セマグルチドの効果はCKD重症度により異なるのか?
FLOW試験において、セマグルチドは2型糖尿病(T2D)と慢性腎臓病(CKD)を有する参加者において、腎臓および心血管(CV)の転帰と死亡のリスクを減少させました。しかし、CKD重症度別のセマグルチド評価は充分に行われていません。
そこで今回は、CKD重症度別にCV転帰および死亡に対するセマグルチドの効果を評価したFLOW試験の事前規定解析の結果をご紹介します。
試験参加者はセマグルチド1mgを週1回皮下投与する群とプラセボを週1回皮下投与する群にランダムに割り付けられました。
本試験の主要アウトカムは、ベースラインのCKD重症度別に、CV死亡、非致死的心筋梗塞(MI)、非致死的脳卒中(CV死亡/MI/脳卒中)、およびあらゆる原因による死亡の複合でした。CKDはeGFR<または≧60mL/min/1.73m2、UACR<または≧300mg/g、KDIGOリスク分類によって分類されました。
試験結果から明らかになったことは?
3,533例がランダムに組み入れられ、追跡期間中央値は3.4年でした。低/中等度のKDIGOリスクは242例(6.9%)に認められましたが、高リスクは878例(24.9%)、超高リスクは2,412例(68.3%)でした。
ハザード比 HR(95%CI) vs. プラセボ | |
CV死亡/MI/脳卒中 | HR 0.82 (0.68~0.98) P=0.03 |
あらゆる原因による死亡 | HR 0.80 (0.67~0.95) P=0.01 |
セマグルチドは、eGFRカテゴリー、UACRレベル、KDIGOリスク分類に一貫性をもって、CV死亡/MI/脳卒中を18%減少させました(HR 0.82、95%CI 0.68~0.98、P=0.03)。
あらゆる原因による死亡は20%減少し(HR 0.80、0.67~0.95;P=0.01)、eGFRカテゴリーおよびKDIGOリスククラス間で一貫性がみられました(それぞれ交互作用P=0.21および0.23)。
あらゆる原因による死亡に対するUACR別の治療効果は交互作用P=0.01でした(300mg/g未満:HR 1.17、0.83~1.65;300mg/g以上:HR 0.70、0.57~0.85)。
コメント
2型糖尿病と慢性腎臓病(CKD)を有する患者において、心血管イベントのリスク増加が知られています。セマグルチドが心血管イベントの発生リスクを低減しますが、子の効果がCKDの重症度により変化するか否かについては、充分に検証されていません。
さて、ランダム化比較試験の事前設定解析の結果、セマグルチドは、T2D患者において、ベースラインのCKD重症度にかかわらず、CV死亡/MI/脳卒中のリスクを有意に減少させました。
事後解析の結果であることから、あくまでも相関関係が示されたにすぎませんが、心血管イベントに対するセマグルチドの効果が、CKD重症度により影響されないことは朗報です。一方、総死亡についてはUACRにより異なり、300mg/g以上の顕性腎症期の患者での効果がより大きい可能性が示唆されています。より重症な患者で死亡リスクを低減(先送り)できることが示唆されたことになります。
少なくともプラセボに比べて、セマグルチドは2型糖尿病とCKDを有する患者において、予後改善に優れているようです。既存薬との比較検討が求められます。
続報に期待。
✅まとめ✅ ランダム化比較試験の事前設定解析の結果、セマグルチドは、T2D患者において、ベースラインのCKD重症度にかかわらず、CV死亡/MI/脳卒中のリスクを有意に減少させた。
根拠となった試験の抄録
背景と目的:FLOW試験において、セマグルチドは2型糖尿病(T2D)と慢性腎臓病(CKD)を有する参加者において、腎臓および心血管(CV)の転帰と死亡のリスクを減少させた。これらの事前に規定された解析では、CKD重症度別にCV転帰および死亡に対するセマグルチドの効果を評価した。
方法:参加者はセマグルチド1mgを週1回皮下投与する群とプラセボを週1回皮下投与する群にランダムに割り付けられた。
主要アウトカムは、ベースラインのCKD重症度別に、CV死亡、非致死的心筋梗塞(MI)、非致死的脳卒中(CV死亡/MI/脳卒中)、およびあらゆる原因による死亡の複合とした。CKDはeGFR<または≧60mL/min/1.73m2、UACR<または≧300mg/g、KDIGOリスク分類によって分類された。
結果:3,533例がランダムに組み入れられ、追跡期間中央値は3.4年であった。低/中等度のKDIGOリスクは242例(6.9%)に認められたが、高リスクは878例(24.9%)、超高リスクは2,412例(68.3%)であった。セマグルチドは、eGFRカテゴリー、UACRレベル、KDIGOリスク分類に一貫性をもって、CV死亡/MI/脳卒中を18%減少させた(HR 0.82、95%CI 0.68~0.98、P=0.03)。あらゆる原因による死亡は20%減少し(HR 0.80、0.67~0.95;P=0.01)、eGFRカテゴリーおよびKDIGOリスククラス間で一貫性がみられた(それぞれ交互作用P=0.21および0.23)。あらゆる原因による死亡に対するUACR別の治療効果は交互作用P=0.01であった(300mg/g未満:HR 1.17、0.83~1.65;300mg/g以上:HR 0.70、0.57~0.85)。
結論:セマグルチドは、T2D患者において、ベースラインのCKD重症度にかかわらず、CV死亡/MI/脳卒中のリスクを有意に減少させた。
キーワード:心血管アウトカム、慢性腎臓病、セマグルチド、2型糖尿病
引用文献
Cardiovascular outcomes with semaglutide by severity of chronic kidney disease in type 2 diabetes: the FLOW trial
Kenneth W Mahaffey et al. PMID: 39211948 DOI: 10.1093/eurheartj/ehae613
Eur Heart J. 2024 Aug 30:ehae613. doi: 10.1093/eurheartj/ehae613. Online ahead of print.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39211948/
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