PCI後1年以降のSAPTの5年間の成績 クロピドグレル vs. アスピリン
経皮的冠動脈インターベンション(PCI)後の二重抗血小板療法(DAPT)後の長期間にわたる抗血小板単剤療法としてクロピドグレルがアスピリンよりも適しているかどうかは依然として不明です。
そこで今回は、PCI後の1ヵ月DAPT後のクロピドグレル単剤療法(クロピドグレル群)と12ヵ月DAPT後のアスピリン単剤療法(アスピリン群)を5年間比較したSTOPDAPT-2の結果をご紹介します。
STOPDAPT-2(Short and Optimal Duration of Dual Antiplatelet Therapy 2)は、日本で行われた多施設共同、非盲検、判定者盲検、ランダム化比較試験です。コバルトクロムエベロリムス溶出ステントによるPCIを受けた患者は、クロピドグレル群とアスピリン群に1対1でランダムに割り付けられました。
本研究の主要エンドポイントは心血管系の転帰(心血管死、心筋梗塞、脳卒中、明確なステント血栓症)または大出血(TIMI大出血または小出血)の複合でした。
試験結果から明らかになったことは?
3,005例の試験患者(年齢 68.6±10.7歳、女性 22.3%、急性冠症候群 38.3%)のうち、2,934例(97.6%)が5年間の追跡を完了しました(395日目における試験薬のアドヒアランス:84.7% vs. 75.9%)。
クロピドグレル群 | アスピリン群 | ハザード比 HR (95%CI) | |
主要エンドポイント (心血管系の転帰:心血管死、心筋梗塞、脳卒中、明確なステント血栓症、 または大出血:TIMI大出血または小出血の複合) | 11.75% | 13.57% | HR 0.85 (0.70〜1.05) 非劣性P<0.001 優越性P=0.13 |
・心血管アウトカム | 8.61% | 11.05% | HR 0.77 (0.61〜0.97) P=0.03 |
・大出血 | 4.44% | 4.92% | HR 0.89 (0.64〜1.25) P=0.51 |
アスピリン群と比較したクロピドグレル群の主要エンドポイントは非劣性でしたが優越性は認められませんでした(それぞれ11.75%と13.57%;HR 0.85、95%CI 0.70〜1.05;非劣性P<0.001;優越性P=0.13)。
心血管アウトカムでは優越性(それぞれ8.61%と11.05%;HR 0.77、95%CI 0.61〜0.97;P=0.03)を示した一方で、大出血(それぞれ4.44%と4.92%;HR 0.89、95%CI 0.64〜1.25;P=0.51)では優越性を示しませんでした。
1年ランドマーク解析では、クロピドグレルは心血管系イベント(それぞれ6.79%と8.68%;HR 0.77、95%CI 0.59〜1.01;P=0.06)においてアスピリンより優れていましたが、大出血(それぞれ3.99%と3.32%;HR 1.23、95%CI 0.84〜1.81;P=0.31)においては差が認められませんでした。
コメント
経皮的冠動脈インターベンション(PCI)後の心血管イベントの発生抑制のために、二重抗血小板療法(DAPT)が数年実施されますが、その後の一重抗血小板療法(SAPT)としてクロピドグレルとアスピリンのどちらが優れているのかについては結論が得られていません。
さて、STOPDAPT-2試験の5年追跡の結果、クロピドグレルはPCI後1年を超えても虚血ベネフィットの境界域にあるアスピリンの魅力的な代替薬である可能性が示されました。出血リスクについては差がなく、心血管イベントについては発生が少ないことが示されました。主要解析であるSAPT1年後の成績については群間差がありませんでしたが、リスク減少傾向であること、これまでの報告を踏まえるとクロピドグレルの方が優れていそうです。
続報に期待。
✅まとめ✅ ランダム化比較試験の結果、クロピドグレルはPCI後1年を超えても虚血ベネフィットの境界域にあるアスピリンの魅力的な代替薬である可能性がある。
根拠となった試験の抄録
背景:経皮的冠動脈インターベンション(PCI)後の二重抗血小板療法(DAPT)後の長期抗血小板単剤療法としてクロピドグレルがアスピリンよりも適しているかどうかは依然として不明である。
目的:本研究ではPCI後の1ヵ月DAPT後のクロピドグレル単剤療法(クロピドグレル群)と12ヵ月DAPT後のアスピリン単剤療法(アスピリン群)を5年間比較した。
方法:STOPDAPT-2(Short and Optimal Duration of Dual Antiplatelet Therapy 2)は、日本で行われた多施設共同、非盲検、判定者盲検、ランダム化比較試験である。コバルトクロムエベロリムス溶出ステントによるPCIを受けた患者は、クロピドグレル群とアスピリン群に1対1でランダムに割り付けられた。
主要エンドポイントは心血管系の転帰(心血管死、心筋梗塞、脳卒中、明確なステント血栓症)または大出血(TIMI大出血または小出血)の複合とした。
結果:3,005例の試験患者(年齢 68.6±10.7歳、女性 22.3%、急性冠症候群 38.3%)のうち、2,934例(97.6%)が5年間の追跡を完了した(395日目における試験薬のアドヒアランス:84.7%、75.9%)。アスピリン群と比較したクロピドグレル群の主要エンドポイントは非劣性であったが優越性はなかった(それぞれ11.75%と13.57%;HR 0.85、95%CI 0.70〜1.05;非劣性P<0.001;優越性P=0.13)であった。一方、心血管アウトカムでは優越性(それぞれ8.61%と11.05%;HR 0.77、95%CI 0.61〜0.97;P=0.03)を示したが、大出血(それぞれ4.44%と4.92%;HR 0.89、95%CI 0.64〜1.25;P=0.51)では優越性を示さなかった。1年ランドマーク解析では、クロピドグレルは心血管系イベント(それぞれ6.79%と8.68%;HR 0.77、95%CI 0.59〜1.01;P=0.06)においてアスピリンより優れていたが、大出血(それぞれ3.99%と3.32%;HR 1.23、95%CI 0.84〜1.81;P=0.31)においては差がなかった。
結論:クロピドグレルはPCI後1年を超えても虚血ベネフィットの境界域にあるアスピリンの魅力的な代替薬である可能性がある。
キーワード:P2Y12阻害、抗血小板療法、出血、冠動脈ステント、経皮的冠動脈インターベンション
引用文献
Clopidogrel vs Aspirin Monotherapy Beyond 1 Year After Percutaneous Coronary Intervention
Hirotoshi Watanabe et al. PMID: 37879491 DOI: 10.1016/j.jacc.2023.10.013
J Am Coll Cardiol. 2024 Jan 2;83(1):17-31. doi: 10.1016/j.jacc.2023.10.013. Epub 2023 Oct 23.
— 読み進める pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37879491/
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