高カリウム血症に関連したRAASi治療の減少は、その後の入院治療の増加と関連する?(データベース研究; Nephrol Dial Transplant. 2024)

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RAASiを継続した場合と減量した場合とで患者予後は異なるのか?

高カリウム血症は、慢性腎臓病(CKD)および/または心不全(HF)患者において、レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系阻害薬(RAASi)による最適なガイドライン指示治療を達成するための障壁となっています。しかし、RAASiを継続した場合と減量した場合とで患者予後にどのような影響があるのかについては明らかになっていません。

そこで今回は、スウェーデンと日本のCKDおよび/またはHF患者における、高カリウム血症に関連したRAASi治療の減少と入院日数との関連について検証したデータベース研究の結果をご紹介します。

本研究では、健康登録と病院の医療記録のデータを用いて、現在RAASiを投与されているCKDおよび/またはHF患者で、指標となる高カリウム血症エピソードを経験した患者を同定し、指標後にRAASi治療を維持した群と減量した群に分類しました;ベースライン特性に関して両群のバランスをとるために傾向スコアマッチング(1:1)を適用しました。

評価項目は、全入院日数、CKD入院日数、HF関連入院日数の指標前6ヵ月と指標後6ヵ月の変化、および生存退院日数(DAOH:生存して退院までにかかった日数)でした。

試験結果から明らかになったことは?

スウェーデンと日本からそれぞれ20,824例と7,789例が組み入れられ、その42%と38%が高カリウム血症発症後にRAASi治療を減量していました。

指標後6ヵ月間の全入院日数
(95%CI)
RAASi治療を減量した患者RAASi治療を維持した患者
スウェーデン18.2日(17.0〜19.2)増加9.4日(8.6〜10.4)増加
日本17.9日(17.4〜18.5)増加8.5日(8.0〜9.0)増加

指標後6ヵ月間の全入院日数(95%信頼区間)は、RAASi治療を減量した患者では1人・年当たりスウェーデンで18.2日(17.0〜19.2日)、日本で17.9日(17.4〜18.5日)増加したのに対し、RAASi治療を維持した患者ではそれぞれ9.4日(8.6〜10.4日)、8.5日(8.0〜9.0日)増加しました。

退院までの日数の平均値
(標準偏差)
RAASi治療を減量した患者RAASi治療を維持した患者
スウェーデン154.0日(51.3)121.5日(75.0)
日本157.5日(31.6)141.7日(54.5)

退院までの日数の平均値(標準偏差)は、RAASi治療を維持した患者ではそれぞれ154.0日(51.3日)、157.5日(31.6日)であったのに対し、RAASi治療を減らした患者ではスウェーデンで121.5日(75.0日)、日本で141.7日(54.5日)でした。

コメント

慢性腎臓病や心不全患者においては、しばしば高カリウム血症がみられます。高カリウム血症は、不整脈など患者予後に大きく影響を及ぼす疾患を引き起こすことから、早急に是正が求められます。

さて、データベース研究の結果、高カリウム血症エピソード後にRAASi治療が減量された患者では、RAASi治療が維持された患者と比較して入院日数が多く、生存退院日数が少ないことが明らかとなりました。

あくまでも相関関係が示されたに過ぎませんが、日本とスウェーデンという異なるセッティングで同様の結果が示された点は非常に興味深いです。どのような要因が影響しているのか検証が求められます。

高カリウム血症を是正しつつRAASi標準用量を継続した場合と、減量した場合とで患者予後にどのような影響があるのかについても検証が求められます。

続報に期待。

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✅まとめ✅ データベース研究の結果、高カリウム血症エピソード後にRAASi治療が減量された患者では、RAASi治療が維持された患者と比較して入院日数が多く、生存退院日数が少なかった。

根拠となった試験の抄録

背景:高カリウム血症は、慢性腎臓病(CKD)および/または心不全(HF)患者において、レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系阻害薬(RAASi)による最適なガイドライン指示治療を達成するための障壁である。本研究では、スウェーデンと日本のCKDおよび/またはHF患者における、高カリウム血症に関連したRAASi治療の減少と入院日数との関連について述べる。

方法:健康登録と病院の医療記録のデータを用いて、現在RAASiを投与されているCKDおよび/またはHF患者で、指標となる高カリウム血症エピソードを経験した患者を同定し、指標後にRAASi治療を維持した群と減量した群に分類した;ベースライン特性に関して両群のバランスをとるために傾向スコアマッチング(1:1)を適用した。全入院日数、CKD入院日数、HF関連入院日数の指標前6ヵ月と指標後6ヵ月の変化、および生存退院日数(DAOH)について検討した。

結果:スウェーデンと日本からそれぞれ20,824例と7,789例が組み入れられ、その42%と38%が高カリウム血症発症後にRAASi治療を減量した。指標後6ヵ月間の全入院日数(95%信頼区間)は、RAASi治療を減量した患者では1人・年当たりスウェーデンで18.2日(17.0〜19.2日)、日本で17.9日(17.4〜18.5日)増加したのに対し、RAASi治療を維持した患者ではそれぞれ9.4日(8.6〜10.4日)、8.5日(8.0〜9.0日)増加した。生存退院日数の平均値(標準偏差)は、RAASi治療を維持した患者ではそれぞれ154.0日(51.3日)、157.5日(31.6日)であったのに対し、RAASi治療を減らした患者ではスウェーデンで121.5日(75.0日)、日本で141.7日(54.5日)であった。

結論:高カリウム血症エピソード後にRAASi治療が減量された患者では、RAASi治療が維持された患者と比較して入院日数が多く、生存退院日数が少なかった。

キーワード:慢性腎臓病、ガイドライン、心不全、高カリウム血症、レニン・アンジオテンシン系

引用文献

Hyperkalaemia-related reduction of RAASi treatment associates with more subsequent inpatient care
Maria K Svensson et al. PMID: 38253386 DOI: 10.1093/ndt/gfae016
Nephrol Dial Transplant. 2024 Jan 22:gfae016. doi: 10.1093/ndt/gfae016. Online ahead of print.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38253386/

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