英国の人気料理コンテスト番組で提供されているレシピの食材と患者転帰との関連性は?
ときに食材は薬剤と同様に患者転帰に影響することが報告されています。しかし、その影響については充分に検証されていません。
そこで今回は、ザ・グレート・ブリティッシュ・ベイク・オフ(The Great British Bake Off)*のクリスマスデザートに含まれる様々な食材の健康への有益性と有害性を明らかにすることを目的に実施されたアンブレラレビューの結果をご紹介します。
*英国の人気料理コンテスト番組「The Great British Bake Off」のこと
本研究は、観察研究のメタ解析のアンブレラレビューです。The Great British Bake Offウェブサイト、Embase、Medline、Scopusが参照され、クリスマスデザートの材料と死亡または疾患のリスクとの関連を評価した観察研究のメタ解析が対象となり、アンブレラレビューが行われました。
本研究の主要アウトカムは、The Great British Bake Offのクリスマスデザートレシピの成分群と死亡または疾患のリスクとの間の保護的および有害な要約関連性の割合でした。
試験結果から明らかになったことは?
The Great British Bake Offのウェブサイトでは、クリスマスデザート(ケーキ、ビスケット、ペストリー、プリン、デザートなど)のレシピが48件提供されており、178種類の食材が17の包括的食材群に分類されていました。文献検索により7,008のタイトルと抄録が同定され、そのうち46件の適格な包括的レビューでは、食材群と死亡または疾患のリスクとの間に363件のユニークな要約関連が報告されました。
食材群と死亡または疾患のリスクに関する報告 | 件数(割合) | 具体的な成分 |
363件のうち関連性が有意であった報告数 | 149件(41%) | – |
死亡または疾患のリスクを減少 | 110件(74%) | 果物、コーヒー、ナッツ類など |
リスクを増加 | 39件(26%) | アルコール、砂糖 |
上記の要約された関連性のうち、149件(41%)が有意であり、そのうち110件(74%)はその成分群が死亡または疾患のリスクを減少させ、39件(26%)はリスクを増加させたと推定されました。
死亡または疾病のリスク低下と関連した最も一般的な成分群は、果物(44/110、40%)、コーヒー(17/110、16%)、ナッツ類(14/110、13%)であった一方、死亡または疾病のリスク上昇と関連した最も一般的な成分群は、アルコール(20/39、51%)と砂糖(5/39、13%)でした。
コメント
食材と転帰、特に疾患への罹患や死亡リスクとの関連性については充分に検証されていません。
さて、観察研究のメタ解析を対象としたアンブレラレビューの結果、『ザ・グレート・ブリティッシュ・ベイク・オフ』のクリスマスデザートのレシピには、死亡や疾病のリスクの増加よりもむしろ減少に関連する食材群がよく使われているようでした。具体的には、果物、コーヒー、ナッツ類などが挙げられました。一方、リスク上昇と関連した成分群は、アルコールと砂糖のみでした。
食材に関する研究は、その検証に長期間を要することから基本的に観察研究の結果が採用されます。そのため、交絡因子を完全に調整することは困難です。したがって、あくまでも相関関係が示されたに過ぎません。また、食材の摂取量により転帰に影響する方向性が異なることから、結果を慎重に解釈する必要があります。
つまり、果物、コーヒー、ナッツ類などを積極的に摂取していれば良いわけではありません。一つ一つを生活習慣にどのように取り入れるのかが求められます。
続報に期待。
✅まとめ✅ 『ザ・グレート・ブリティッシュ・ベイク・オフ』のクリスマスデザートのレシピには、死亡や疾病のリスクの増加よりもむしろ減少に関連する食材群がよく使われているようであった。
根拠となった試験の抄録
目的:ザ・グレート・ブリティッシュ・ベイク・オフ(The Great British Bake Off)*のクリスマスデザートに含まれる様々な食材の健康への有益性と有害性を明らかにすること。
*英国の人気料理コンテスト番組「The Great British Bake Off」のこと
試験デザイン:観察研究のメタ解析のアンブレラレビュー。
データソース データ情報源:The Great British Bake Offウェブサイト、Embase、Medline、Scopus。
包含基準:クリスマスデザートの材料と死亡または疾患のリスクとの関連を評価した観察研究のメタ解析のアンブレラレビュー。
主要アウトカム評価項目:The Great British Bake Offのクリスマスデザートレシピの成分群と死亡または疾患のリスクとの間の保護的および有害な要約関連性の割合。
結果:The Great British Bake Offのウェブサイトでは、クリスマスデザート(ケーキ、ビスケット、ペストリー、プリン、デザートなど)のレシピが48件提供されており、178種類の食材が17の包括的食材群に分類されていた。文献検索により7,008のタイトルと抄録が同定され、そのうち46件の適格な包括的レビューでは、食材群と死亡または疾患のリスクとの間に363件のユニークな要約関連が報告された。これらの要約された関連性のうち、149件(41%)が有意であり、そのうち110件(74%)はその成分群が死亡または疾患のリスクを減少させ、39件(26%)はリスクを増加させたと推定された。死亡または疾病のリスク低下と関連した最も一般的な成分群は、果物(44/110、40%)、コーヒー(17/110、16%)、ナッツ類(14/110、13%)であった一方、死亡または疾病のリスク上昇と関連した最も一般的な成分群は、アルコール(20/39、51%)と砂糖(5/39、13%)であった。
結論:『ザ・グレート・ブリティッシュ・ベイク・オフ』のクリスマスデザートのレシピには、死亡や疾病のリスクの増加よりもむしろ減少に関連する食材群がよく使われている。今年のクリスマスは、観察栄養学的研究の限界に関する懸念を脇に置けば、ケーキを食べることもできる。
引用文献
Association of health benefits and harms of Christmas dessert ingredients in recipes from The Great British Bake Off: umbrella review of umbrella reviews of meta-analyses of observational studies
Joshua D Wallach et al. PMID: 38123175 DOI: 10.1136/bmj-2023-077166
BMJ. 2023 Dec 20:383:e077166. doi: 10.1136/bmj-2023-077166.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38123175/
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