2型糖尿病患者におけるグルカゴン様ペプチド-1受容体作動薬と自殺リスクとの関連性(コホート研究; BMJ. 2025)

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GLP-1受容体作動薬の使用と自殺リスクとの関連性は?

グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)受容体作動薬の使用と自殺念慮および自傷行為との関連を示す最近の報告は、大きな懸念を引き起こしています。この安全性の問題の可能性に関する最初のシグナルは、2023年7月にアイスランド医薬品庁から発せられ、欧州医薬品庁や米国食品医薬品局を含む世界中の規制当局が、GLP-1受容体作動薬使用者の自殺傾向の潜在的リスクに関する独自の調査を開始するよう促しました。しかし、依然として充分に検証されていません。

そこで今回は、GLP-1受容体作動薬の使用が、ジペプチジルペプチダーゼ-4(DPP-4)阻害薬やナトリウムグルコース共輸送体-2(SGLT-2)阻害薬の使用と比較して、2型糖尿病患者における自殺念慮、自傷行為、自殺のリスクの増加と関連するかどうかを検討することを目的に実施されたコホート研究の結果をご紹介します。

本研究は、アクティブコンパレータ(実薬対照)、新規使用者コホート研究です。Hospital Episodes Statistics Admitted Patient CareおよびOffice for National Statistics Death RegistrationデータベースにリンクされたUK Clinical Practice Research Datalinkにデータを提供しているプライマリケア診療所のデータが用いられました。

対象者は2型糖尿病患者であり、2007年1月1日~2020年12月31日にGLP-1受容体作動薬またはDPP-4阻害薬の投与を開始・継続した患者と、2013年1月1日~2020年12月31日にGLP-1受容体作動薬またはSGLT-2阻害薬の投与を開始・継続した患者の2つのコホートが作成されました。両コホートとも2021年3月29日まで追跡されました。

本研究の主要アウトカムは自殺念慮、自傷行為、自殺の複合と定義した自殺傾向でした。副次アウトカムは、これらの事象をそれぞれ個別に検討されました。ハザード比および95%信頼区間(CI)を推定するために、傾向スコアによる細かい層別化重み付けを行ったCox比例ハザードモデルを適用することで、治療を受けた患者における平均治療効果が推定されました。

試験結果から明らかになったことは?

最初のコホートには36,082例のGLP-1受容体作動薬使用者(追跡期間中央値 1.3年)と234,028例のDPP-4阻害薬使用者(追跡期間中央値 1.7年)が含まれました。

GLP-1受容体作動薬 vs. DPP-4阻害薬

GLP-1受容体作動薬DPP-4阻害薬ハザード比
(95%CI)
自殺の発生3.9
/1,000人・年
1.8
/1,000人・年
ハザード比 2.08
1.83〜2.36
自殺の発生(交絡因子調整後)ハザード比 1.02
0.85〜1.23

粗解析では、GLP-1受容体作動薬の使用はDPP-4阻害薬と比較して自殺の発生率の増加と関連していました(粗発生率はそれぞれ1,000人・年当たり3.9 vs. 1.8、ハザード比 2.08、95%CI 1.83〜2.36)。この推定値は交絡因子を考慮するとヌル値(リスク増減なし)まで減少しました(ハザード比 1.02、95%CI 0.85〜1.23)。

GLP-1受容体作動薬 vs. SGLT-2阻害薬

GLP-1受容体作動薬SGLT-2阻害薬ハザード比
(95%CI)
自殺の発生4.3
/1,000人・年
2.7
/1,000人・年
ハザード比 1.60
1.37〜1.87
自殺の発生(交絡因子調整後)ハザード比 0.91
0.73〜1.12

2番目のコホートにはGLP-1受容体作動薬使用者32,336例(追跡期間中央値 1.2年)とSGLT-2阻害薬使用者96,212例(追跡期間中央値 1.2年)が含まれました。同様に、粗解析ではGLP-1受容体作動薬の使用はSGLT-2阻害薬と比較して自殺のリスク増加と関連していました(粗発生率4.3 vs. 2.7/1,000人・年、ハザード比 1.60、95%CI 1.37〜1.87)が、交絡因子を考慮した後ではそうではありませんでした(0.91、0.73〜1.12)。

自殺念慮、自傷行為、自殺を両コホートで別々に分析しても同様の所見が観察されました。

コメント

グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)受容体作動薬の使用と自殺念慮および自傷行為との関連性については議論が分かれています。

