レバミピドの効果はどのくらいなのか?
NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)は、鎮痛や抗炎症の目的で世界的に広く使用されています。しかし、長期使用で問題となるのが ”胃腸粘膜障害” です。
従来はPPI(プロトンポンプ阻害薬)が予防薬として推奨されてきましたが、長期使用に伴う副作用や制約も指摘されています。
そこで注目されているのが、粘膜保護作用をもつレバミピドです。本研究は、レバミピドの有効性を系統的に評価したメタ解析です。
試験結果から明らかになったことは?
◆方法
- 試験デザイン:システマティックレビュー&メタ解析
- 対象:NSAIDによる胃腸粘膜障害を予防するランダム化比較試験(RCT) 13件
- 比較:レバミピド vs. プラセボまたはPPI
- アウトカム:NSAID誘発性胃腸粘膜損傷(mucosal breaks)の発生率
- 解析方法:リスク比(RR)と95%信頼区間(CI)の算出。異質性はI²統計量で評価。
◆主な結果(アウトカム別)
比較 | リスク比 RR (95%CI) | P値 | 解釈 |
---|---|---|---|
レバミピド vs. プラセボ | 0.55(0.31–0.99) | P≤0.00001 | プラセボより有意に発症を減少 |
レバミピド vs. PPI | 1.00(0.51–1.95) | P=1.00 | PPIと同等の効果 |
レバミピド+PPI vs. PPI単独 | 0.72(0.43–1.21) | P=0.11 | 追加効果は統計的に有意ではない |
コメント
◆考察
- レバミピドはNSAIDsによる胃腸粘膜障害を有意に抑制することが示されました。
- PPIとの直接比較では同等の予防効果が認められ、長期的なPPI使用が困難な患者への選択肢になり得ます。
- ただし、PPIへの上乗せ効果については明確なエビデンスが不足しており、さらなる研究が必要です。
◆試験の限界
- 各RCTの規模は大きくなく、異質性の影響を完全に排除できない。
- 長期的な臨床転帰(潰瘍出血や穿孔など)に対する効果は十分に検証されていない。
◆まとめ
- レバミピドはNSAIDsによる胃腸粘膜障害を予防でき、PPIと同等の有効性を示す。
- PPIが使用できない場合の代替選択肢として有望。
- ただし、併用効果や長期使用での臨床的有用性についてはさらなる検討が必要。
NSAIDsによる消化管障害でしばしば問題になるのが、上部消化管出血と下部消化管出血です。今回のメタ解析では、胃腸粘膜障害という大きなくくりでアウトカムが設定されていますが、より詳細な検証も求められます。
続報に期待。

✅まとめ✅ 13件のランダム化比較試験を対象としたメタ解析の結果、レバミピドはNSAID誘発性消化管粘膜損傷の予防に有効である。レバミピドは、NSAID誘発性消化管粘膜損傷の予防において標準的なPPIと同等の有効性を示す可能性があり、特にPPIの長期使用が禁忌となる患者においては、代替薬となり得ることが示された。
根拠となった試験の抄録
はじめに: 非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)は、世界で最も多く使用されている薬剤の一つです。これらの薬剤の大きな限界は、消化管(GI)粘膜損傷です。これまでにいくつかの胃保護薬が推奨されてきましたが、その長期効果には限界があります。レバミピドは有望な粘膜保護薬ですが、その有効性は確立されていません。そこで、レバミピドがNSAID誘発性消化管粘膜損傷の予防に有効であるかを、プラセボおよび標準的なプロトンポンプ阻害薬(PPI)と比較するメタアナリシスを実施しました。
方法: 4つの電子データベースを、開始から2023年10月まで検索し、レバミピドとプラセボまたはPPIを比較したランダム化比較試験を調べた。データを統合し、リスク比(RR)と95%信頼区間(CI)を算出した。異質性はI2統計量、出版バイアスはファンネルプロットを用いてそれぞれ評価した。
結果: 合計472件の研究がスクリーニングされ、そのうち13件の研究が対象となった。統合解析の結果、レバミピドはプラセボと比較して、NSAID誘発性消化管粘膜損傷の発生率を有意に低下させた(相対リスク 0.55、95%信頼区間 0.31-0.99、P≦0.00001)。レバミピドは、NSAID誘発性粘膜損傷の予防において、標準的なPPIと同等であった(相対リスク 1.00、95%信頼区間 0.51-1.95、P=1.00)。PPIへのレバミピドの追加については、PPI単独と比較して消化管粘膜損傷の予防効果をさらに改善するという効果を裏付けるデータがまだ不十分であった(相対リスク 0.72、95%信頼区間 0.43-1.21、P=0.11)。
考察: レバミピドはNSAID誘発性消化管粘膜損傷の予防に有効である。レバミピドは、NSAID誘発性消化管粘膜損傷の予防において標準的なPPIと同等の有効性を示す可能性があり、特にPPIの長期使用が禁忌となる患者においては、代替薬となり得る。
キーワード: 消化管出血、NSAID 出血、レバミピド
引用文献
Efficacy of Rebamipide in the Prevention of Nonsteroidal Anti-Inflammatory Drug-Induced Gastrointestinal Mucosal Breaks: A Systematic Review and Meta-Analysis
Rochelle Ivy A Cion et al. PMID: 40366001 DOI: 10.14309/ajg.0000000000003535
Am J Gastroenterol. 2025 May 14. doi: 10.14309/ajg.0000000000003535. Online ahead of print.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40366001/
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