滑膜炎を伴う変形性手関節症に対するメトトレキサートの効果は?(DB-RCT; METHODS試験; Lancet 2023)

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変形性手関節症に対するメトトレキサートの効果はどのくらいか?

変形性手関節症は、有効な治療法がほとんどなく、患者に障害をもたらす疾患です。滑膜炎を伴う変形性手関節症は、疼痛を伴う一般的な炎症表現型であることから、メトトレキサートが有効である可能性があるものの、充分に検証されていません。

そこで今回は、変形性手関節症と滑膜炎を有する患者を対象に、6ヵ月間のメトトレキサートの有効性と安全性を検討することを目的に実施されたMETHODS試験の結果をご紹介します。

この多施設共同、並行群間、二重盲検、ランダム化、プラセボ対照試験において、変形性手関節症(少なくとも1関節のKellgren and Lawrenceグレードが2以上)およびMRIでグレード1以上の滑膜炎が検出された参加者(40~75歳)を、オーストラリアのメルボルン、ホバート、アデレード、パースの地域社会から募集しました。

試験参加者は、メトトレキサート20mgまたは同一のプラセボを週1回6ヵ月間経口投与する群に、試験実施施設および自己申告による性別で層別化されたブロックランダム化法でランダムに割り付けられました(1:1)。

本試験の主要アウトカムは、intention-to-treat集団で評価した6ヵ月後の試験手指の疼痛軽減(100mmのvisual analogue scale;VASで測定)であり、安全性の転帰はランダムに割り付けられたすべての参加者で評価されました。

試験結果から明らかになったことは?

2017年11月22日〜2021年11月8日の間に、適格性を評価された202例の参加者のうち、97例(48%)がメトトレキサート(n=50)またはプラセボ(n=47)を投与する群にランダムに割り付けられました。97例中68例(70%)が女性、29例(30%)が男性でした。

メトトレキサート群プラセボ群群間平均差
(95%CI)
6ヵ月後のVAS疼痛変化量の平均-15.2mm(SD 24.0)-7.7mm(SD 25.3)群間平均差 -9.9
-19.3 ~ -0.6
p=0.037

メトトレキサート群50例中42例(84%)、プラセボ群47例中40例(85%)が主要アウトカムデータを提供しました。6ヵ月後のVAS疼痛変化量の平均は、メトトレキサート群で-15.2mm(SD 24.0)、プラセボ群で-7.7mm(SD 25.3)であり、群間平均差は-9.9(95%CI -19.3 ~ -0.6;p=0.037)、エフェクトサイズ(標準化平均差)は0.45(0.03~0.87)でした。

有害事象はメトトレキサート群50例中31例(62%)、プラセボ群47例中28例(60%)に発現しました。

コメント

滑膜炎を伴う変形性手関節症に対するメトトレキサートの有効性・安全性の検証は充分に行われていません。

さて、二重盲検ランダム化比較試験の結果、変形性手関節症および滑膜炎に対してメトトレキサート20mgを6ヵ月間投与したところ、中等度ではあるものの臨床的に意味のある疼痛軽減効果が認められました。変形性手関節症に対する治療薬は限られていることから、非常に貴重な研究結果です。

ただし、試験参加者は、少なくとも1関節のKellgren and Lawrenceグレードが2以上が対象であり、比較的早期ステージの炎症期にメトトレキサートが使用されたものと考えられます。炎症がおさまり、侵害受容期に移行した後期ステージに使用しても、治療効果は期待できません。また、症例数が少なく、研究期間6ヵ月と短いことから、より大規模で長期にわたる有効性・安全性の検証が求められます。

続報に期待。

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まとめ:二重盲検ランダム化比較試験の結果、変形性手関節症および滑膜炎に対してメトトレキサート20mgを6ヵ月間投与したところ、中等度ではあったが臨床的に意味のある疼痛軽減効果が認められた。

根拠となった試験の抄録

背景:変形性手関節症は、有効な治療法がほとんどなく、患者に障害をもたらす疾患である。滑膜炎を伴う変形性手関節症は、疼痛を伴う一般的な炎症表現型である。われわれは、変形性手関節症と滑膜炎を有する患者を対象に、6ヵ月間のメトトレキサートの有効性と安全性を検討することを目的とした。

方法:この多施設共同、並行群間、二重盲検、ランダム化、プラセボ対照試験において、変形性手関節症(少なくとも1関節のKellgren and Lawrenceグレードが2以上)およびMRIでグレード1以上の滑膜炎が検出された参加者(40~75歳)を、オーストラリアのメルボルン、ホバート、アデレード、パースの地域社会から募集した。参加者は、メトトレキサート20mgまたは同一のプラセボを週1回6ヵ月間経口投与する群に、試験実施施設および自己申告による性別で層別化されたブロックランダム化法でランダムに割り付けられた(1:1)。
主要アウトカムは、intention-to-treat集団で評価した6ヵ月後の試験手指の疼痛軽減(100mmのvisual analogue scale;VASで測定)であった。安全性の転帰はランダムに割り付けられたすべての参加者で評価された。本試験はAustralian New Zealand Clinical Trials Registry(ACTRN12617000877381)に登録された。

所見:2017年11月22日〜2021年11月8日の間に、適格性を評価された202例の参加者のうち、97例(48%)がメトトレキサート(n=50)またはプラセボ(n=47)を投与する群にランダムに割り付けられた。97例中68例(70%)が女性、29例(30%)が男性であった。メトトレキサート群50例中42例(84%)、プラセボ群47例中40例(85%)が主要アウトカムデータを提供した。
6ヵ月後のVAS疼痛変化量の平均は、メトトレキサート群で-15.2mm(SD 24.0)、プラセボ群で-7.7mm(SD 25.3)であり、群間平均差は-9.9(95%CI -19.3 ~ -0.6;p=0.037)、エフェクトサイズ(標準化平均差)は0.45(0.03~0.87)であった。有害事象はメトトレキサート群50例中31例(62%)、プラセボ群47例中28例(60%)に発現した。

解釈:変形性手関節症および滑膜炎に対してメトトレキサート20mgを6ヵ月間投与したところ、中等度ではあったが臨床的に意味のある疼痛軽減効果が認められた。

資金提供:オーストラリア国立保健医学研究評議会

引用文献

Methotrexate to treat hand osteoarthritis with synovitis (METHODS): an Australian, multisite, parallel-group, double-blind, randomised, placebo-controlled trial
Yuanyuan Wang et al. PMID: 37839420 DOI: 10.1016/S0140-6736(23)01572-6
Lancet. 2023 Nov 11;402(10414):1764-1772. doi: 10.1016/S0140-6736(23)01572-6. Epub 2023 Oct 12.
— 読み進める pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37839420/

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