日本のCRO主導の機能性表示食品試験において、誤解を招く表現が頻繁に観察された(RCTのメタ解析; J Clin Epidemiol. 2024)

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機能性表示食品のランダム化比較試験の実際の結果と表現に大きな乖離がある?

機能性表示食品市場は著しい成長を遂げ、医薬品開発業務受託機関(CRO)による臨床試験が増加しています。しかし、CROが管理する臨床試験および臨床試験結果の消費者市場への伝達に焦点を当てた研究はまだ充分に行われていません。

そこで今回は、日本の著名なCROが促進するランダム化比較試験(RCT)の質を評価し、その結果を消費者に伝えるために使用される表現の質を検討することを目的に実施されたメタ疫学研究の結果をご紹介します。

本研究では、上位5社のCROが大学病院医療情報ネットワーク臨床試験レジストリまたは国際臨床試験レジストリ・プラットフォームに登録した食品試験が対象となりました。試験結果のプレスリリースまたは試験結果に基づく食品の広告はGoogle検索で特定されました。

RCTの論文におけるバイアスのリスクは、2名の査読者が独立して評価し、査読者は抄録および全文における「spin, スピン」の有無も評価されました。プレスリリース/広告における「spin, スピン」の評価も行われました。

試験結果から明らかになったことは?

合計76件のRCT登録、32件のRCT出版物、11件のプレスリリース/広告が対象となりました。

RCT出版物の約72%は、選択的な結果報告による高バイアスリスクを示しました。

抄録の結果(72%)、抄録の結論(81%)、全文の結果(44%)、全文の結論(84%)に “Spin “が認められました。

“Spin “は、選択的転帰報告に起因するプレスリリース/広告の73%に認められました。

コメント

機能性表示食品は、事業者が食品の安全性と機能性に関する科学的根拠等の必要な事項について、販売前に消費者庁長官に届け出ることで機能性を表示することができる制度です。国の審査が入らないことから、有効性・安全性の評価や、試験結果の表現について指導がなされることは少ないと考えられます。そのため、有効性を誇張した表現や安全性が高いように受け取られるような表現、いわゆる “spin” と呼ばれる事象がしばしば認められています。しかし、このspinに対する定量的な評価は充分になされていません。

ちなみにspinの定義は様々ありますが概ね以下の4つに集約できます。
1)基礎研究や臨床試験等、研究結果の表現や解釈をゆがめた報告、あるいは誤解されるようなまぎらわしい解釈を創作している
2)試験結果と解釈が一致していない、解釈では良好であると示されているがデータや結果が伴っていない
3)因果関係を充分に説明できる試験デザインが採用されていない
4)結果の過剰解釈や不適切な外挿が認められる

また、機能性表示食品と特定保健用食品(トクホ)の違いについても触れておきます。特定保健用食品は、健康の維持増進に役立つことが科学的根拠に基づいて認められ、「コレステロールの吸収を抑える」等の表示が許可されている食品です。表示されている効果や安全性については国が審査を行い、食品ごとに消費者庁長官が許可しています。一方、機能性表示食品は、事業者の責任において、科学的根拠に基づいた機能性を表示した食品です。販売前に安全性及び機能性の根拠に関する情報等が消費者庁長官へ届け出られたものです。特定保健用食品と異なり、国の審査を必要としないため、事業者は自らの責任において、科学的根拠を基に適正な表示を行う必要があると同時に、有効性・安全性を担保する必要があります。

さて、ランダム化比較試験のメタ解析の結果、日本における機能性表示食品の発表には、しばしば “spin”が含まれていました。毒にも薬にもならない食品や、副作用が大きな食品までも機能性表示がなされることが日本における長年の課題と言えるでしょう。

食品メーカーが選択的に結果を報告しているかどうかをより厳しくチェックできるようなルール作り、ルール改変の検討が求められます。日本政府がどのように対応していくのかに注目したいところです。

続報に期待。

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✅まとめ✅ ランダム化比較試験のメタ解析の結果、日本における機能性表示食品の発表には、しばしば “spin”が含まれていた。日本政府は、食品メーカーが選択的に結果を報告しているかどうかをより厳しくチェックすべきである。

根拠となった試験の抄録

目的:機能性食品市場は著しい成長を遂げ、医薬品開発業務受託機関(CRO)による臨床試験が増加している。CROが管理する臨床試験および臨床試験結果の消費者市場への伝達に焦点を当てた研究はまだ十分に行われていない。このメタ疫学研究の目的は、日本の著名なCROが促進するランダム化比較試験(RCT)の質を評価し、その結果を消費者に伝えるために使用される表現の質を検討することである。

研究デザインと設定:本研究では、上位5社のCROが大学病院医療情報ネットワーク臨床試験レジストリまたは国際臨床試験レジストリ・プラットフォームに登録した食品試験を対象とした。試験結果のプレスリリースまたは試験結果に基づく食品の広告はGoogle検索により特定した。RCTの論文におけるバイアスのリスクは、2名の査読者が独立して評価し、査読者は抄録および全文における「スピン」の有無も評価した。プレスリリース/広告における「スピン」の評価も行った。

結果:合計76件のRCT登録、32件のRCT出版物、11件のプレスリリース/広告が対象となった。RCT出版物の約72%は、選択的な結果報告による高バイアスリスクを示した。抄録の結果(72%)、抄録の結論(81%)、全文の結果(44%)、全文の結論(84%)に “Spin “が認められた。”Spin “は、選択的転帰報告に起因するプレスリリース/広告の73%に出現した。

結論:日本における機能性食品の発表には、しばしば “スピン “が含まれていた。日本政府は、食品メーカーが選択的に結果を報告しているかどうかをより厳しくチェックすべきである。

キーワード:受託研究機関、機能性食品、メタ疫学研究、誤解を招くプレゼンテーション、栄養研究、選択的結果報告

引用文献

Misleading presentations in functional food trials led by contract research organizations were frequently observed in Japan: meta-epidemiological study
Hidehiro Someko et al. PMID: 38417584 DOI: 10.1016/j.jclinepi.2024.111302
J Clin Epidemiol. 2024 Feb 28:169:111302. doi: 10.1016/j.jclinepi.2024.111302. Online ahead of print.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38417584/

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