COVID-19と季節性インフルエンザによる入院後の患者転帰への影響は?(コホート研究; Lancet Infect Dis. 2023)

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COVID-19と季節性インフルエンザによる入院患者転帰への影響は?

COVID-19とインフルエンザで入院した患者のこれまでの比較解析では、死亡、再入院、感染後6ヵ月までの狭い範囲の健康転帰のリスクを評価していました。そのため、より長期間の影響や、より多くのアウトカム評価が求められています。

そこで今回は、COVID-19または季節性インフルエンザによる入院後の包括的な健康アウトカムについて、急性および長期のリスクと負担を比較評価することを目的に実施されたコホート研究の結果をご紹介します。

このコホート研究では、米国退役軍人省の医療データベースを用いて、2020年3月1日から2022年6月30日の間にCOVID-19で入院した81,280例の参加者と、2015年10月1日から2019年2月28日の間に季節性インフルエンザで入院した10,985例の参加者のデータが分析されました。

研究参加者は最長18ヵ月間追跡され、死亡、事前に規定された94の個々の健康アウトカム、10の臓器系、すべての臓器系にわたる全体的な負担、再入院、集中治療室への入院のリスクと負担が比較評価されました。

ベースライン特性のバランスをとるために逆確率加重が用いられました。CoxモデルおよびPoissonモデルを用いて、100人当たりのイベント発生率および障害調整生存年(DALY)として相対スケールおよび絶対スケールの両方でリスクの推定値が算出されました。

試験結果から明らかになったことは?

(追跡期間:18ヵ月)
COVID-19群 vs. インフルエンザ群
ハザード比 HR
100人当たりの過剰死亡率
死亡リスクHR 1.51
(95%CI 1.45〜1.58
8.62
(95%CI 7.55〜9.44

18ヵ月の追跡期間において、季節性インフルエンザと比較して、COVID-19群では死亡リスクが上昇し(ハザード比[HR]1.51、95%CI 1.45〜1.58)、これはCOVID-19群 vs. インフルエンザ群における100人当たりの過剰死亡率8.62(95%CI 7.55〜9.44)に相当しました。

事前に規定された94の健康転帰の比較分析では、COVID-19は事前に規定された健康転帰の68.1%(94のうち64)のリスクを増加させました。季節性インフルエンザは事前に規定された健康転帰の6.4%(94のうち6)のリスク増加と関連しており、その中には事前に規定された4つの転帰のうち3つの肺転帰が含まれていました。

臓器系の解析では、肺系を除くすべての臓器系でCOVID-19のリスクが高く、季節性インフルエンザでは肺系のリスクが高いことが示されました。すべての臓器系にわたる健康有害転帰の累積率は、COVID-19では100人当たり615.18(95%信頼区間 605.17〜624.88)、季節性インフルエンザでは100人当たり536.90(527.38〜544.90)であり、COVID-19では100人当たり78.72(95%信頼区間 66.15〜91.24)の過剰率となりました。

全臓器系にわたるDALY総数は、COVID-19群では100人当たり287.43(95%CI 281.10〜293.59)、季節性インフルエンザ群では100人当たり242.66(236.75、247.67)であり、COVID-19の方が100人当たり45.03(95%CI 37.15〜52.90)DALYが多いことが示されました。

分解分析によると、COVID-19と季節性インフルエンザのいずれにおいても、急性期よりも急性期後の健康損失負担が高く、肺系を除く他のすべての臓器系において、急性期と急性期後の両方でCOVID-19の方が季節性インフルエンザよりも健康損失負担が高かいことが明らかとなりました。

また、季節性インフルエンザと比較して、COVID-19は、再入院(100人あたり超過率20.50、95%CI 16.10〜24.86)および集中治療室への入院(100人あたり超過率9.23、6.68〜11.82)のリスクが高いことも明らかとなりました。この所見は、季節性インフルエンザとCOVID-19のリスクをそれぞれのワクチン接種状況別に比較評価した解析や、プレデルタ期、デルタ期、オミクロン期に入院した患者で一貫していました。

コメント

COVID-19とインフルエンザで入院した患者における転帰の比較が求められています。これは、政治や医療分野における施策立案や意思決定を行う上で、重要なデータとなるためです。

さて、コホート研究の結果、季節性インフルエンザでもCOVID-19でも、入院後の死亡率および健康上の有害転帰率は高いことが示されました。インフルエンザ患者との比較において、COVID-19患者では死亡リスクがより高いことも明らかとなりました。

本コホート研究の比較分析結果から、COVID-19による入院は、季節性インフルエンザによる入院よりも、ほぼすべての臓器系(肺系を除く)における死亡および健康上の有害転帰の長期リスクが高く、累積過剰DALYが有意に多いことが示されました。

ちなみに障害調整生命年(DALY)は、死亡が早まることによって失われたであろう寿命(生命年)の概念を、健康でない状態(障害)によって失われた健康寿命換算の年数を含めることで拡張させた健康ギャップ指標です。

