慢性腎臓病を有する糖尿病患者の心不全アウトカムに対するセマグルチドの効果は?(RCTの事後解析; FLOW試験; J Am Coll Cardiol. 2024)

02_循環器系
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CKD合併の2型糖尿病患者における心不全関連イベントはセマグルチド使用で減少する?

2型糖尿病(T2D)と慢性腎臓病(CKD)を有する患者は、心不全(HF)と心血管疾患(CV)による早期死亡のリスクが高いことが報告されています。

2型糖尿病と慢性腎臓病の患者を対象としたFLOW試験(Research Study To See How Works with Semaglutide Compared to Placebo in People With Type 2 Diabetes and Chronic Kidney Disease)では、グルカゴン様ペプチド-1受容体作動薬であるセマグルチドにより、主要複合アウトカム(推算糸球体濾過量の持続的50%以上の低下、推算糸球体濾過量15mL/min/1.73m2未満の持続、腎代替療法、腎死または心血管死)の発生が24%減少しました。しかし、心不全(HF)アウトカムに対する効果については充分に検証されていません。

そこで今回は、この高リスク集団におけるHFアウトカムに対するセマグルチドの効果を検討したFLOW試験の事前設定解析により心不全アウトカムに対する効果を検証したランダム化比較試験の事後解析の結果をご紹介します。

FLOW試験の参加者は週1回セマグルチド1mg皮下投与群またはプラセボ群にランダムに割り付けられました(1:1)。事前に規定された主要アウトカムは、HFイベント(予定外の入院または緊急受診に至るHFの新規発症または悪化、利尿薬/血管作動薬治療の開始または強化)またはCV死の複合でした。
HFに関するデータは治験責任医師が収集し、CV死は独立委員会が判定しました。

試験結果から明らかになったことは?

ランダム化された3,533例が中央値3.4年間追跡されました。ベースライン時にHFが認められたのはセマグルチド群342例(19.4%)、プラセボ群336例(19.0%)でした。

(全試験集団)ハザード比 HR
(95%CI)
最初のHFイベントまたはCV死の発生HR 0.73
0.62~0.87
P=0.0005
 HFイベントHR 0.73
0.58~0.92
P=0.0068
 CV死HR 0.71
0.56~0.89
P=0.0036

全試験集団において、セマグルチドは最初のHFイベントまたはCV死の発生までの期間を延長しました(HR 0.73、95%CI 0.62~0.87、P=0.0005):HFイベント単独(HR 0.73、95%CI 0.58~0.92、P=0.0068)、CV死単独(HR 0.71、95%CI 0.56~0.89、P=0.0036)。

複合HF転帰のリスクに対するハザード比 HR
(95%CI)
ベースライン時にHFを有する群HR 0.73
0.54~0.98
P=0.0338
ベースライン時にHFを有さない群HR 0.72
0.58~0.89
P=0.0028

複合HF転帰のリスク低下は、ベースライン時にHFを有する群(HR 0.73、95%CI 0.54~0.98;P=0.0338)と有さない群(HR 0.72、95%CI 0.58~0.89;P=0.0028)で同様でした。

HF転帰(HFイベントまたはCV死)のリスクは、治療にかかわらず、NYHA機能分類クラスIIIとHF駆出率低下サブタイプに分類された患者で一般的に高いことが示されました。

コメント

心血管イベントの高リスク集団におけるセマグルチドの効果については、充分に検証されていません。

さて、ランダム化比較試験の事後解析の結果、週1回のセマグルチド投与は、T2DとCKDを有する高リスク集団において、HFイベントまたはCV死の複合転帰を最初に来すまでの期間、およびHFイベントとCV死単独のリスクを大幅に減少させました。これらの効果はHFの既往にかかわらず一貫していました。

事後解析であることから、あくまでも仮説生成的な結果です。このため、再現性の確認も含めて前向き試験の実施が求められます。

続報に期待。

✅まとめ✅ ランダム化比較試験の事後解析の結果、週1回のセマグルチド投与は、T2DとCKDを有する高リスク集団において、HFイベントまたはCV死の複合転帰を最初に来すまでの期間、およびHFイベントとCV死単独のリスクを大幅に減少させた。これらの効果はHFの既往にかかわらず一貫していた。

根拠となった試験の抄録

背景:2型糖尿病(T2D)と慢性腎臓病(CKD)を有する患者は、心不全(HF)と心血管疾患(CV)による早期死亡のリスクが高い。2型糖尿病と慢性腎臓病の患者を対象としたFLOW試験(Research Study To See How Works with Semaglutide Compared to Placebo in People With Type 2 Diabetes and Chronic Kidney Disease)では、グルカゴン様ペプチド-1受容体作動薬であるセマグルチドにより、主要複合アウトカム(推算糸球体濾過量の持続的50%以上の低下、推算糸球体濾過量15mL/min/1.73m2未満の持続、腎代替療法、腎死または心血管死)の発生を24%減少させた。

目的:このprespecified解析では、この高リスク集団におけるHFアウトカムに対するセマグルチドの効果を検討した。

方法:参加者は週1回セマグルチド1mg皮下投与群またはプラセボ群にランダムに割り付けられた(1:1)。
事前に規定された主要アウトカムは、HFイベント(予定外の入院または緊急受診に至るHFの新規発症または悪化、利尿薬/血管作動薬治療の開始または強化)またはCV死の複合であった。
HFのデータは治験責任医師が収集した。CV死は独立委員会が判定した。

結果:ランダム化された3,533例が中央値3.4年間追跡された。ベースライン時にHFが認められたのはセマグルチド群342例(19.4%)、プラセボ群336例(19.0%)であった。全試験集団において、セマグルチドは最初のHFイベントまたはCV死までの期間を延長し(HR 0.73、95%CI 0.62~0.87、P=0.0005)、HFイベント単独(HR 0.73、95%CI 0.58~0.92、P=0.0068)、CV死単独(HR 0.71、95%CI 0.56~0.89、P=0.0036)であった。複合HF転帰のリスク低下は、ベースライン時にHFを有する群(HR 0.73、95%CI 0.54~0.98;P=0.0338)と有さない群(HR 0.72、95%CI 0.58~0.89;P=0.0028)で同様であった。HF転帰(HFイベントまたはCV死)のリスクは、治療にかかわらず、NYHA機能分類クラスIIIとHF駆出率低下サブタイプに分類された患者で一般的に高かった。

結論:セマグルチドは、T2DとCKDを有する高リスク集団において、HFイベントまたはCV死の複合転帰を最初に来すまでの期間、およびHFイベントとCV死単独のリスクを大幅に減少させた。これらの効果はHFの既往にかかわらず一貫していた。

試験登録番号:NCT03819153

キーワード:慢性腎臓病、心不全、アウトカム、セマグルチド、2型糖尿病

引用文献

Effects of Semaglutide on Heart Failure Outcomes in Diabetes and Chronic Kidney Disease in the FLOW Trial
Richard E Pratley et al. PMID: 39217553 DOI: 10.1016/j.jacc.2024.08.004
J Am Coll Cardiol. 2024 Aug 23:S0735-1097(24)08116-6. doi: 10.1016/j.jacc.2024.08.004. Online ahead of print.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39217553/

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