さて、大規模なコホート研究の結果、2型糖尿病患者におけるGLP-1受容体作動薬の使用は、DPP-4阻害薬やSGLT-2阻害薬の使用と比較して自殺傾向のリスク上昇とは関連しませんでした。

現時点においては、薬剤そのものの使用によるリスク増加というより、個々の患者背景による影響が大きいと考えられます。

ただし、英国のデータを用いた研究結果であることから、他の国や地域でも同様の結果が示されるのかについて、更なる検証が求められます。特に日本を含めたアジア諸国での研究結果が待たれます。

続報に期待。

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✅まとめ✅ 大規模なコホート研究の結果、2型糖尿病患者におけるGLP-1受容体作動薬の使用は、DPP-4阻害薬やSGLT-2阻害薬の使用と比較して自殺傾向のリスク上昇とは関連しなかった。

根拠となった試験の抄録

目的:グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)受容体作動薬の使用が、ジペプチジルペプチダーゼ-4(DPP-4)阻害薬やナトリウムグルコース共輸送体-2(SGLT-2)阻害薬の使用と比較して、2型糖尿病患者における自殺念慮、自傷行為、自殺のリスクの増加と関連するかどうかを検討すること。

試験デザイン:アクティブコンパレータ、新規使用者コホート研究

試験設定:Hospital Episodes Statistics Admitted Patient CareおよびOffice for National Statistics Death RegistrationデータベースにリンクされたUK Clinical Practice Research Datalinkにデータを提供しているプライマリケア診療所。

試験参加者:2型糖尿病患者。

曝露:2007年1月1日~2020年12月31日にGLP-1受容体作動薬またはDPP-4阻害薬の投与を開始・継続した患者と、2013年1月1日~2020年12月31日にGLP-1受容体作動薬またはSGLT-2阻害薬の投与を開始・継続した患者の2つのコホートが作成された。両コホートとも2021年3月29日まで追跡された。

主要アウトカム評価項目:主要アウトカムは自殺念慮、自傷行為、自殺の複合と定義した自殺傾向。副次アウトカムは、これらの事象をそれぞれ個別に検討した。ハザード比および95%信頼区間(CI)を推定するために、傾向スコアによる細かい層別化重み付けを行ったCox比例ハザードモデルを適用し、治療を受けた患者における平均治療効果を推定した。

結果:最初のコホートには36,082例のGLP-1受容体作動薬使用者(追跡期間中央値 1.3年)と234,028例のDPP-4阻害薬使用者(追跡期間中央値 1.7年)が含まれた。粗解析では、GLP-1受容体作動薬の使用はDPP-4阻害薬と比較して自殺の発生率の増加と関連していた(粗発生率はそれぞれ1,000人・年当たり3.9 vs. 1.8、ハザード比 2.08、95%CI 1.83〜2.36)。この推定値は交絡因子を考慮するとヌル値まで減少した(ハザード比 1.02、95%CI 0.85〜1.23)。2番目のコホートにはGLP-1受容体作動薬使用者32,336例(追跡期間中央値 1.2年)とSGLT-2阻害薬使用者96,212例(追跡期間中央値 1.2年)が含まれた。同様に、粗解析ではGLP-1受容体作動薬の使用はSGLT-2阻害薬と比較して自殺のリスク増加と関連していた(粗発生率4.3 vs. 2.7/1,000人・年、ハザード比 1.60、95%CI 1.37〜1.87)が、交絡因子を考慮した後ではそうではなかった(0.91、0.73〜1.12)。自殺念慮、自傷行為、自殺を両コホートで別々に分析しても同様の所見が観察された。

結論:この大規模コホート研究において、2型糖尿病患者におけるGLP-1受容体作動薬の使用は、DPP-4阻害薬やSGLT-2阻害薬の使用と比較して自殺傾向のリスク上昇とは関連しなかった。

引用文献

Glucagon-like peptide-1 receptor agonists and risk of suicidality among patients with type 2 diabetes: active comparator, new user cohort study
Samantha B Shapiro et al. PMID: 40010803 PMCID: PMC11863255 DOI: 10.1136/bmj-2024-080679
BMJ. 2025 Feb 26:388:e080679. doi: 10.1136/bmj-2024-080679.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40010803/

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