性、膵島機能(Cペプチド検出)

◆主な結果(12か月フォローアップ)

評価項目結果
Cペプチド検出(膵島機能の回復)14人全員で確認
重度低血糖イベント12/12人で回避(Part B・C)
HbA1c<7%達成12/12人(100%)
インスリン不要率10/12人(83%)が365日時点でインスリン独立
有害事象好中球減少が3例で発生
死亡例2例(クリプトコッカス髄膜炎、既往認知症の進行)

◆結果の解釈

  • ジミスレセルの投与により全員で膵島機能の回復が確認され、83%がインスリン不要となりました。
  • 血糖コントロールも改善し、低血糖リスクの回避にも寄与しました。
  • 一方で、免疫抑制に伴う感染リスク(真菌感染など)や、基礎疾患との関連が疑われる死亡例も報告され、安全性評価は今後の課題です。

◆研究の限界

  • 小規模試験(14例)であり、長期的な有効性・安全性は未解明。
  • 死亡例2件の因果関係については慎重な解釈が必要。
  • ステロイドフリー免疫抑制療法の適応範囲や副作用管理も検討課題。

◆まとめ

今回の初期試験は、幹細胞由来の膵島細胞治療が1型糖尿病患者においてインスリン独立を実現し得ることを示しました。
ただし、症例数は限られており、安全性や持続性の確認にはさらなる大規模臨床試験が不可欠です。

根本的な治療方法であり、1型糖尿病患者にとってる非常に希望が持てる結果です。より長期的な安全性評価が求められます。

続報に期待。

a glucometer and medication lying among scattered sweets

✅まとめ✅ 第1, 2相試験の結果、ジミスレセルは生理的な膵島機能を回復できることが明らかとなった。再現性の確認を含めて大規模試験の実施が待たれる。

根拠となった試験の抄録

背景: ジミスレセルは、同種幹細胞由来膵島細胞療法です。1型糖尿病患者におけるジミスレセルの安全性と有効性に関するデータが必要です。

方法: 1型糖尿病患者を対象に、ジミスレセルの第1-2相試験を実施した。パートAでは、参加者は門脈内にジミスレセルの半量(0.4×109個)を単回注入し、2年以内に残りの半量を追加投与するオプションを有した。パートBおよびCでは、参加者はジミスレセルの全量(0.8×109個)を単回注入した。参加者全員は、グルココルチコイドを含まない免疫抑制療法も受けた。
パートAの主要評価項目は安全性であった。パートCの主要評価項目は、90日目から365日目までの期間に重度の低血糖イベントが発生しないこと、180日目から365日目までの1つ以上の時点でグリコヘモグロビン値が7%未満であること、またはグリコヘモグロビン値がベースラインから1パーセントポイント以上低下していることでした。パートCの副次的評価項目は、180日目から365日目までの安全性およびインスリン非依存度でした。パートCの主要評価項目および副次的評価項目の評価には、パートBまたはパートCでジミスレセルの全用量を単回注入で投与された参加者が参加しました。4時間の混合食負荷試験中に血清Cペプチドを検出することにより、移植および膵島機能を評価しました。すべての分析は中間結果であり、事前に規定されていませんでした。

結果: 合計14名の参加者 (パートAで2名、パートBおよびCで12名) が12か月以上の追跡調査を完了し、解析に含められました。ベースラインでは14名全員においてCペプチドは検出されませんでした。ジミスレセル注入後、参加者全員にCペプチドの検出により証明されるように、移植および膵島機能が認められました。最もよく見られた重篤な有害事象は好中球減少症で、3名の参加者に発生しました。2名の死亡が発生し、1名はクリプトコッカス髄膜炎によるもので、もう1名は既存の神経認知障害の進行による激越を伴う重度の認知症によるものでした。パートBおよびCの12名の参加者全員に重篤な低血糖イベントはなく、グリコヘモグロビン値は7%未満でした。これらの参加者は70%を超える時間を目標血糖範囲 (70~180mg/dL) で過ごしました。参加者12人のうち10人 (83%) はインスリン非依存であり、365日目には外因性インスリンを使用していませんでした。

結論: 1型糖尿病患者を対象としたこの小規模な短期研究の結果は、ジミスレセルが生理的な膵島機能を回復できるという仮説を支持しており、さらなる臨床研究が必要であることを示しています。

資金提供:Vertex Pharmaceuticals社

試験登録番号:ClinicalTrials.gov番号 NCT04786262

引用文献

Stem Cell-Derived, Fully Differentiated Islets for Type 1 Diabetes
Trevor W Reichman et al. PMID: 40544428 DOI: 10.1056/NEJMoa2506549
N Engl J Med. 2025 Sep 4;393(9):858-868. doi: 10.1056/NEJMoa2506549. Epub 2025 Jun 20.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40544428/

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