ジゴキシンとβ遮断薬を用いた心拍数コントロールの評価のための消費者向けウェアラブルデバイスの可能性(RCT; RATE-AF試験; Nat Med. 2024)

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FitBit Charge2による心拍数測定は有用か?

コンシューマーグレードのウェアラブル技術は、臨床研究や患者管理をサポートする可能性があるものの、実臨床での検証は充分に行われていません。

そこで今回は、永続的な心房細動と心不全を有する高齢の多疾患合併患者における心拍数を比較するために実施されたランダム化比較試験(RATE-AF試験)の結果をご紹介します。

試験結果から明らかになったことは?

平均年齢 75.6歳(s.d. 8.4)の参加者53人(女性40%)から、スマートフォンと連動した手首装着型ウェアラブルFitBit Charge2を用いて、心拍数(n=143,379,796)と身体活動(n=23,704,307)のインターバルを20週間にわたって取得しました。

ジゴキシン投与群 vs. β遮断薬投与群回帰係数
(95%CI)
調整値
(95%CI)
心拍数回帰係数 1.22
-2.82 ~ 5.27
P=0.55
調整値 0.66
-3.45 ~ 4.77
P=0.75

ジゴキシン投与群とβ遮断薬投与群の心拍数に有意差はありませんでした(回帰係数 1.22、95%信頼区間(CI)-2.82 ~ 5.27、P=0.55;調整値 0.66、95%CI -3.45 ~ 4.77、P=0.75)。

身体活動(P=0.74)または活動レベルの高い患者(週30,000歩以上;P=0.97)を考慮しても、2群の患者間で心拍数に差は認められませんでした。

欠損データを考慮するように設計された畳み込みニューラルネットワークを用いたところ、ウェアラブルデバイスデータは、心電図心拍数および6分間歩行試験の標準的な臨床指標と同様に、ベースライン評価から5ヵ月後のニューヨーク心臓協会(NYHA)の機能クラスを予測できることが明らかとなりました(F1スコア 0.56、95%CI 0.41~0.70 vs. 0.55、95%CI 0.41~0.68;比較のためP=0.88)。

コメント

心拍数や脈拍数の測定は主に医療機関で実施されますが、日常生活における測定となるとホルター心電計が用いられます。従来のホルター心電計は、4つの電極からなる大掛かりな装置であり、日常生活の上で行動が制限されてしまうのが課題でした。一方、電極一体型ホルター心電計は、軽量コンパクトのため電極部分のわずらわしさもなくなり、また柔らかい素材のため普段通りの生活が送れるメリットがあります。ただし、使用できない患者(体重10kg未満の小児、皮膚障害や炎症のおそれがある患者、金属アレルギーを有する患者など)が一定数いることから、課題が残されています。また、より簡便に測定でき、日常生活に制限がかからない測定方法が求められていました。

さて、ランダム化比較試験の結果、ジゴキシンとβ遮断薬は、安静時および労作時の心房細動の心拍数に対して同等の効果を有することが示されました。ウェアラブル技術を用いた不整脈患者の動的モニタリングは、対面評価に代わる可能性があることを示唆しています。

より実臨床における有用性評価、具体的には再現性の確認、より重要な患者アウトカムの評価が求められます。

続報に期待。

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✅まとめ✅ ランダム化比較試験の結果、ジゴキシンとβ遮断薬は、安静時および労作時の心房細動の心拍数に対して同等の効果を有することを示しており、ウェアラブル技術を用いた不整脈患者の動的モニタリングが、対面評価に代わる可能性があることを示唆している。

根拠となった試験の抄録

背景:コンシューマーグレードのウェアラブル技術は、臨床研究や患者管理をサポートする可能性がある。

方法:この研究は、ジゴキシンまたはβ遮断薬による治療にランダムに割り付けられた、永続的な心房細動と心不全を有する高齢の多疾患合併患者における心拍数を比較するためにデザインされた。

結果:53人の参加者(平均年齢 75.6歳(s.d. 8.4)、女性40%)から、スマートフォンと連動した手首装着型ウェアラブルFitBit Charge2を用いて、心拍数(n=143,379,796)と身体活動(n=23,704,307)のインターバルを20週間にわたって取得した。ジゴキシン投与群とβ遮断薬投与群の心拍数に有意差はなかった(回帰係数 1.22、95%信頼区間(CI)-2.82 ~ 5.27、P=0.55;調整値 0.66、95%CI -3.45 ~ 4.77、P=0.75)。身体活動(P=0.74)または活動レベルの高い患者(週30,000歩以上;P=0.97)を考慮しても、2群の患者間で心拍数に差は認められなかった。欠損データを考慮するように設計された畳み込みニューラルネットワークを用いて、ウェアラブルデバイスデータは、心電図心拍数および6分間歩行試験の標準的な臨床指標と同様に、ベースライン評価から5ヵ月後のニューヨーク心臓協会の機能クラスを予測できることがわかった(F1スコア* 0.56、95%CI 0.41~0.70 vs. 0.55、95%CI 0.41~0.68;比較のためP=0.88)。
*F1 スコア:精度と再現率を組み合わせた指標で、範囲は0〜1 で、1は分類の完全な精度を示す。

結論:本研究の結果は、ジゴキシンとβ遮断薬は、安静時および労作時の心房細動の心拍数に対して同等の効果を有することを示しており、ウェアラブル技術を用いた不整脈患者の動的モニタリングが、対面評価に代わる可能性があることを示唆している。

試験登録番号:ClinicalTrials.gov識別子. NCT02391337

引用文献

Consumer wearable devices for evaluation of heart rate control using digoxin versus beta-blockers: the RATE-AF randomized trial
Simrat K Gill et al. PMID: 39009776 DOI: 10.1038/s41591-024-03094-4
Nat Med. 2024 Jul 15. doi: 10.1038/s41591-024-03094-4. Online ahead of print.
— 読み進める https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39009776/

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