トリアムシノロンアセトニドの製剤間比較
関節内コルチコステロイド注射は高血糖(グルコース値 180mg/dL以上)を引き起こす可能性があります。変形性膝関節症および2型糖尿病を有する患者33例を対象とした第2相試験において、トリアムシノロンアセトニド徐放製剤(, TA-ER)はトリアムシノロンアセトニド即時放出製剤(, TA-IR)と比較して血糖コントロールの破綻を最小限に抑えましたが、更なる検証が求められています。
そこで今回は、変形性膝関節症および2型糖尿病を有する患者を対象に、TA-ERとTA-IRの関節内注射による血糖値変動を比較したポストホック解析の結果をご紹介します。
症候性変形性膝関節症が6ヵ月以上、2型糖尿病が1年以上、ヘモグロビンA1cが6.5~9.0%の患者が、TA-ERまたはTA-IRの関節内注射を受ける群にランダムに割り付けられました。
持続グルコースモニターによる1日のグルコース値の変化、目標グルコース範囲(>70~180mg/dL)以上の時間の割合、グルコース値250mg/dLおよび最大グルコース値>250mg/dLまでの時間、血糖変動が評価されました。
試験結果から明らかになったことは?
トリアムシノロンアセトニド徐放製剤(TA-ER, n=18) | トリアムシノロンアセトニド即時放出製剤(TA-IR, n=15) | |
最大グルコース値のベースラインからの変化中央値 | 92.3mg/dL | 169.1mg/dL |
グルコース値が250mg/dLを超えた時間の割合 | 12% | 26% |
最大グルコース値が250mg/dLを超えた患者の割合 | 50% | 93% |
目標グルコース範囲にいた時間の割合 | 62% | 48% |
グルコース値250mg/dLまでに達する時間(中央値) | 44時間 | 6時間 |
最大グルコース値まで達する時間(中央値) | 34時間 | 13時間 |
注射後1~3日目において、TA-IR群(n=15)に対してTA-ER群(n=18)は、最大グルコース値のベースラインからの変化中央値が低く(92.3 vs. 169.1 mg/dL)、グルコース値が250mg/dLを超えた時間の割合が減少し(12 vs. 26%)、最大グルコース値が250mg/dLを超えた患者の割合が減少し(50 vs. 93%)、目標グルコース範囲にいた時間の割合が増加しました(62 vs. 48%)。
TA-IR群に対してTA-ER群では血糖変動が少なく、グルコーススパイクも少ないことが示されました。グルコース値250mg/dL(44時間 vs. 6時間)および最大グルコース値までの時間の中央値は、TA-ER群対TA-IR群で有意に長いことが示されました(34時間 vs. 13時間)。
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2型糖尿病と変形性膝関節症を合併している患者は少なくありません。炎症期の膝関節痛に対して、ステロイド注射薬が使用されますが、血糖コントロール悪化のリスクがあることから、代替となる治療薬が求められています。
さて、第2相試験の事後解析の結果、トリアムシノロンアセトニド徐放製剤の使用はトリアムシノロンアセトニド即時放出製剤と比較して臨床的に意義のある高血糖の減少と関連していました。小規模な試験かつ事後解析の結果ではあるものの、2型糖尿病を有する変形性膝関節症患者においては、徐放化製剤の方が適しているようです。
ちなみに、日本では2024年9月現在、トリアムシノロンアセトニド水性懸濁注射液(商品名:ケナコルト-A)が承認されています。
今後の報告に期待。
✅まとめ✅ 事後解析の結果、トリアムシノロンアセトニド徐放製剤の使用はトリアムシノロンアセトニド即時放出製剤と比較して臨床的に意義のある高血糖の減少と関連していた。
根拠となった試験の抄録
背景:関節内コルチコステロイド注射は高血糖(グルコース値 180mg/dL以上)を引き起こす可能性がある。変形性膝関節症および2型糖尿病を有する患者33例を対象とした第2相試験において、トリアムシノロンアセトニド徐放製剤(triamcinolone acetonide extended-release, TA-ER)はトリアムシノロンアセトニド即時放出製剤(triamcinolone acetonide immediate-release, TA-IR)と比較して血糖コントロールの破綻を最小限に抑えた。本ポストホック解析は、これらの結果の臨床的妥当性を明らかにするものである。
方法:症候性変形性膝関節症が6ヵ月以上、2型糖尿病が1年以上、ヘモグロビンA1cが6.5~9.0%の患者を、TA-ERまたはTA-IRの関節内注射を受ける群にランダムに割り付けた。持続グルコースモニターによる1日のグルコース値の変化、目標グルコース範囲(>70~180mg/dL)以上の時間の割合、グルコース値250mg/dLおよび最大グルコース値>250mg/dLまでの時間、血糖変動が評価された。
結果:注射後1~3日目において、TA-IR群(n=15)に対してTA-ER群(n=18)は、最大グルコース値のベースラインからの変化中央値が低く(92.3 vs. 169.1 mg/dL)、グルコース値が250mg/dLを超えた時間の割合が減少し(12 vs. 26%)、最大グルコース値が250mg/dLを超えた患者の割合が減少し(50 vs. 93%)、目標グルコース範囲にいた時間の割合が増加した(62 vs. 48%)。TA-IR群に対してTA-ER群では血糖変動が少なく、グルコーススパイクも少なかった。グルコース値250mg/dL(44時間 vs. 6時間)および最大グルコース値(34時間 vs. 13時間)までの時間の中央値は、TA-ER群対TA-IR群で有意に長かった。
結論:トリアムシノロンアセトニド徐放製剤の使用はトリアムシノロンアセトニド即時放出製剤と比較して臨床的に意義のある高血糖の減少と関連していた。
キーワード:高血糖;関節内注射;変形性膝関節症;トリアムシノロンアセトニド徐放製剤;2型糖尿病
引用文献
Extended-Release Versus Immediate-Release Triamcinolone Acetonide in Patients Who Have Knee Osteoarthritis and Type 2 Diabetes Mellitus
Andrew I Spitzer et al. PMID: 38815874 DOI: 10.1016/j.arth.2024.05.055
J Arthroplasty. 2024 Sep;39(9S2):S218-S223.e1. doi: 10.1016/j.arth.2024.05.055. Epub 2024 May 28.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38815874/
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