足底部悪性黒色腫と関連する疾患はあるのか?
足底部悪性黒色腫(AMF, メラノーマ)の臨床的特徴および病態は充分に解明されていません。
足部の臨床的または不顕性持続性炎症は、足の皮膚糸状菌症(dermatophytosis of the feet, DPF, 足水虫)によって引き起こされます。これまでの報告より、持続的な炎症は発癌と関連する可能性があります。さらに、糖尿病は皮膚糸状菌症および癌の発症と関連することが報告されています。
そこで今回は、糖尿病を考慮した上で、DPFとAMFの臨床的関連を明らかにすることを目的に実施されたカルテベースの後向き解析結果をご紹介します。
日本人患者114人のカルテがレトロスペクティブに調査され、AMF群(n=30)と黒色腫以外の足疾患患者からなる対照群(n=84)に分けられました。顕微鏡によるDPFスクリーニングは、AMFの有無にかかわらず、足部に症状を訴えたすべての患者に対して行われました。患者は皮膚糸状菌の存在を検出する顕微鏡検査を受け、陽性結果に基づいてDPFと診断されました。
試験結果から明らかになったことは?
AMF群では、18人(60.0%)がDPFを、8人(26.7%)が糖尿病を有していました。4人(13.3%)はDPFと糖尿病の両方を有していました。対照群では、25人(29.8%)がDPF、11人(13.1%)が糖尿病でした。5人(6.0%)がDPFと糖尿病の両方を有していました。
単変量解析では、AMF群のDPF有病率が対照群よりも有意に高いことが示されました(オッズ比 3.540、p=0.003、ピアソンχ2検定)。さらに、性別、肥満度、DPF、糖尿病の多変量解析により、DPFがAMFと有意に関連する因子であることが明らかになりました(オッズ比 4.285;p=0.002、ロジスティック回帰分析)。DPFの角化亢進型は、対照患者よりもAMF患者でより頻繁に観察されました(オッズ比 11.083;p<0.001、ピアソンχ2検定)。
コメント
悪性黒色腫(メラノーマ)は、皮膚色素を生成するメラニン細胞もしくはホクロ細胞が悪性化した、皮膚がんの代表です。白色人種に多くみられ、日本人における発症は年間1~2人/10万人とされていますが、増加傾向にあることが報告されています。皮膚の悪性黒色腫は全身に生じますが、日本人の場合は手、足などの末端部に多く認められ、4分の1は足底部に発生します。
メラノーマの臨床的特徴および病態は充分に解明されていないことから、更なる研究が求められています。
さて、日本のデータベース研究の結果、足底部悪性黒色腫患者において足の皮膚糸状菌症(足水虫)、特にその角化亢進型の有病率が有意に高いことが明らかになりました。
小規模かつ後向きな解析結果であるため相関関係が示されたに過ぎず、特定されていない交絡因子の残存が考えられます。つまりメラノーマが先か、足水虫が先か、これらに共通する因子があるのか、まだまだ検証が必要な領域であると考えられます。
続報に期待。
✅まとめ✅ 日本のデータベース研究の結果、足底部悪性黒色腫患者において足の皮膚糸状菌症(足水虫)、特にその角化亢進型の有病率が有意に高いことが明らかになった。
根拠となった試験の抄録
背景:足底部悪性黒色腫(AMF)の臨床的特徴および病態は充分に解明されていない。足の臨床的または不顕性持続性炎症は、足の皮膚糸状菌症(dermatophytosis of the feet, DPF, 足水虫)によって引き起こされる。持続的な炎症は発癌と関連する可能性がある。さらに、糖尿病は皮膚糸状菌症および癌の発症と関連することが報告されている。本研究では、糖尿病を考慮した上で、DPFとAMFの臨床的関連を明らかにすることを目的とした。
方法:日本人患者114人のカルテをレトロスペクティブに調査し、AMF群(n=30)と黒色腫以外の足疾患患者からなる対照群(n=84)に分けた。顕微鏡によるDPFスクリーニングは、AMFの有無にかかわらず、足部に症状を訴えたすべての患者に対して行われた。患者は皮膚糸状菌の存在を検出する顕微鏡検査を受け、陽性結果に基づいてDPFと診断された。
結果:AMF群では、18人(60.0%)がDPFを、8人(26.7%)が糖尿病を有していた。4人(13.3%)はDPFと糖尿病の両方を有していた。対照群では、25人(29.8%)がDPF、11人(13.1%)が糖尿病であった。5人(6.0%)がDPFと糖尿病の両方を有していた。単変量解析では、AMF群のDPF有病率が対照群よりも有意に高いことが示された(オッズ比 3.540、p=0.003、ピアソンχ2検定)。さらに、性別、肥満度、DPF、糖尿病の多変量解析により、DPFがAMFと有意に関連する因子であることが明らかになった(オッズ比 4.285;p=0.002、ロジスティック回帰分析)。DPFの角化亢進型は、対照患者よりもAMF患者でより頻繁に観察された(オッズ比 11.083;p<0.001、ピアソンχ2検定)。
結論:本研究では、AMF患者においてDPF、特にその角化亢進型の有病率が有意に高いことが明らかになった。DPFはAMFの病態と関連している可能性がある。
キーワード:肢端、皮膚糸状菌症、足、真菌感染、真菌、黒色腫、白癬
引用文献
High prevalence of dermatophytosis of the feet in acral melanoma of the foot
Yuma Waki et al. PMID: 38711284 DOI: 10.1111/1346-8138.17256
J Dermatol. 2024 May 6. doi: 10.1111/1346-8138.17256. Online ahead of print.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38711284/
コメント