市販のサプリメントが抱える問題点とは?
葉酸の補給は、胎児の神経管欠損症のリスクを軽減するために、妊娠中に不可欠です。さらに、妊娠中に推奨される葉酸摂取量を満たすためには、葉酸サプリメントが必要になることが多いと考えられます。
これらのサプリメントは食品として分類されていますが、その品質に関する情報は不足しています。そこで今回は、葉酸サプリメントの品質を評価した研究結果をご紹介します。
日本薬局方のガイドラインに従って、市販の葉酸サプリメント7種類(FA1~7)を対象に、質量変化、溶出試験、含量測定、崩壊試験などの各種試験が実施され、市販の医療用葉酸錠剤と比較されました。
試験結果から明らかになったことは?
崩壊試験の結果 | |
FA-1 | 適合 (30分以内に6個中6個が崩壊) |
FA-2 | 適合 (30分以内に6個中6個が崩壊) |
FA-3 | 適合 (30分以内に6個中6個が崩壊) |
FA-4 | 適合 (30分以内に6個中6個が崩壊) |
FA-5 | 適合 (30分以内に6個中6個が崩壊) |
FA-6 | 適合 (30分以内に6個中6個が崩壊) |
FA-7 | 不適合 (18個中18個すべてが崩壊せず) |
崩壊試験の結果、FA-7以外の製品では、いずれも規定時間の30分以内に6個中6個が崩壊し、適合でした。一方、FA-7は規定時間の30分を過ぎても18個中18個すべてが崩壊せず、不適合でした。FA-7は、錠剤の表面がコーティングで覆われた製剤でした。崩壊試験開始後30分で、その表面のコーティングは剥がれていたものの原形を留めていた様子が観察されました。
含量測定(%) | |
葉酸錠 | 103.74±4.59 |
FA-1 | 136.3±12.1 |
FA-2 | 92.1±7.0 |
FA-3 | 11.9±7.7 |
FA-4 | 54.0±4.4 |
FA-5 | 112.9±4.1 |
FA-6 | 104.1±13.9 |
FA-7 | 15.1±8.7 |
葉酸錠および各種葉酸サプリメントの含量を測定した結果、葉酸錠の平均含量%は103.74±4.59%と基準である90.0~115.0%内でした。しかし、FA-3、4、7で、消費者庁の定める栄養成分表示基準にある葉酸含有量の許容範囲(–20% ~ +80%)の下限を下回っていました。許容範囲の上限を上回る製品はありませんでした。
コメント
葉酸サプリメントは簡単に入手できるメリットがありますが、その品質評価は充分に行われていません。
さて、日本で行われた葉酸サプリメントの品質評価の結果、消化管内と類似の条件下では十分に溶出・崩壊しない製品が含まれていることが示唆されました。
胎児の神経管欠損症のリスクを軽減するために葉酸サプリメントの摂取が推奨されますが、規定量が吸収されなければ意味がありません。サプリメントであっても品質評価の実施、そして消費者にとって必要な情報開示が求められます。
続報に期待。
![woman in white tank top sitting on couch](https://i0.wp.com/pharmacyebmrozero.com/wp-content/uploads/2025/02/pexels-photo-8844400.jpeg?resize=867%2C1300&ssl=1)
✅まとめ✅ 日本で行われた葉酸サプリメントの品質評価の結果、消化管内と類似の条件下では十分に溶出・崩壊しない製品が含まれていることが示唆された。
根拠となった試験の抄録
背景:葉酸の補給は、胎児の神経管欠損症のリスクを軽減するために、妊娠中に不可欠である。さらに、妊娠中に推奨される葉酸摂取量を満たすためには、葉酸サプリメントが必要になることが多い。これらのサプリメントは食品として分類されているが、その品質に関する情報は不足している。そこで本研究では、葉酸サプリメントの品質を評価した。
方法:日本薬局方のガイドラインに従って、市販の葉酸サプリメント7種類を質量変化、溶出試験、含量測定、崩壊試験などの各種試験に供し、市販の医療用葉酸錠剤と比較した。
結果:含量測定試験の結果、3種類の葉酸サプリメントの葉酸含量は、消費者庁が定める栄養成分表示基準許容範囲の下限値を下回っていた。さらに、崩壊・溶出試験において、1品目と4品目が日本薬局方の規格を満たしていなかったことから、医療用葉酸サプリメントが一般的に対象としている消化管内と同様の条件下でも、一部の葉酸サプリメントが適切に溶解・溶出しなかったことが示唆された。
結論:妊娠中の葉酸摂取がサプリメントに依存している現状では、消費者が品質の確かな製品を選択できるような情報提供が必要である。
引用部兼
葉酸を摂取できると謳ったサプリメントの製剤学的な品質評価
西村亜佐子 等. 医療薬学. 50(9) 486-493 (2024).
— 読み進める www.jstage.jst.go.jp/article/jjphcs/50/9/50_486/_article/-char/ja
コメント