JAK阻害剤に関連する主要心血管有害事象はどのくらい?(不均衡分析; Drug Saf. 2025)

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JAK阻害薬と心血管イベントとの関連性は?

関節リウマチ(RA)の治療にはヤヌスキナーゼ阻害薬(JAKis)と抗腫瘍壊死因子α薬(抗TNFα薬)が一般的に使用されていますが、これらの薬剤の心血管安全性プロファイルは不明な点が多く、充分に検証されていません。

そこで今回は、主要有害心イベント(MACE)または脳卒中の個々の症例の安全性報告を記載し、RAに使用されたJAKisと抗TNFαの間で心血管イベントの報告頻度に差があるかどうかを明らかにすることを目的に実施されたシグナル検出の結果をご紹介します。

WHO VigiBase®データベースを用いた症例/非症例研究が行われました。記述的分析により、MACEの発症までの時間(TTO)が算出され、報告オッズ比(ROR)によりRAにおけるJAKisと抗TNFαのMACE報告頻度が推定されました。

試験結果から明らかになったことは?

合計18,099例のMACEが同定され、そのうち2,543例(14%)がJAKisと関連しており、主に女性(65.4%)および65歳以上の患者(49.9%)でした。発症までの期間中央値はJAKisで210日(IQR 60~510)、抗TNFαで690日(210~1,460)でした。

報告オッズ比(ROR)
JAKis vs. 抗TNFα
MACEROR 1.38(1.32~1.44
 65歳未満ROR 1.29(1.21~1.39
脳卒中全体ROR 1.62(1.53~1.72
 非致死的脳卒中ROR 1.65(1.55~1.75

JAKisは主に非致死的脳卒中(1.65、1.55~1.75)によるMACE報告(ROR 1.38、95%CI 1.32~1.44)の高いオッズと関連していました。脳卒中全体でも同様の結果でした(1.62、1.53~1.72)。また、MACEのRORはJAKis治療を受けた65歳未満の患者でわずかに増加しました(1.29、1.21~1.39)。

コメント

JAK阻害薬により心血管イベントの発生リスクが増加する可能性が報告されていますが、一貫した結果は得られていません。

さて、WHO VigiBase®データベースを用いた不均衡分析の結果、抗TNFα薬と比較して、JAKisはMACE、特に脳卒中との関連性が高く、発症までの期間も短かい可能性が示されました。ただし、論文の結論は過剰な表現となっているため注意を要します。

具体的には、有害事象のデータベースが”自発報告”であることがあげられます。報告バイアス(indication bias, notoriety bias)や重複報告、欠落データの可能性があります。曝露群(JAKis使用者)と比較群(anti-TNFα使用者)のリスク因子が異なる可能性が高いも上げられます。

つまり、JAK阻害薬の使用が、抗TNFαと比較して心血管リスクを増加させるのかは不明です。あくまでも追加の検証を行うためのシグナル検出であることを前提に、市販後調査や観察研究の結果を踏まえてリスクの程度を評価することが求められます。

続報に期待。

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✅まとめ✅ WHO VigiBase®データベースを用いた不均衡分析の結果、抗TNFα薬と比較して、JAKisはMACE、特に脳卒中との関連性が高く、発症までの期間も短かい可能性が示された。

根拠となった試験の抄録

背景:関節リウマチ(RA)の治療にはヤヌスキナーゼ阻害薬(JAKis)と抗腫瘍壊死因子α薬(抗TNFα薬)が一般的であるが、これらの薬剤の心血管安全性プロファイルは不明な点が多い。

目的:本研究の目的は、主要有害心イベント(MACE)または脳卒中の個々の症例の安全性報告を記載し、RAに使用されたJAKisと抗TNFαの間で心血管イベントの報告頻度に差があるかどうかを明らかにすることであった。

方法:WHO VigiBase®データベースを用いて症例/非症例研究を行った。記述的分析を行い、MACEの発症までの時間(TTO)を算出し、報告オッズ比(ROR)を用いてRAにおけるJAKisと抗TNFαのMACE報告頻度を推定した。

結果:合計18,099例のMACEが同定され、そのうち2,543例(14%)がJAKisと関連しており、主に女性(65.4%)および65歳以上の患者(49.9%)であった。発症までの期間中央値はJAKisで210日(IQR 60~510)、抗TNFαで690日(210~1460)であった。JAKisは主に非致死的脳卒中(1.65、1.55~1.75)によるMACE報告(ROR 1.38、95%CI 1.32~1.44)の高いオッズと関連していた。脳卒中全体でも同様の結果であった(1.62、1.53~1.72)。また、MACEのRORはJAKis治療を受けた65歳未満の患者でわずかに増加した(1.29、1.21~1.39)。

結論:抗TNFα薬と比較して、JAKisはMACE、特に脳卒中との関連性が高く、発症までの期間も短かった。これらのデータは、JAKisと抗TNFαでは心血管報告頻度が異なるという仮説を支持するものである。心血管リスクが確認された患者では、より明確な結果が得られるまで、JAKisよりも抗TNFαを優先すべきである。

引用文献

Major Adverse Cardiovascular Events Related to JAK Inhibitors: A Disproportionality Analysis Using the WHO Global Individual Case Safety Database
Raffaella Di Napoli et al.
Drug Saf. 2025 Mar 23. doi: 10.1007/s40264-025-01535-8. Online ahead of print.
— 読み進める https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40121611/

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