あくまでも優先度の問題ではありますが、COVID-19に対する施策や感染予防の重要性の方が高いと考えられます。

続報に期待。

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✅まとめ✅ 季節性インフルエンザでもCOVID-19でも、入院後の死亡率および健康上の有害転帰率は高いが、この比較分析から、COVID-19による入院は、季節性インフルエンザによる入院よりも、ほぼすべての臓器系(肺系を除く)における死亡および健康上の有害転帰の長期リスクが高く、累積過剰DALYが有意に多いことが示された。

根拠となった試験の抄録

背景:COVID-19とインフルエンザで入院した人のこれまでの比較解析では、死亡、再入院、感染後6ヵ月までの狭い範囲の健康転帰のリスクを評価していた。われわれは、COVID-19または季節性インフルエンザによる入院後の包括的な健康アウトカムについて、急性および長期のリスクと負担を比較評価することを目的とした。

方法:このコホート研究では、米国退役軍人省の医療データベースを用いて、2020年3月1日から2022年6月30日の間にCOVID-19で入院した81,280例の参加者と、2015年10月1日から2019年2月28日の間に季節性インフルエンザで入院した10,985例の参加者のデータを分析した。参加者は最長18ヵ月間追跡され、死亡、事前に規定された94の個々の健康アウトカム、10の臓器系、すべての臓器系にわたる全体的な負担、再入院、集中治療室への入院のリスクと負担を比較評価した。ベースライン特性のバランスをとるために逆確率加重が用いられた。CoxモデルおよびPoissonモデルを用いて、100人当たりのイベント発生率および障害調整生存年(DALY)として相対スケールおよび絶対スケールの両方でリスクの推定値を算出した。

結果:18ヵ月の追跡期間において、季節性インフルエンザと比較して、COVID-19群では死亡リスクが上昇し(ハザード比[HR]1.51、95%CI 1.45〜1.58)、これはCOVID-19群対インフルエンザ群における100人当たりの過剰死亡率8.62(95%CI 7.55〜9.44)に相当した。事前に規定された94の健康転帰の比較分析では、COVID-19は事前に規定された健康転帰の68.1%(94のうち64)のリスクを増加させた。季節性インフルエンザは事前に規定された健康転帰の6.4%(94のうち6)のリスク増加と関連しており、その中には事前に規定された4つの転帰のうち3つの肺転帰が含まれていた。臓器系の解析では、肺系を除くすべての臓器系でCOVID-19のリスクが高く、季節性インフルエンザではそのリスクが高かった。すべての臓器系にわたる健康有害転帰の累積率は、COVID-19では100人当たり615.18(95%信頼区間 605.17〜624.88)、季節性インフルエンザでは100人当たり536.90(527.38〜544.90)であり、COVID-19では100人当たり78.72(95%信頼区間 66.15〜91.24)の過剰率となった。全臓器系にわたるDALY総数は、COVID-19群では100人当たり287.43(95%CI 281.10〜293.59)、季節性インフルエンザ群では100人当たり242.66(236.75、247.67)であり、COVID-19の方が100人当たり45.03(95%CI 37.15〜52.90)DALYが多かった。分解分析によると、COVID-19と季節性インフルエンザのいずれにおいても、急性期よりも急性期後の健康損失負担が高く、肺系を除く他のすべての臓器系において、急性期と急性期後の両方でCOVID-19の方が季節性インフルエンザよりも健康損失負担が高かった。また、季節性インフルエンザと比較して、COVID-19は、病院再入院(100人あたり超過率20.50、95%CI 16.10〜24.86)および集中治療室への入院(100人あたり超過率9.23、6.68〜11.82)のリスクが高かった。この所見は、季節性インフルエンザとCOVID-19のリスクをそれぞれのワクチン接種状況別に比較評価した解析や、プレデルタ期、デルタ期、オミクロン期に入院した患者で一貫していた。

解釈:季節性インフルエンザでもCOVID-19でも、入院後の死亡率および健康上の有害転帰率は高いが、この比較分析から、COVID-19による入院は、季節性インフルエンザによる入院よりも、ほぼすべての臓器系(肺系を除く)における死亡および健康上の有害転帰の長期リスクが高く、累積過剰DALYが有意に多いことが示された。両群における健康喪失の実質的な累積負担は、これら2つのウイルスによる入院の予防を強化し、季節性インフルエンザまたはSARS-CoV-2感染による長期的健康影響を有する人々のケアの必要性にもっと注意を払うことを求めている。

資金提供:米国退役軍人省

引用文献

Long-term outcomes following hospital admission for COVID-19 versus seasonal influenza: a cohort study
Yan Xie et al. PMID: 38104583 DOI: 10.1016/S1473-3099(23)00684-9
Lancet Infect Dis. 2023 Dec 14:S1473-3099(23)00684-9. doi: 10.1016/S1473-3099(23)00684-9. Online ahead of print.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38104583/

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